とある鋭き針の物語

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本戦の始まり

 私たちは、宿屋のカウンター前に集められた。生き残っていたベヒモス個体はカウンター前に入れないので、店の外から覗く形になっている。
集団の中から女将さんとライトさんが前に出た。


「さあみんな、お疲れ様!
ここにいる8人は、このあと行われる決勝戦に進むことになるよ...て、いうまでもないわよね。」

「とりあえず、決勝戦の仕様について説明する。まあ、変わるのは一つだけだがな。
 決勝戦はトーナメント形式を取らせてもらう。ただし、トーナメント表は発表されない。呼び出されて、
ステージに上がることで初めて、相手が誰なのかを知ることができるわけだ。」

いわゆるサプライズ形式ってやつだね。対戦相手が分かってしまえば、攻略法を考える時間も取れる。その対策だろうか?


「あと、私とライトを除いた6人には、宿の部屋を控え室として貸し出すわ。」

「控え室内に限り、能力等の使用を許可する。呼び出されるまでは、そこで闘いに備えてくれ。」

「じゃあ、理解できた人からこの番号札を受け取ってね。貸し出す部屋の番号になっているからね。」


こうして私たちは、女将さんから番号札を受け取り、指定の部屋へと向かうのだった。

...?
どうやらベヒモスだけ取り残されているようだ。

「あら、ごめんなさい。私としたことが忘れちゃってたわ。ベヒモスさんはあちらの巨獣用スペースを利用して下さいね。」

この言葉を理解したベヒモスは、他より遅れて控え場絵と向かった。




「よし、準備完了!
いつでも臨めるわよ!!」

私は準決勝への準備を終わらせた。……そう、準決勝である。

 というのも、準々決勝の相手は運良く生き残ってしまったタイプの狐人だったのだ。流石のラッキー持ちも、一対一かつ障害物のない場所では非力だったようだ。拳一発で沈めることができたあたり、ラッキーに依存していたのだろう。
お陰で、何の達成感もなく、準々決勝が終わってしまったのである。観客も、静まり返ってしまっていた。

......あれ?そういえば、いつのまに参加者観客は復活していたのだろうか?あれだけボコボコになっていたのに、治るには早すぎる。
それに、休憩中に何者かの咆哮のようなものも聞こえた気がする。何かあったんだろうか......。

私は闘いとは関係ないところに疑問を感じつつ、呼び出しを待っていた。



「シャープレイン様、お呼び出しです。」

数分すると、スタッフから呼び出しがかかる。準々決勝の時もそうだったが、様付けられるのには強い違和感を感じてしまう。


「分かった、今行くわ。」

私は呼びかけに応じ、すぐにステージに向かった。




「よう、シャープレイン。お前と全力で闘えるのを楽しみにしてたぜ。」

「師匠!やはり勝ち進んでいましたか。」

 ステージに立っていたのは、ライトだった。この人とは決勝で闘いたかったが、まあいいや。多分だけど、この人でもあの黒い人には勝てないだろう。戦えるだけ幸せだと思おう。


「よし、そんじゃ始めるか。お互いに手加減は無しだぞ。」

「言われなくても!」

もとより手を抜くつもりはない。それどころか、本気を出さずして勝てる相手ではないことを私は理解している。
私は一息吐いて、気持ちを闘いに集中させる。

『それでは準決勝戦、
〔ライト〕対〔シャープレイン〕を始めます。
3...2...1...
スタート!!!』



狐人について

珍しく人に崇められることが多い種族。
結構高位な魔物であり、魔力を持つ個体が多い。
体技を得意にしてはいるが、魔力を扱えぬ状況では極端に弱くなる。

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