境目の物語
我道さんの賄い
俺が外に飛び出ると、左手にある訓練場の方から、カンッ!カンッ! と槌を打ち付けるような音がが聞こてきた。
すぐにそちらの方へ行くと、第一印象真っ黒の男が木材に釘を刺す姿が目に入った。
真っ黒な肌にニット帽、わずかな風にもなびくコートを身に纏ったスレンダーなその姿。間違いない、我道さんだ。
俺はすぐ彼に近づこうとしたが、途中で体力が尽きて、ズザザーッと転んでしまう。
どうにか起き上がろうとしていると、彼が作業の手を止めて、こちらに近づいてきてくれた。
『無理するなラグ。飯を用意したから……とりあえず椅子に座らせるぞ』
彼がそこまで言うと、弱々しい力で俺の体を持ち上げて、そばに置いてあった椅子に座らせる。
その後すぐに鍋を持ってきて、中から葉っぱ巻きのようなものを取り出す。それを皿に乗せて、こちらに寄越してきた。
『私お手製のロールキャベツだ。出来たてだから、冷めないうちに食ってくれ』
「分かった」
正直死ぬほど腹が減っている今、これを食わぬ理由などない。
俺は手元に用意してあったフォークとスプーンを手に取り、そのロールキャベツ?とかいう葉っぱ巻きを口に運んだ。
「……美味い」
…………?
「……ていうか、美味すぎじゃね!?」
俺は反応が遅れてしまう程に、この出来たてロールキャベツの美味さに感動していた。
食材選びだけでなく、味付けすらも完璧にこなされたそれは、俺が今まで食べてきたなにものをも凌駕する程の美味さを秘めていた。
『私の自信作は美味しいだろう。なにせアグリネイト産の最高級かつ新鮮な食材と、私の技量が掛け合わされた料理だからな』
彼は自慢気に言ってくる。だがそれも、否定できるものではない。
あまりの美味さに食べる手が止まらずにいた俺は、30秒足らずでそれを完食した。
「おかわり!!」
『拝承した。まだまだあるから、気の済むまで食え』
「おう!!」
我道さんが次のロールキャベツを出すと、獲物から物品を奪い取るあのスチールラプターの如く、ただひたすらにそれを貪る。
そんなこんなを繰り返し、俺が満足した頃には、8個分のロールキャベツを食べ終えていた。
ry(トピック〜訓練場について〜
冒険者が周囲に迷惑をかけることなく、自らの鍛錬に取り組める場として、用意されているフリースペース。休憩施設と違い、大体のギルドで採用されている。
元々は上級冒険者が初心者冒険者に闘いを教える訓練の場として存在していたが、近年戦わない冒険者が増え、上級冒険者の数自体も減ってしまった為、今の姿に落ち着いている。
すぐにそちらの方へ行くと、第一印象真っ黒の男が木材に釘を刺す姿が目に入った。
真っ黒な肌にニット帽、わずかな風にもなびくコートを身に纏ったスレンダーなその姿。間違いない、我道さんだ。
俺はすぐ彼に近づこうとしたが、途中で体力が尽きて、ズザザーッと転んでしまう。
どうにか起き上がろうとしていると、彼が作業の手を止めて、こちらに近づいてきてくれた。
『無理するなラグ。飯を用意したから……とりあえず椅子に座らせるぞ』
彼がそこまで言うと、弱々しい力で俺の体を持ち上げて、そばに置いてあった椅子に座らせる。
その後すぐに鍋を持ってきて、中から葉っぱ巻きのようなものを取り出す。それを皿に乗せて、こちらに寄越してきた。
『私お手製のロールキャベツだ。出来たてだから、冷めないうちに食ってくれ』
「分かった」
正直死ぬほど腹が減っている今、これを食わぬ理由などない。
俺は手元に用意してあったフォークとスプーンを手に取り、そのロールキャベツ?とかいう葉っぱ巻きを口に運んだ。
「……美味い」
…………?
「……ていうか、美味すぎじゃね!?」
俺は反応が遅れてしまう程に、この出来たてロールキャベツの美味さに感動していた。
食材選びだけでなく、味付けすらも完璧にこなされたそれは、俺が今まで食べてきたなにものをも凌駕する程の美味さを秘めていた。
『私の自信作は美味しいだろう。なにせアグリネイト産の最高級かつ新鮮な食材と、私の技量が掛け合わされた料理だからな』
彼は自慢気に言ってくる。だがそれも、否定できるものではない。
あまりの美味さに食べる手が止まらずにいた俺は、30秒足らずでそれを完食した。
「おかわり!!」
『拝承した。まだまだあるから、気の済むまで食え』
「おう!!」
我道さんが次のロールキャベツを出すと、獲物から物品を奪い取るあのスチールラプターの如く、ただひたすらにそれを貪る。
そんなこんなを繰り返し、俺が満足した頃には、8個分のロールキャベツを食べ終えていた。
ry(トピック〜訓練場について〜
冒険者が周囲に迷惑をかけることなく、自らの鍛錬に取り組める場として、用意されているフリースペース。休憩施設と違い、大体のギルドで採用されている。
元々は上級冒険者が初心者冒険者に闘いを教える訓練の場として存在していたが、近年戦わない冒険者が増え、上級冒険者の数自体も減ってしまった為、今の姿に落ち着いている。
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