とある鋭き針の物語

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能力開眼?

あれから針縫は、ただひたすらに効果を持った針を意識的に作る練習を繰り返していた。
儂が気づいたときには、更に2週間が経過していた。


「針縫もここまでよく頑張ったのう。そろそろ特能の隠れた力について話してもいいかもしれぬな…。」

「えっ!?ついに教える気になったって?」

儂は小声で言ったつもりじゃったが、あやつ、しっかり聞いておったらしい。その食いつき様は、もはや捕喰竜のそれすら超えとるかもしれぬ。


「聞かれてしもうたか…まあいいじゃろう。主、頼んだぞ。


了解!じゃあ早速だが、説明していくぜ。」

「早くしてよ!」

相変わらずだ。あの時空竜がドン引きする程はある。



「コスト10%の奴については、もう既に使えてるから省くとして…まずは針のバリエーションについてだ。針の形を自由に決める事が出来るのには気づいてるだろ。」

「ええ、女将さんに裁縫について教えてもらった時に気づいたからね。」

「なるほど、あの女将に。どおりで体術に長けているわけだ。
針の話に戻すが、どうやらその形状によって、効果の出し方を変える事が出来るようだ。」

「どういう事?」

「まあ…例えば、縫い針型の針で縫うのに使った糸に効果を持たせるとかかな。とにかく色々あるんだよ」

正直、口で言えるほど単純な話ではない。やり様によって、いくらでも可能性は見出せるからな。
ふと彼女の顔を覗くと、軽く煙でも上がってそうな表情を浮かべていた。

「ここまでは、恐らくやれば出来る範囲のものだ。重要なのはここからで、その翼についての話だ。」

「やっぱりこの翼に秘密があるのね!」

まるで予測でもついていたかの様な物言いだ。壊れない時点で気づくのは当たり前か。


「翼の針から話すが、どうやらその針、望んだ効果を即座に発動したり、作り変えたりせずとも効果を変更したり出来るらしい。ただのチートだよ…。」

「そうなの?でも私の特能は反映されないよ。」

「だから言っただろ、やろうとするだけじゃできないって。」

…言ってないよね。まあいいや。


「恐らくその性質は、潜在力を引き出さない限り干渉できない。何かきっかけがないとな!」

「そうなの…残念。」

「まあいずれ出来る様になるだろ。それに、話はまだ続いている。
その翼本体についてだ。そいつに関しては正真正銘コストゼロでメンタルマジックを使用出来るらしい。」

「え、MP消費ゼロで?」

「ああ」

「わざわざ印を組まずとも?」

「その通りだ。しかもそのリーチだ。使いこなせれば、邪神なんて敵じゃないだろうな。」

なんてこったい。私の苦労が泡になる効果をこの翼が持ってるなんて…。

針縫のある意味で絶望した表情、見てて面白いな。
まあこれでも味方だし、どうにかしてやらないとな…



「という訳だ、今後は外での実践も取り入れていく。いいな、針縫。」

「…えっ!?
ええ、喜んで。ようやく体を動かせるのか…。」

さすがは戦闘狂、体を動かしたくて、ウズウズしていた様だ…


「で、外ってなんだっけ?」

「はぁ!?嘘だろお前。


まあまあ落ち着くのじゃ。儂がここに引き込んでから、3週間も経つのじゃから。それにずっとメンタルマジックの勉強ばかりしておったのじゃ。外の事を忘れるのも無理はない。」

にしても忘れ過ぎじゃないか?まあ外に出ればすぐに思い出すだろう。


「あと、これを渡しておくよ。ほい、」

竜也が私に一枚の紙を渡してきた。


「うわぁ…。」

そこには、見るだけでも頭が痛くなりそうな構成式が書かれていた。上の方には〔軸の針〕と書かれている。


「そいつは俺が考えたチート針のレシピだ。強制はしないが、できれば作っといてほしい。」

「なんで竜也がつくらないの?」

「単純にコストが高過ぎるからだ。考えた本人が言うのもなんだが、軽減なしで9万越えはふざけてる。針縫のコスト軽減を使えば余裕だろ。」

「それでも9千越えなのね…。まあいいわ、気が向けばやっておくわよ。」

これまでの研究の時も、竜也のチート針には驚かされてきた。だがこれは、いつもの2倍は巻いてるだろう。
…とてもやりがいがありそうだ。


「とりあえずこの空間から出るぞ、針縫。
纏霊技ースペースロア!!」

そういうと竜也は、どこか懐かしげのある咆哮をする。それと同時に、今までいた空間が崩れ始めた。


「さあ、久々の境目界だ!!」



メンタルマジックについての補足

•簡単な構成であれば、仕組みを知らずとも発動できる事もよくある。

•無意識に使いこなしている種族も多少なりともいる。火を吐く竜族など、割と一般的なところにも存在している。

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