マスカレイド@異世界現代群像のパラグラフ
4.ウォーゴッド
「よっしゃあ、待ってました!」
迫るリーゼを見てブレイズのテンションが急激に上がり、カノンのテンションは逆に下がった。
「ブレイズ、話聞いてなかった……」
カノンは顔を少しうつむかせながら言った。ブレイズのあの様子から考えるに、後半カノンと杏香の二人で話していた部分は聞き流して、最悪の場合は寝ていた可能性もあるとカノンは分析した。
「いつものことなんだから、一々へこんでたら身が持たないわよ」「うん……あ、後ろ、凄く速いリーゼが来る」「なっ……! 早え!」
レーダーを覗くブレイズが、思わず声を上げた。
「狙いはこいつ? 前の大群は囮だっていうの!?」「攻撃来る、魔力フィールドを……」
カノンは両脇の青い球に手を触れ、目を閉じ集中した。すると、その青い球は輝きだし、WG―Σの背後に、WG―Σを包み込むようなおおきな魔法陣が形成された。 そして程無く、その魔法陣の表面に、水色と黄色の光の筋が当たり、四散した。相手の攻撃が着弾したのだ。
「結構出力の高い魔法エネルギーね……カノン、大丈夫?」「うん。それより、まだ来る」
杏香はレーダーを見た。相手は相変わらず、凄い速度でこちらに向かってきている。もうじき接触するだろう。
「勢いは全く衰えてないか……」
杏香が呟いた。あれほどの大出力の魔法エネルギーを放ったのに、機体の速度は減衰することなく、同じ速度で動いている。
「よっしゃあ! 接近戦だ!」
ブレイズは嬉しそうにそう叫ぶと、右脚部で地面を思い切り踏みつけた。その衝撃で、土や砂埃が宙を舞う。 そして、次に左脚部のブースターだけを吹かした。ブースターの噴出音と共に、WG―Σがぐるりと後ろを向く。
「……来た」
カノンが言った。モニターには、遠目に映し出された黒いリーゼが、赤いマントをはためかせながら跳躍している姿が映っている。他の二人のモニターも同じだ。この状況では三人ともメインモニターを見て、黒いリーゼの行動を洞察するしかない。
「高出力の魔力砲を持っててスピードも凄いのに、接近戦も仕掛けるっての!?」「何でもいい、ぶった切ってやるぜ!」
WG―Σは右腕部のブレードで、黒いリーゼに斬り付けた。黒いリーゼは、同じく右腕部に持っている炎を纏った剣で、それを受け止めた。黒いリーゼが後ろに押し戻された影響で、その足元からは土煙が上がっている。
「Σの攻撃を剣で受けたのか!?」「フラムベルグよ! 近距離用にもあんなの持ってるの!?」「パイロット、凄い」
WG―Σの三人は、それぞれ驚きの声を漏らした。
「魔具とはいえ並みの腕じゃ無いわね。あの重量差を……」
杏香が言った。黒いリーゼは魔力を纏った武器防具『魔具』の中でも高位の部類である『フラムベルグ』を装備していて、パイロットの腕も立つようだ。今の動きを見ると、むしろ近距離戦の方が得意ともいえるだろう。あんな機体で接近戦をしかけられたら、普通の機体ならばひとたまりもなかった。 黒いリーゼは水色のバーニアを吹かし、赤いマントをはためかせながら、再度、WG―Σに急接近した。
「こいつっ!」
ブレイズもWG―Σを前進させ、再び斬り付けた。が、その剣は、黒いリーゼの一寸横をすり抜け、地面へと振り下ろされた。
「なっ!?」「何やってんの、下がって!」「やってる!」
ブレイズと杏香の声が、交互に響く。ブレイズは急いでWG―Σを飛び退かせたが、黒いリーゼの持つフラムベルグの切っ先は、WG―Σの左肩部のすぐ側まで来ていた。
「胴体のコントロールを!」
杏香は黒い機体に近寄られたら、WG―Σの左手に持つシールドで攻撃を防ごうと考えていたが、フラムベルグは既に、シールドの内側へと入り込んでいる。今からでは遅い。 杏香は強引に胴体のコントロールを自分へ移すと、急いで胴体を右向きに、思いきり回転させた。
――ガキッ!
金属同士がぶつかり合い、強烈な音が響く。WG―Σの胴体はさらに回転し、間一髪のところで、WG―Σの左腕部が、黒いリーゼの右腕部を弾き返したのだ。 WG―Σの胴体は、勢い余ってさらに回転した。およそ二回転半だろうか。
「おい、乱暴だな、杏香!」「目が回るー……」「仕方ないでしょ、加減してる余裕なんてなかった!」
三人がWG―Σの体勢を立て直している間に、黒い機体が素早く後ろへと跳躍しつつ、魔力砲を放つ。
「くっ……!」
杏香は左腕部を動かし、シールドでそれをガードした。
「あの機体、逃げる」
黒いリーゼが、今度は急速にWG―Σから離れていることを、カノンがレーダーから察知し、二人に伝えた。
「させるかよ! ガドリングで!」
ブレイズは、黒いリーゼが反転する隙を狙ってガウスガドリングを打ち込もうと思った。が、その前にカノンが声を上げた。
「右から攻撃、来る」「え!?」
カノンの声で、杏香がカメラを見る。すると、炎を纏ったオーブがすぐそこまで来ていた。カノンはレーダーでなく、モニターも注視をしていて、モニター越しに、ひっそりと近づくオーブを発見したのだ。 しかし、気付くのが遅かった。砂煙やリーゼの影に身を隠しながら近づくオーブは発見しにくいし、レーダーとモニターを並行して見ていたので、さやかでさえ発見が遅れたのだ。オーブはそのままWG―Σに激突すると、爆炎を巻き上げ、粉々に砕け散った。
「うぐああっ!」「うわあっ!」「……!」
三人が思わず声を上げる。決して少なくない衝撃が、コックピットを走った。
「ぐ……黒い機体は!?」「もう遠くに行っちゃったわ! それよりもこいつらを何とかしないと!」「……ちっ、仕方ねえか!」
さすがのブレイズも、WG―Σを囲む大量のゼゲを見れば、そちらを優先せざるを得ない。 三人はひとまず、周りのゼゲを蹴散らすことに専念することにした。
迫るリーゼを見てブレイズのテンションが急激に上がり、カノンのテンションは逆に下がった。
「ブレイズ、話聞いてなかった……」
カノンは顔を少しうつむかせながら言った。ブレイズのあの様子から考えるに、後半カノンと杏香の二人で話していた部分は聞き流して、最悪の場合は寝ていた可能性もあるとカノンは分析した。
「いつものことなんだから、一々へこんでたら身が持たないわよ」「うん……あ、後ろ、凄く速いリーゼが来る」「なっ……! 早え!」
レーダーを覗くブレイズが、思わず声を上げた。
「狙いはこいつ? 前の大群は囮だっていうの!?」「攻撃来る、魔力フィールドを……」
カノンは両脇の青い球に手を触れ、目を閉じ集中した。すると、その青い球は輝きだし、WG―Σの背後に、WG―Σを包み込むようなおおきな魔法陣が形成された。 そして程無く、その魔法陣の表面に、水色と黄色の光の筋が当たり、四散した。相手の攻撃が着弾したのだ。
「結構出力の高い魔法エネルギーね……カノン、大丈夫?」「うん。それより、まだ来る」
杏香はレーダーを見た。相手は相変わらず、凄い速度でこちらに向かってきている。もうじき接触するだろう。
「勢いは全く衰えてないか……」
杏香が呟いた。あれほどの大出力の魔法エネルギーを放ったのに、機体の速度は減衰することなく、同じ速度で動いている。
「よっしゃあ! 接近戦だ!」
ブレイズは嬉しそうにそう叫ぶと、右脚部で地面を思い切り踏みつけた。その衝撃で、土や砂埃が宙を舞う。 そして、次に左脚部のブースターだけを吹かした。ブースターの噴出音と共に、WG―Σがぐるりと後ろを向く。
「……来た」
カノンが言った。モニターには、遠目に映し出された黒いリーゼが、赤いマントをはためかせながら跳躍している姿が映っている。他の二人のモニターも同じだ。この状況では三人ともメインモニターを見て、黒いリーゼの行動を洞察するしかない。
「高出力の魔力砲を持っててスピードも凄いのに、接近戦も仕掛けるっての!?」「何でもいい、ぶった切ってやるぜ!」
WG―Σは右腕部のブレードで、黒いリーゼに斬り付けた。黒いリーゼは、同じく右腕部に持っている炎を纏った剣で、それを受け止めた。黒いリーゼが後ろに押し戻された影響で、その足元からは土煙が上がっている。
「Σの攻撃を剣で受けたのか!?」「フラムベルグよ! 近距離用にもあんなの持ってるの!?」「パイロット、凄い」
WG―Σの三人は、それぞれ驚きの声を漏らした。
「魔具とはいえ並みの腕じゃ無いわね。あの重量差を……」
杏香が言った。黒いリーゼは魔力を纏った武器防具『魔具』の中でも高位の部類である『フラムベルグ』を装備していて、パイロットの腕も立つようだ。今の動きを見ると、むしろ近距離戦の方が得意ともいえるだろう。あんな機体で接近戦をしかけられたら、普通の機体ならばひとたまりもなかった。 黒いリーゼは水色のバーニアを吹かし、赤いマントをはためかせながら、再度、WG―Σに急接近した。
「こいつっ!」
ブレイズもWG―Σを前進させ、再び斬り付けた。が、その剣は、黒いリーゼの一寸横をすり抜け、地面へと振り下ろされた。
「なっ!?」「何やってんの、下がって!」「やってる!」
ブレイズと杏香の声が、交互に響く。ブレイズは急いでWG―Σを飛び退かせたが、黒いリーゼの持つフラムベルグの切っ先は、WG―Σの左肩部のすぐ側まで来ていた。
「胴体のコントロールを!」
杏香は黒い機体に近寄られたら、WG―Σの左手に持つシールドで攻撃を防ごうと考えていたが、フラムベルグは既に、シールドの内側へと入り込んでいる。今からでは遅い。 杏香は強引に胴体のコントロールを自分へ移すと、急いで胴体を右向きに、思いきり回転させた。
――ガキッ!
金属同士がぶつかり合い、強烈な音が響く。WG―Σの胴体はさらに回転し、間一髪のところで、WG―Σの左腕部が、黒いリーゼの右腕部を弾き返したのだ。 WG―Σの胴体は、勢い余ってさらに回転した。およそ二回転半だろうか。
「おい、乱暴だな、杏香!」「目が回るー……」「仕方ないでしょ、加減してる余裕なんてなかった!」
三人がWG―Σの体勢を立て直している間に、黒い機体が素早く後ろへと跳躍しつつ、魔力砲を放つ。
「くっ……!」
杏香は左腕部を動かし、シールドでそれをガードした。
「あの機体、逃げる」
黒いリーゼが、今度は急速にWG―Σから離れていることを、カノンがレーダーから察知し、二人に伝えた。
「させるかよ! ガドリングで!」
ブレイズは、黒いリーゼが反転する隙を狙ってガウスガドリングを打ち込もうと思った。が、その前にカノンが声を上げた。
「右から攻撃、来る」「え!?」
カノンの声で、杏香がカメラを見る。すると、炎を纏ったオーブがすぐそこまで来ていた。カノンはレーダーでなく、モニターも注視をしていて、モニター越しに、ひっそりと近づくオーブを発見したのだ。 しかし、気付くのが遅かった。砂煙やリーゼの影に身を隠しながら近づくオーブは発見しにくいし、レーダーとモニターを並行して見ていたので、さやかでさえ発見が遅れたのだ。オーブはそのままWG―Σに激突すると、爆炎を巻き上げ、粉々に砕け散った。
「うぐああっ!」「うわあっ!」「……!」
三人が思わず声を上げる。決して少なくない衝撃が、コックピットを走った。
「ぐ……黒い機体は!?」「もう遠くに行っちゃったわ! それよりもこいつらを何とかしないと!」「……ちっ、仕方ねえか!」
さすがのブレイズも、WG―Σを囲む大量のゼゲを見れば、そちらを優先せざるを得ない。 三人はひとまず、周りのゼゲを蹴散らすことに専念することにした。
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