とある鋭き針の物語

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天と地程の差

私達は、魔王の間手前の大広間にたどり着いた。そこには、4人…いや、3人と1匹が待ち構えていた。


『やはりお前だったか、シャープレイン。あの時の借り、今度こそ返させてもらうぜ。』

「出来るもんならね。あと、今の名前は針縫だから。」

「なんだ?2人とも知り合いなのか?」

四天王なんか既に全滅させたであろう針縫がブロウスと会話しているのを見た俺は、驚きを隠せなかった。


『君だって私のことぐらいは覚えているだろう。』

『おっ、あんた水鏡じゃないか。刀を持てば俺に勝てるとでも思ってるのか?」

「ブロウス以外にも知り合いがいたの?竜也。」

賢王のことばかり気にしてる竜也が、他の四天王と話せる事に、私も驚きだ。


「あんたら、喧嘩大会で知り合ったんでしょ。なに互いに驚いてんのよ。」

そんな俺たちを見たリリムが、呆れたような表情で言う。


「あっ、そういう事か。」

私達は、同じタイミングで同じ事を言っていた。


『グルルル…ガウガウ!!』

今度は狼が、早く始めろと言わんばかりにうなり始める。

針縫は知らないようだから補足しておくが、あれは火の四天王〔無慈悲のヴァルフ〕。まあ針縫の相手ではないだろう。

「じゃあ始めていいぜ、針縫!やばそうなら教えてくれ。」

「ありがと。それじゃまずはブロウスから!」

私は彼から開戦の了承をもらうと、真っ先にブロウスに接近した。


彼は即座に狙われている事に気づき、手に持つ斧を構える。


『俺の斧さばきを見せてやるぜ!
斧技ー遠心撃!!』

そう叫んだ彼は斧を振り回し、十分力が乗った所で私のいる方向へと振り下ろす。


「私の新技も見せてやるよ。
針技ー真剣白刃砕き!!」

私はその一撃を双翼で挟み込んだ。トレーニングの成果により単体でも十分な破壊力を持ったそれは、斧を容易に粉砕する。
 私は飛び散る斧の破片を押し退けつつ、彼の背後に回り込んだ。斧を砕かれた事に驚いた彼は、一瞬反応が遅れてしまう。


「それじゃあちゃんと気絶してよ。おるぁぁぁ!!」

私は、ガラ空きになった彼の後頭部に、回し蹴りを喰らわせた。彼は言葉を吐くことも出来ずにその場に倒れ伏す。加減はしておいたので、死んだりはしてないだろう。


『ブロウスが一撃で倒れ伏した!?』

『なんて力持ってんのよ、あのダメ淫魔。』

この状況でもあの淫魔は私を馬鹿にするのか。
怒りの感情を持った私は、彼女に的を絞る。


「二度とその口開けなくしてやる!おるぁぁぁ!!」

そして、彼女の腹部にストレートをお見舞いしようとする。がもちろん、彼女も抵抗しないわけではない。


『私の力をあなどるんじゃないよ!
風魔法ーウインドシックル!』

彼女の風魔法が飛んでくる。だが、竜也の一件で対処法は知っている。
私は翼で体を持ち上げ、その魔法を躱す。ついでに切断したと思わせるために、本来切れる訳でもない翼を切り離しておいた。


『やっ…
がはっ!?え?』

やはり彼女は油断していた。私はその隙に胸ぐらを掴んで、地に叩きつけた。何が起きたのかの理解が追いつかない彼女の口が、虚ろに蠢くのが見える。
私は切り離した翼を引き戻し、腰ではなく手に持つ。


「これでトドメだ。
針技ー餓狼双鎌ガロウソウレン!」

私は双翼を、彼女の喉元と頭部に突き刺した。大量の血が吹き出し周囲を紅く染め、彼女の生命は完全に停止した。



偏西のリリムについて

針縫の意識外で壊滅させられていた四天王に代わって風の四天王の座に就いた淫魔。
火の四天王に就いていた姉〔熱風のリリス〕を殺した奴のことを憎んでいたが、それが針縫である事に気づくことはなかった。

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