ハーフエルフの少年

リンネ

第37章 暴走

「あー?くたばったか?」

「......」

無言で立ち上がり、そのまま前に出た。

「なんだ、まだやんのか?」

「ダークネス・スペース」

船全体を闇が包み込んだ。

「なっ!?なんも見えねぇ!...グハッ!」

「なんだ、見えなくなれば弱いんだね」

海賊の船長さんの脇腹をボクの剣が貫いている。

「人間って本当に単純だよね。汚いしさ」

「小僧...エルフ...いや...耳が尖ってねぇ...ハーフエルフか...なんだ...その目の色は...」

「おじさんが知る必要ないよ。もっとも、知ったところで、死人に口無しだし意味ないね」

「ま...まて...」

「さようなら」

刺してた剣を抜き、今度は心臓を貫いた。
返り血がボクの身体に付着していく。

「汚いな...」

そして闇は晴れ、ボクは残党の方へと近づいて行く。

「お頭が...やられた!」

「く、くるな!」

「へー敵討ちとかしないんだ。
たかが子供のボクに怯えるって、人間って腰抜けばかりだね?」

「な、なんだと!?」

ひとりが頭に血が上ったのか突っ込んで来た。

「うおおおお!」

ズバッ!
と、肉が裂ける嫌な音が鳴り、同時にベチャっと血が床に大量に落ちる音が響く。

「か、はっ...」

「今の何?全然お話にならないよ。
本当に海賊やってたんですか?」

「ひぃ!?」

「レナートのやつどうしちゃったんだ!?」

「わかんにゃい!でも目の色が変わってるにゃ!」

「で、次は誰?」

「に、にげろぉ!」

海賊達は一目散に海賊船へと乗り込み、船を出した。
逃げ足だけは早い。

「逃がすわけないじゃん。
無光となる最果ての空間へ汝らを誘い、永遠の安息へ導け。ブラックホール」

海賊船の上空わずか3メートルに巨大な闇の空間が浮かび、なにもかも吸い込んで行く。

「やっと出られた〜!ってあれ?」

リーフが船内から出てきた。

「リーフ!縄といてくれ!」

「りっちゃん頼むにゃ!」

「何?この状況...それに、え?なんでみんな縛られてんの?」

「いいから早く!」

「は、はい!」

リーフが慌てて駆け寄り、縄を魔法で解いていく。
ボクはというと、魔法を維持するのに集中している。

「ダメだ吸い込まれる!」

「もう無理だ!」

船自体もどんどんバラバラになって行く。
ボクらが乗ってる船は幸い、ブラックホールから離れてるので影響は無い。

「レナート!もういい!充分だ!」

「レナちゃん!」

「レナート?」

周りなど気にしていられない。
ボクはあいつらが憎い。

「やめろ!」

あぁもううるさいな!

「なっ!?」

ボクは魔法を中断して剣を構えた。

「ボクの邪魔をするな」

「レナート...」

「え?何?何が起こってるの?」

リーフはキョロキョロしながら状況を把握しようとしてるけど、だいたい出てくるの遅いんだよ。

「弟が間違った道を行くなら、兄はそれを正さないとな」

兄ちゃんは近くにあった海賊の剣を拾い、距離をとって構える。

「兄ちゃん、ボクに勝ったことないよね?」

「それでも目を覚まさせてやる」

兄ちゃんは姿勢を低くした。
一気に加速して突きを見舞う構えだ。

「行くぞ...!」

カキン!

金属音が鳴り響き、剣が真上に飛んで行く。
そして相手の顔元へ剣先を向ける。
剣が飛ばされたのは兄ちゃんの方ね。

「なっ...」

「終わり?」

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