境目の物語
戦いが終わり……
どこまでも青空が広がる晴天の朝、怒鉱の大火山の……中腹あたりだろうか。そこでは人知れず、種族の存亡を賭けた戦いが行われていた。
依頼を受けて現れた少年、出禁を理由に帰っていた青年、そして仇敵に立ち向かった勇敢な竜人の民たち。彼らは死闘の末、仇敵である転生者を葬るに至った。
しかしこの事件は終始一貫して、多くの犠牲者を出し続けた。
元々暮らしていた里の民、その6割以上は帰らない。生き延びた戦士たちも全員が気絶した状態で見つかり、昏睡状態にある者も多かった。
精鋭の戦士たちの全滅、採掘労働者の大規模な減少、ほかにも人知れず消された者たち……。挙げればキリのない犠牲の数々は、言うまでもなく里に大打撃を与えた。
だが、そう悲しいことばかりではない。
これまで部外者の手を借りることを嫌っていた里長さまも、今回ばかりはと腹を括ったらしい。戦士たちの勝利を確認した彼は、正午には
救援要請を発動していた。
要請は一匹のネコを筆頭に、驚くほどの速さで伝わる。そして受け取った人々も、迅速に行動を開始した。
特産品の商売で世話になった商人たちは、里に不足していた物資を届けるようになる。また冒険者パーティのヒーラーや国直属の医療班は、ここぞとばかりに駆けつけて、治療やメンタルケアを施した。
さらに近隣の冒険者たちも、その多くが集まる。彼らは精鋭が当たっていた仕事を肩代わりしたり、依頼で鉱山労働の代理を務めたり、中には戦いの場を調査しに行く変わり者の姿もあった。
そして私たちもまた、人知れず手を貸していた。のだが……
『さあて、この一週間で何があった?』
愚痴を吐きながら、目の前の怪物どもに斬り込む。
延々と広がる廃都市の上空、ちょうどおやつが欲しくなる頃合い。すでに百は斬り捨てたが、まだまだ数に終わりが見えない。
『5日目でハヤテマルと会うことは予想していた。火山へ行くのもその流れだ。そうなれば転生者との遭遇は時間の問題だが、能力さえ使えるようになれば自ずと勝機は見えてくる。ここまでの予測は、あらかた間違っていなかった』
……だが、
『グランサーが顕現した? よりにもよって、最凶最弱と名高い密告者が? 馬鹿過ぎるにもほどがある。何をしているんだあの神は!?』
背の高い廃れたビルの屋上で、思わず地団駄を踏む。私がここまでの面倒さを感じるのも、無理はない。
そもそも厄災に顕現なんて概念は存在しない。どう考えても、すべて神の仕業だろう。
それにグランサーの役割は、目の前に広がるこれを呼び寄せることだ。単体なら私には危険がないが、軍勢となると苦しい。
『それを聞きたいのはオレの方だ。数百年ぶりの休暇だというのに、なぜ戦わねばならん』
愚痴を吐きながら、灰色のフード付きコートで全身を覆った男が横切る。鍛冶の先生にあたる、ヤン師範だ。
『おいG.D、風見の野郎が散ったぞ!』
仲間の脱落を報告しながら、血染めのコック服を着た男が寄ってきた。知り合いの解体料理長、番亂さんだ。
全員が休暇を取ってここにいるのだが、遊びに来てすぐこれだ。やはりこの数を相手にするのは相当骨が折れるらしい。
そもそも私以外は戦闘が主の職でなく、すでに落とされた風見さんに限っては作画担当。あの界隈では超一流だが、戦闘にはまったく向いていない。
本当に申し訳ないことだ。しかし、今は協力してもらう他ない。この廃都市を越えられては、本土を攻め込まれかねない。
『ヤン師範は右を、番亂さんは左を頼む。なんとしてでも3日以内に片付ける。行くぞ!』
『チッ、報酬は要求させてもらうからな!』
『解体ショーの始まりだぜッ!』
合図と共に、私たちは目の前に群がる怪物に突撃していった。
最後の蛇足は置いておくにしても、竜人の山里を救うために多くの人が動いた。これは他の種族を嫌う彼らにとって、初めての出来事だっただろう。
好循環は形から心へと伝わり、プライドの高い竜人族にも、他種族への感謝の心が芽生える。その心は空間を通して広がっていき、新たな活気を生み出した。
もうこの里に、ひどく淀んだ空気が漂い続けることなどない。そういう意味では、里は復活を果たしたのだった。
以上、こちら我道さん。現状の報告を終了する。
次の目覚めは……3日後と予測。願わくば厄介者の干渉なく、無事に目覚めを迎えられますよう、私は祈り続けるとしよう。
待っているよ、我が最愛の弟子……ラグ
(ryトピック〜【黄金の四叉戟】について〜
魔人吉本 信夫の能力。フォーク型の魔法や技が使えるようになる能力【フォークフレーム】がチート能力として昇華されたものである。
フォークの型を使うだけでなく、突き刺さった獲物の精神力を使用して魔法の長時間維持を実現。効果の書き換えや発動のキャンセル、レベルによっては効果の重複発動も可能。
すでに頭が痛いが、ここに主人公補正が介入。任意必中や高位魔法の無条件習得など、やりたい放題である。
もし相手にするのであれば、迎撃手段の用意は必須。幸いにも消費MP軽減は一切付与されていないので、耐久してMP切れを狙うのもあり。
なお防御方面の効果はないので、大技で消し飛ばす作戦が最適解と言えるだろう。
……え? 結界を張ってくるだって?
依頼を受けて現れた少年、出禁を理由に帰っていた青年、そして仇敵に立ち向かった勇敢な竜人の民たち。彼らは死闘の末、仇敵である転生者を葬るに至った。
しかしこの事件は終始一貫して、多くの犠牲者を出し続けた。
元々暮らしていた里の民、その6割以上は帰らない。生き延びた戦士たちも全員が気絶した状態で見つかり、昏睡状態にある者も多かった。
精鋭の戦士たちの全滅、採掘労働者の大規模な減少、ほかにも人知れず消された者たち……。挙げればキリのない犠牲の数々は、言うまでもなく里に大打撃を与えた。
だが、そう悲しいことばかりではない。
これまで部外者の手を借りることを嫌っていた里長さまも、今回ばかりはと腹を括ったらしい。戦士たちの勝利を確認した彼は、正午には
救援要請を発動していた。
要請は一匹のネコを筆頭に、驚くほどの速さで伝わる。そして受け取った人々も、迅速に行動を開始した。
特産品の商売で世話になった商人たちは、里に不足していた物資を届けるようになる。また冒険者パーティのヒーラーや国直属の医療班は、ここぞとばかりに駆けつけて、治療やメンタルケアを施した。
さらに近隣の冒険者たちも、その多くが集まる。彼らは精鋭が当たっていた仕事を肩代わりしたり、依頼で鉱山労働の代理を務めたり、中には戦いの場を調査しに行く変わり者の姿もあった。
そして私たちもまた、人知れず手を貸していた。のだが……
『さあて、この一週間で何があった?』
愚痴を吐きながら、目の前の怪物どもに斬り込む。
延々と広がる廃都市の上空、ちょうどおやつが欲しくなる頃合い。すでに百は斬り捨てたが、まだまだ数に終わりが見えない。
『5日目でハヤテマルと会うことは予想していた。火山へ行くのもその流れだ。そうなれば転生者との遭遇は時間の問題だが、能力さえ使えるようになれば自ずと勝機は見えてくる。ここまでの予測は、あらかた間違っていなかった』
……だが、
『グランサーが顕現した? よりにもよって、最凶最弱と名高い密告者が? 馬鹿過ぎるにもほどがある。何をしているんだあの神は!?』
背の高い廃れたビルの屋上で、思わず地団駄を踏む。私がここまでの面倒さを感じるのも、無理はない。
そもそも厄災に顕現なんて概念は存在しない。どう考えても、すべて神の仕業だろう。
それにグランサーの役割は、目の前に広がるこれを呼び寄せることだ。単体なら私には危険がないが、軍勢となると苦しい。
『それを聞きたいのはオレの方だ。数百年ぶりの休暇だというのに、なぜ戦わねばならん』
愚痴を吐きながら、灰色のフード付きコートで全身を覆った男が横切る。鍛冶の先生にあたる、ヤン師範だ。
『おいG.D、風見の野郎が散ったぞ!』
仲間の脱落を報告しながら、血染めのコック服を着た男が寄ってきた。知り合いの解体料理長、番亂さんだ。
全員が休暇を取ってここにいるのだが、遊びに来てすぐこれだ。やはりこの数を相手にするのは相当骨が折れるらしい。
そもそも私以外は戦闘が主の職でなく、すでに落とされた風見さんに限っては作画担当。あの界隈では超一流だが、戦闘にはまったく向いていない。
本当に申し訳ないことだ。しかし、今は協力してもらう他ない。この廃都市を越えられては、本土を攻め込まれかねない。
『ヤン師範は右を、番亂さんは左を頼む。なんとしてでも3日以内に片付ける。行くぞ!』
『チッ、報酬は要求させてもらうからな!』
『解体ショーの始まりだぜッ!』
合図と共に、私たちは目の前に群がる怪物に突撃していった。
最後の蛇足は置いておくにしても、竜人の山里を救うために多くの人が動いた。これは他の種族を嫌う彼らにとって、初めての出来事だっただろう。
好循環は形から心へと伝わり、プライドの高い竜人族にも、他種族への感謝の心が芽生える。その心は空間を通して広がっていき、新たな活気を生み出した。
もうこの里に、ひどく淀んだ空気が漂い続けることなどない。そういう意味では、里は復活を果たしたのだった。
以上、こちら我道さん。現状の報告を終了する。
次の目覚めは……3日後と予測。願わくば厄介者の干渉なく、無事に目覚めを迎えられますよう、私は祈り続けるとしよう。
待っているよ、我が最愛の弟子……ラグ
(ryトピック〜【黄金の四叉戟】について〜
魔人吉本 信夫の能力。フォーク型の魔法や技が使えるようになる能力【フォークフレーム】がチート能力として昇華されたものである。
フォークの型を使うだけでなく、突き刺さった獲物の精神力を使用して魔法の長時間維持を実現。効果の書き換えや発動のキャンセル、レベルによっては効果の重複発動も可能。
すでに頭が痛いが、ここに主人公補正が介入。任意必中や高位魔法の無条件習得など、やりたい放題である。
もし相手にするのであれば、迎撃手段の用意は必須。幸いにも消費MP軽減は一切付与されていないので、耐久してMP切れを狙うのもあり。
なお防御方面の効果はないので、大技で消し飛ばす作戦が最適解と言えるだろう。
……え? 結界を張ってくるだって?
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