いつだって僕の感情は欠落している

零猫

5

俺が自分の異変に気付いたのは、入学してから3ヶ月後。7月中旬で、夜になると蛙が騒がしくなるような、そんな季節のある日。

朝、学校に行くと、暗い担任がいつにも増して暗い顔をして入ってきた。
そろそろあの頭にキノコでも生えんじゃねーの。とか想いながら見ていたら、担任は告げた。

このクラスの奴が、交通事故で亡くなった。と。

それを聞いたクラスメイトは泣いたり、暗い顔をしたり、様々だった。
そいつとは毎日話してるような割と仲のいい方だった。
クラス全体が暗い雰囲気に包まれている中、俺は思っていた。

「なんでこいつら、こんなに悲しんでんの?」って。

今思えばこの時から自分の感情は狂っていたのかもしれないが、その時の俺にとって、そう思うのは普通だったのだ。

【友達が1人減った】【人が1人死んだだけ】

それが俺の率直な感想だった。

俺には分からなかった。人が死ぬと悲しくなる。その死ぬ=悲しいの方程式を理解出来なかった。

人が死ぬのは絶対だ。命には限りがあって、俺だって、このクラスの奴らだって、全員いつかは死ぬんだ。
この世に生まれた時から、俺たちは死への道を歩くしかない。

その死んだクラスメイトは、ただ死ぬのが早かっただけ。いずれ死ぬんだ。皆。当たり前の事を何故悲しむのか。

そう思って、別に感情が無いとは思っていなかった。ただそいつに思い入れが無いだけだと。

でも、俺に哀しみの感情が無いと知ったのはそれから1年後。

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