とある鋭き針の物語

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激しき消耗戦

早速だが、奴は次の魔法を構えた。先ほどのは回復魔法だったが、今回のはそうで無いらしく、奴からさらに濃い魔力が発せられる。


『上位魔法ースコーチブレイズ!』

発動と同時に、奴から凄まじいほどの熱量が発生した。その熱量は大地(と仕込んでおいた針)を焦がしながら、こちらへと近づいてくる。


「くっ、横に飛び退くぞ、針縫!」

俺は針縫に指示を出しつつその熱量攻撃の回避に努めた。凄まじい熱量が通り過ぎるのを背中で感じつつ、俺は振り返る。熱気であまり見えないが、針縫も回避できたようだ。
っと、まだホッと出来ない。確かに俺たちは回避に成功したが、左右に分断されてしまったのだ。

私はどうにかその熱量を回避したが、竜也と切り離されてしまった。奴の方を見ると、私に狙いを向けつつ魔法を構えていた。


『上位魔法ーパーフェクトパラライズ!』

奴がそれを発動すると、あまりにも不吉な波動が放たれ、私の体を包み込んだ。

…が、


「…あれ?」

特に何も起きなかった。


『何故何も起こらない!?その魔法は完璧に動きを止めるものなのだぞ!』

奴はこちらに問いかける。その言動は明らかに焦っていた。


「それが軸の針の力だからだ!!」

その答えを返したのは、狙いが外れた隙に奴の背後に回り込んでいた竜也だった。


「追撃は任せた!纏霊技ー竜の翼」

俺は左腕に生命竜の翼を纏った。見た目以上に強靭であるそれを奴に振りかぶる。
ただ、強靭なだけのその一撃は、奴には完全に止められてしまった。それどころか、バキバキに折られてしまう。


『その程度の技で何が出来る!』

「フフッ…」

俺は奴の問いかけに対し、不敵な笑みを見せる。


「おるぁぁぁ!!!」

彼が笑みを見せたタイミングに合わせて私は、ガラ空きになった奴の背中に強力な打撃をお見舞いした。


『ぐぶぅおっ!?』

奴はこの不意打ちに直撃。何本もの骨が折れる音と打撃音を伴いながら、前方にぶっ飛んでいく。
もちろんその先には竜也がいる。


「纏霊技ー捕喰竜5型!!」

竜也はいつもとは比べ物にならないほど巨大な竜の頭部を纏う。


『くっ、喰われてたまるか!!』

奴は咄嗟に地を蹴り、横に飛び退いた。が、それを避けきるには機動力が足りなかった。
辛うじて頭部を守ることはできていたが、右半身と一部の左半身はその竜に食い千切られてしまう。


『ぐうぅぅっ、上位魔法ーフローレス•リカバー』

が、すぐに回復魔法をかけられる。あそこまでの損傷だろうが、一瞬にして再生してしまった。


「ちっ、概念タイプだったか…。」

竜也が私の側に戻ってきた。何やら別の点で悔しがっている。


「あれだけの部位を再生させるにはそれなりのMPが必要になる。枯渇するまで削り取ってやるぞ!」

「了解!あ、そうだ。」

私は万能針を彼に手渡す。


「腕の骨が折れてるでしょ。これで治しといて。」

バレてたか。纏霊技にも弱点があり、纏った者を攻撃されると纏った部位にも同様のダメージが入ってしまう。


「おっ、ありがと!」

まあこれぐらいなら生命竜の力でどうにかなるが、いかんせん彼女も疲れている。
彼女への負担を減らすためにも、俺はその針を受け取り、左腕に刺した。


回復が終わると、俺は針を捨てつつ(針は元の位置に戻っていった)周囲の状況を再確認した。
ディクターは息遣いが荒くなっている。恐らくMPは半分切ってるかな?
針縫は傀儡を受けていた時に再生をさせ過ぎたお陰で疲れが溜まっている。もはや見ても分かる程になってしまっている。
俺自身に関しては、メンタルマジックの使い過ぎでもう殆どMPが残っていない。恩方の支援が無ければ倒れてしまっているだろう。

つまり、次辺りで決めろといることか…



能力のタイプ分け

能力…任意に発動するタイプ。単純な構造でできている為、他よりも扱い易いのが特徴。
捕喰竜のコピーでは、1時間程度の保持が限界

特能…印として組み込むタイプ。方式を理解し、使いこなせるようになれば、一気に強さを増す。
捕喰竜のコピーでは、最大半年ほど保持できる

概念…常に発動している。制御困難であるが、制御しようとしない限りはコストゼロなので、ある意味最も燃費が良い。
捕喰竜ではコピーできない

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