とある鋭き針の物語

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決着

「俺は右から回り込むから、針縫は左から回り込んで、〔飛去双鎌〕で奴の注意を引いてくれ。」

「了解。でも何で飛去双鎌なの?」

「連携に使うからだ。いくぞ!!」

彼はそれだけ言うと、邪神の右側に移動し始めた。私も遅れないように左側への移動を開始する。


『分断すれば片方だけが狙われるとでも思ったか!
上位魔法ーアイシクルヘイル!!』

奴が魔法を使用すると、上空から大量の氷柱が降り注ぎ始めた。一発ぐらいなら当たっても問題なさそうだが、この数をもろに喰らえばおしまいだ。
私たちは何とか避けつつ、目的の位置に移動した。


「針技ー飛去双鎌!!」

私は双鎌を投げつけた。奴はこれの恐怖を知っている為か、攻撃の手を止めてまでして防御態勢に入った。
が、双鎌は奴を少し先を掠めただけで、突き刺さる事はなかった。


「引っかかったな!喰らえー!!」

俺は注意のそれた奴に対し、全力の打撃を繰り出す。


『私が気づいていないとでも思ったか馬鹿め!!』

が、奴の方が一枚上手うわてだった。
俺の攻撃は軽々しく受け止められ、腕を握り潰された後、針縫のいる方向に投げ飛ばされた。


「いてて…でも、作戦通り!
針縫、俺を奴のいる方向に投げ返せ!」

竜也から狂った指示が飛んでくる。あのまま?どうするつもりだ?
そんなことを思いつつ、私は竜也を受け止めた。


「全力で投げるよ、おるぁぁぁ!!!」

私は言われた通りに彼を投げ飛ばした。その時、私はその軌道上に双鎌を見た。
そう言うことか!私は戻ってくる双鎌のスピードを調節した。 彼はあの体勢で双鎌を掴み取った。


「よしっ、ナイスだ針縫!!
いくぜ!針技ー餓狼双鎌!!」

そして、奴の胸部を双鎌で斬りつけつつ、それを手放した。切り口はすぐに紅く染め上がる。


『くっ、なんて鋭さだ…。』

「今度はお前の番だ!針縫!!」

「やっぱりね、いくよ!!」

私は何となくこう来るだろうと分かっていたので、彼の後を追っていた。そのままの流れで、私は彼が手放した双鎌を受け取り、血塗られた胸部に狙いを合わせる。


「追撃いくよー!!針技ー餓狼双鎌!!」

私はその切り口をさらに広げるように双鎌で切り裂いた。大量の血が流れて、私にも降り注ぐ。


「次は俺の番だ!どいてろ針縫!」

私は血を浴びながら彼の指示を聞き、すぐさま横に飛び退いた。


「引導を渡してやるぜ!纏霊技ー螺旋鰐ラセンワニ!!」

俺は地を蹴りつつ鰐の頭部を纏い、きりもみ回転をしながら大きく開いたその傷口に突っ込んだ。
そのまま主要な臓器を喰い千切りながら突き進み、背中まで貫通させた。俺の通った後には綺麗な風穴が開く。




私は双翼を定位置に戻すと、万能針を一本引き抜き、違う針の形を念じてみた。
…やはりそうだ。念じた通り、その針は縫い針の形を成した。また、万能針同様にその性質も利用できるようだ。


「針技ー不治癒の縫い針」

私はそれに効果を付与し、ポーチの中に入れていた縫い糸を通してみた。


「問題なさそうね。じゃあ試してみますか!」

俺が見ると、針縫が胸部に風穴が空いたことにより悶え苦しむ邪神に近づいていた。
そしてあろうことか、その傷口を縫い始める。


『グギギッ…』

ディクター自体は回復魔法の準備を優先していたためにその行為に一切抵抗しなかった。それ程にまで命の危機が差し迫っているといるわけか。
針縫が縫い終わった頃丁度、奴の準備も整った。


『上イ…マボ……フロ…レ…ズ………リ…ガバ…』

殆ど言葉として成り立っていなかったが、どうやらあれでも魔法として成り立っているらしい。奴の体は瞬時に再生した。


…針縫に縫われた胸部の風穴を除いて。


『な…何故…?』

そして、肺や心臓を治せなかった奴は、事切れた。

…筈だった。


『置き土産だ…〔麻痺の呪い〕!』

奴は最後の足掻きとして、呪いを撒き散らしてから、絶命した。



効果縫い針について

万能針の利用法の応用で、縫い針形状を生かした効果を与えようと願ったところ、成り立った針。針本体ではなく針に通した糸に効果ぎ付与される。
範囲指定分の回路を組まなくて済むため、さらにコスト削減を図ることができるらしい。

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