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バミューダ・トリガー

梅雨姫

四十五幕 武装兵士《ヴァロジニァン》


太一たいち航平こうへいは、龍王 蓮鎖りゅうおう れんさ達が創立した組織に加入した、十六歳の《バミューダ》被害者だった。

親兄弟を失ったという点、身寄りがなかった点、趣味が似ていた点など、要所で気が合い、共に怪異事件を解決しようと誓った仲だった。

霊峰町に来る前は、四国の山間地域で農作業を営む老夫婦の元で働きながら、地元の学校に通っていた。
しかし、地元の学校が過疎化による生徒減少で閉校したことを切っ掛けに、この町へと越してきたのだった。

互いに戦闘に特化した能力に目覚め、どんな相手が敵に現れようと倒せるよう、鍛練を積んだ。

初めこそ、どちらも能力の扱いが上手くいかず、威力は上手く決まったときでも樹の幹を折る程度のものだった。
しかし、来る日も練習を重ね、互いの腕はメキメキと上達。やがて、それぞれが人間大の岩くらいであれば一撃で破砕する程にまで成長していた。

「一人で勝てねぇときは、援護頼むぜ?」

「僕が一人で引き受けてあげてもいいけど?」

互いに互いを認め合い、信頼していた。

怪異事件の根源を、断ち切るために。


―――――――――――――――――――――――――


ギィインッ

「・・・っか、」

力なく落下する体。

受け身をとる力すらも、もう残っていない。

手応えは―

無かった。


(済まない、太一・・・済まない・・・)


涙が滲む目に映ったのは―

宙を舞う、膝からもぎ取られた己の右足と。

両手の拳を高々と掲げ、今にも降り下ろそうとする巨躯の男の姿。

聞こえたのは。

「潰れ、ろ・・・」

重々しい死の声だった。


―――――――――――――――――――――――――


商店街を抜けた瞬間、龍王 蓮鎖りゅうおう れんさは声を上げた。

武装兵士ヴァロジニアンッ・・・!」

いつの間にか蓮鎖の右手には銀と黒の二色に染められたモデルガンが握られており、そこからは弾けるように断続的に明滅する銀色の光が放たれていた。

それと同時に女装時に着ていた春コーデの服は消え去り、代わりに、銀色に光る装飾以外が漆黒に統一された軍服が顕現する。

兵士とも指揮官とも判断のつかない装飾の施された服であった。
しかしその身体から放つ圧倒的な威圧は、まさに一国の軍隊が進軍してきたかのような、底冷えするものだ。

「なんだ・・・あの姿・・・!」

怪校で過ごした時間のなかで、龍王蓮鎖がその能力を見せたことは無かった。

だが、ただひとつ。

怪校に在中していた中学生、高校生全員に知れ渡っていた格言がある。

「龍王の能力は、全てを制する弾丸の連鎖」

ゴァッ

蓮鎖の服装が変化した途端、ただでさえ追うのがやっとであった速度がさらに上がる。

「ちっ、どうやら東区へ向かっているみてぇだな・・・おい!二人ともこっちへ来い!」

「何か策があるんだね?」

秋仁の一言に何らかの意図を感じ取った影近が問いかけた。

「ああ。東区の西にあるネットカフェにあるパソコン・・・以前に一度だけ行ったことがあるんだが、恐らくは・・・」

「っ!なるほど、加賀の能力の発動条件を満たしているということか」

秋仁の魂胆を悟った頼矢が、その意図を口にする。

「そうだ。お前ら、俺に触れてろ」

「なるほどね。そういうことなら失礼して・・・」

「急ぐぞ」

交互に言うなり、頼矢と影近はそれぞれ秋仁の服の両袖をつかんだ。

「頼むぞ・・・怠惰即ちアインワークっ!」

瞬間、三人の姿が闇に消えた。


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怪校西区のネットカフェ内に、秋仁、頼矢、影近の三人は瞬間移動した。

突如現れることになるため騒ぎになる事を懸念していたが、流石は個人のプライベート空間を作り出すことができるネットカフェ。客たちは各々自分の作業に熱中しており、三人の出現に気づいた様子の人は居なかった。

「ふぅ、また来てみてぇな・・・」

「バカ言ってないで行くぞ!」

「ちっ、分かってるっつの」

一足先に出入り口に向かっている影近を、二人は急いで追った。

店から出たところは比較的街灯も多く、明るい通りである。
住宅地というよりは街中だと判断した。

「はぁ、こっからが問題なんだよな。龍王先輩はどこへ向かっていたのか・・・」

「それならボクに任せて。索敵に適した型があるから、それを使ってみるよ」

「あ?あぁ」

困惑を浮かべた秋仁をよそに、影近は竹刀を右手で握り、刃先を地面に接するか否かの際どい位置まで下げて構える。

そして、顔を伏せながら呟く。

白心・百波はくしん・びゃくは・・・」

刹那。

秋仁と頼矢は、何かが己の体をすり抜けていくような、微かな不快感を覚えた。

次いで二人は、以前怪校の地下で影近が技を披露したときの事を思い出した。

影近は師匠である祖父から「白心」と「黒心」、二つの型を習い、自分に合っていると感じた「白心」を得意の型としたという。

「「・・・」」

二人が沈黙していると、数秒後、影近が伏せていた顔を上げた。

「・・・ふぅ、入ったね。・・・なるほど」

「で、どうなんだ?」

何やら一人で納得をした様子の影近に、思わず頼矢が問いを投げた。

「山下公園だよ。そこに向かってる」

「はっ。頼矢、影近、朗報だ。そっちの方角にはもう一ヶ所、「怠惰即ち」の発動条件を満たした施設がある」

三人は目配せして意思疏通を図ると、互いに頷きあう。そして頼矢と影近は、再び秋仁の服の両袖を握りしめた。


―――――――――――――――――――――――――


三点が交わるのは、霊峰町山下公園である。

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