とある鋭き針の物語

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唐突の四天王戦

 私たちの闘いは幕を開けた。
先に動いたのはブロウスの方だ。腰を深く落とし、正拳突きの構えをとった。あの時邪神がとっていたものとは比べものにならないほど、落ち着いている。


『真-正拳突き!!』

その声と同時に奴は動く。邪神が放ったものよりも、さらに鋭い拳が私に迫る。あの時の私なら、そのまま直撃で即死だっただろう。だが...


「甘い!!」

今の私は違う! 私は真っ直ぐに向かい、身をかがめてその一撃を躱す。そもままスピードを落とさずに奴の懐に潜り込む。


「これでも喰らいな!オルァァァ!!!」

そして、その足めがけて全力の蹴りをお見舞いする。躱しきれなかった奴はもろにその蹴りを受けていた。


『ぐっ、うおっ!?』

奴は、真っ直ぐ前に向かって転倒する。
私はその隙に合わせて追撃を喰らわすために切り返し、奴の方を向く。しかしここで、予想外の事態が私を襲う。


「!?」

なんとそこには、奴の両足があった。腕で地を跳ね、足を伸ばしていたらしい。もはや防ぐこともできずその一撃に直撃した私は、大きく後ろに吹き飛ばされた。
だがその一撃は、腕の力のみで無理矢理放ったものであったため、そこまでのダメージは受けずに済んだ。

私はすぐに態勢を立て直す。奴はこちらを向いてはいるものの、先ほどの一撃で骨が折れてしまったらしく、まだ立ち上がれていない。
私は立ち上がる隙を与えずに、今度は頭部に強打を喰らわせようと思った。だが、それを実行する直前に、後方に何者かの気配を感じた。


『油断したわね。喰らえー!!』

ああ、もったいない。不意打ちは当てるまで隠密行動を意識するべきなのに…。そして私は、わざと声に出してまんまの気持ちを述べた。


「もっと静かに遂行しやがれー!!」

私は重心を横にずらして直撃を避け、奴が攻撃に用いた部位を無理矢理掴んだ。そいつはハーピー種だった。さっきから羽音がうるさいと思っていたけど、そういうことか。掴んだ部位はその右脚らしい。
抵抗されても困るので、一度地面に叩きつける。


『痛っ、……ガハッ』

…まあ、強襲に全てを振っているような種族だ。こうなっても仕方のないことだろう。


 そろそろこの件も切り上げるとしよう。
私は掴んでいる足をへし折る。そして、こいつの悲鳴など気にもとめず、思いっきりブロウスの方に向かって投げ飛ばした。
足を折らたブロウスは立つことに精一杯で、この攻撃に気づいていない。奴は私が投げ飛ばしたハーピーに直撃し、またも転倒してしまう。

 今度は反撃の隙など与えない。


「まずはこいつから!!」

すぐに私は懐に潜り込んだ私は、投げつけたハーピーごと巻き込んで腹部にストレートを叩き込む。


『ぐっ、ガハッ。』

奴は血を吐いた。ハーピーの方はとっくに気絶し、地に倒れ伏している。
だが私は容赦しない。とくに、私に仇なす魔王関係者においては。


「次はこれだよ!!」

更に体をかがませ、足のバネの力を乗せて、奴の顎にアッパーを喰らわせる。抵抗できない奴は、そのまま宙を舞う


『ガハッ、ゴホッ、グググ……。』

もはや口すら開けなくなっていた。だが、かわいそうだと思う気持ちなど私にはない。


「これでトドメ!喰っらえー!!!」

私はトドメ宣言をし、奴の更に上に位置取る。そして、思いっきり顔面を殴り、地に叩き落とした。
さすがのやつも、完全に気絶していた。ただし、まだ息はあるようだ。さすがはタフ。




こうして私はブロウスに圧勝した。そしてこの一カ月の頑張りを証明することもできた。

「ふ〜。スッキリした〜。」

そして私は、ゆっくりと息を吐いた。ここまで清々しい気分を味わったのは、いつぶりだろう。


 十分にその気分を満喫した私は、周りを見渡してみた。ライトさんと女将さんは、やはり生き延びている。開始前に気になっていた黒い人は、今もなお闘っ......えっ!?
彼の周りに、いくつもの大型魔物が倒れ伏している。そのほとんどを倒したとでもいうの!?
私の視界内では、目にも留まらぬ速さで大型魔物を圧倒している彼の姿があった。



「終了ー!!闘いの手を止めて下さい!!」

彼の恐ろしさに呆然としていると、ライトさんが終了の呼びかけをした。再度周りを見回してみると、私を含めた8人が、生き延びているのを確認できた。


「それでは決勝に進みます。生き残っている皆さんは、控え室に移動して下さい。」

ラインさんはそう呼びかけた。生き残った私たちは彼に続き、控え室に移動したのであった。




強打のブロウスについて

四天王の1人で、斧使いのミノタウロス。実は素手の方が強い。
 四天王最強と謳われており、賢王との信頼関係が最も高い魔物でもある。
 シャープレインが脱出した時は、魔王城に魔王兄弟を描いたものを飾るための額縁を買いに出ていた。

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