ハーフエルフの少年

リンネ

第1章 旅立ち〜冒険者登録〜

ボクはレナート。
ハーフエルフで歳は今日で10歳になります。
ボクの親は5年前に亡くなりました。
今日まで生きてこられたのは爺ちゃんと婆ちゃんのお陰です。
爺ちゃんはエルフで魔法に長けていて、弓の腕も抜群です。
婆ちゃんは人間で剣術の達人でした。
ただ2人の間には子供が生まれなくて、5年前にボクの両親が亡くなった時、2人に引き取られました。
そして今日、10歳になったボクは憧れだった冒険者になる為に旅に出るところです。

「レナート、やっぱり行っちゃうのかい?」

爺ちゃんと婆ちゃんに今見送られるところです。
本当はめちゃくちゃ反対されたけど、あるテストに合格したらOKをもらいました。

「うん、夢だったからね」

そう、ボクの夢だった。
5年前からずっと冒険者に憧れてた。

「身体には気をつけるんだよ?それからこれはワシと婆さんから今日の誕生日プレゼントじゃ」

爺ちゃんに渡されたのは杖だ。
魔力を通して増幅させる事ができる。

「それは仕込み杖になってるから剣としても使える、まさに。レナートにはぴったり」

杖の先を引っ張ってみたらなんと、ミスリルでできた剣が出てきた。
なるほど、ミスリル製だから魔力も通しやすいから杖にしてても使える訳か。すごい。

「ありがとう!爺ちゃん。婆ちゃん」

ボクは杖を大事に背中にセットして振り向いた。

「じゃ、行ってきます!」

5年間お世話になった家を背に、ボクは近くの冒険者ギルドがある街へと旅立った。




「ワクワク〜早く付かないかな〜!
あーそうだ。
冒険者たる者、魔物討伐が主な仕事だし、道中に何か討伐して行こう!」

しばらく歩いてたらなんかおっきい魔物さんが出てきた。

「って事でちょっと大きいけどとりあえず戦って、ダメなら転移魔法で逃げよっと」

ボクは魔法得意だからね。
剣術も得意だけど魔法の方が断然得意!
そこはエルフの血が濃いのかもしれない。

「よし、アイシクルレイン!」

氷の槍を上から雨のように降り注ぐ魔法だ。
おっと避けられた。
でもその避け方隙だらけだね。

「てりゃあぁ!」

斜め下から首を一刀両断!
なんだ大きいだけで大したことないなかった。
とりあえず全身マジックボックスに入れてっと。

「じゃ〜改めて出発!」




って事で商業の町、カナンに着きました。
人がいっぱいだ。

「冒険者ギルドは〜あそこかな?」

他の建物より少し大きく目立った建物が目に入った。
お、看板にも冒険者ギルドって書いてある。
中へ入ってみると、酒場と一体型になってて昼からお酒飲んでる人もいる。

「すみませ〜ん」

ボクは受付のお姉さんに話しかけた。

「あら?どうしたのかな?」

「冒険者登録したいんですけど〜」

「えっと、歳はいくつかな?」

あーそっか、ボクハーフエルフだから年齢と見た目で差が出てるのか。
普通の人間の10歳より小さいから幼く見えるんだ。

「今日で10歳!」

「あらそうなの?でもねボク、嘘はダメよ」

困ったなぁ信じてもらえない。

「君お家は?」

あーどうしよう証明できる物なんて持ってないし。

「どうしたんだいジェシーちゃん」

後ろから冒険者かな?
話に入ってきた。

「この子が冒険者登録したいと言うのでちょっと困ってたんですよ。
どう見ても10歳とは思えなくて」

やっぱり10歳に見えなかったんだ。
こういう時ハーフって嫌になるね。

「ほぅ、将来有望な冒険者志望か!
いいねぇ、なんならあの水晶で本当に10歳か見れば1発じゃねぇか!」

水晶?占い師が使う奴かな?

「わかりました、ではこちらの水晶に手を触れてください」

「あ、はい」

ボクは徐ろに手を触れてみる。
すると水晶は光り出して中に文字が刻まれた。

名前  レナート
種族  ハーフエルフ
年齢  10歳
犯罪の経歴 無し

「ほぅ坊主ハーフエルフなのか!
そりゃ見た目が幼いわけだ! 人は見かけによらねぇってこったな!」

「大変失礼致しました!」

あわわ頭下げすぎですよ受付のお姉さん。

「気にしないで、ボクいつもそうだから!」

まだ頭下げてる...どうしよう。

「では早速冒険者登録の手続きを行います」

復活早い!
あーこれがいわゆる営業のプロなんだ。
「レナートさんは10歳という事である試験を行ってもらいます」

「試験?」

「なんならその試験俺が見てやるよ!」

お、本物の冒険者さんが直々に見てくれるんだ。
「しかし、ガイヤさんではこの子が危険だと思うのですが」

え?どういう事?

「なぁにちゃんと手加減するって。
それに冒険者志願してんだ。こんなんでへこたれちゃやってけねぇぜ」

わぁボクに冒険者たる者は何か!
それを教えてくれるんだ!やったー!

「よろしくお願いします!」

「わかりました、では中庭の方へ」

あーそういえば道中狩った魔物売れないかな?
聞いてみよう。

「あの、ここにくる途中魔物さん倒してきたんですけど、素材とか売るにはどうしたらいいですか?」

「それでしたら私どもが解体して、素材となった分を解体料を差し引いた分お渡しする形となりますが、魔物を狩られたんですか?」

あーそっか、マジックボックスに入れてるから手ぶらに見えるんだ。

「ちょっと大きいのでこのマジックボックスに入れてあるんです」

ボクは腰に下げているマジックボックスを見せる。

「ほーその歳でもう魔物も狩れるのか!
大したもんだ!こりゃ試験も楽しみだな!」

どうせ試験するならその間に解体しててもらった方がいいもんね!
うん、いい考え。


って事で試験前に解体場にやってきた。
ボクはマジックボックスから倒した魔物の首と胴体を床に出した。

「なっ!?」

あれ?みなさん固まってるよ?

「どうしたんですか?みなさん」

「これ坊主がやったのか?」

「うん、そうですけど...」

もしかして狩っちゃダメな魔物だった?
あーどうしよう!これで試験どころか冒険者登録すらできなくなっちゃう?

「もしかして狩っちゃいけない魔物とかあります? あのそれならごめんなさい!
ボク知らなくてそれで...」

「合格!ジェシーちゃん俺は合格でいいから用事思い出したあああ!」

「へ?合格?」

えーいったいどうなってんの?

「えっとですね、この魔物なんですが、ランクAのフォレストベアと言いまして、滅多に遭遇しない魔物でそれもかなり凶暴な魔物なんですよ」

え?そうなの?
なんか普通に狩れましたよ?

「ともあれ、これで冒険者登録が可能になりましたので、こちらで手続きを行います」
やったー!冒険者になれる!




って事で再び受付に来ました。

「では冒険者の本登録を行いますので、こちらにサインをお願いします。
代筆も可能ですので必要とあれば申してください。」

「あの〜無理してその喋り方しなくてもいいですよ?ボク子供だし」

「じゃあ普通に喋らせてもらうわね」

切り替え早い!
あ、えっとサインサイン。

「レナートっと...これでいいんですか?」

「うん、OKよ。じゃあこれがレナート君の冒険者カードね。失くしたりしたら再発行にお金かかるから大事に保管するんだよ?
あとクエストの受注と報告の際はこのカードも一緒に提出する事!いいかな?」

「はい!」

こうしてボクは念願の冒険者になる事が出来た。
よーし頑張って働くぞー!

「それじゃ冒険者の説明をするわね。
冒険者にはそれぞれランクがあって、下からF E D C B A Sの順になってるの。
クエストも同じくランク分けされていて、自分のランクの1つ上までしか受注できないから注意してね」

ふむふむ、ランクFがいきなりランクAのクエストとかはできないんだ。
地道にコツコツと頑張ろう!

「クエストは向こうにあるクエストボードから自分にあったランクの紙を剥がして受付まで持って来てね。あとたまに大規模なクエストも出てくる時があるから、その時はまた詳しく説明するわね」

大規模かーたまに強い魔物が町の近くに来た時とか急いで討伐しないといけない時にやるって爺ちゃん言ってたな〜。

「以上で説明を終わります。何か質問あるかしら?」

「ランク上げるにはどうしたらいいの?」

「基本的にクエストをこなしていけばBまでは上がる仕組みになってるの。
ただしA以上は実力の世界だから並大抵じゃなれないわよ。
まぁレナート君ならAは確実にいけると思うけどね」

えーボクまだなったばかりだから無理無理。

「わかりました!ありがとうございます!」

よーし頑張ってランク上げるぞー!

「それじゃ、頑張ってね!期待してるわよ〜」

そしてボクは冒険者となりました!
明日から頑張ろう!

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