future~未来へつなぐ奇跡の歌〜

キロ

13

甲高い金属音。
どこか鈍さのある金属音。
もう互いの剣の耐久が無いことは明白だ。
でもまだ……
耐えてくれ。ミハルを守るために。
「リン!!」
相手の剣が壊れる音。
しかしそれなりの衝撃がわたしの剣にも入ってくる。
「くっそ。耐えなかったか…。まぁいい。無くても殺せる。」
そう言い向かってくるナギサ。
手元の剣はもう悲鳴をあげている。
ましては後ろにはミハルが………
「リン。さがレ。」
その声に従い、下がる。
ナギサの体にアム騎士団長の剣が刺さる。
が…おかしい。
ナギサが高笑いしている。
アム騎士団長の表情が強ばった。
「おまエ……」
「言っただろ?オレは殺人機械だって。」
一歩後ろに下がるアム騎士団長。
腹部に刺された跡があり、出血している。
「剣なんて所詮弱い人間が作り出した、おもちゃに過ぎない。オレが本気出せばお前らなんてすぐに殺せる。」
つまりは…今は生かしておいてやってるんだ。俺を楽しませろ……と?
「っざけんなよ。」
あいつだけは殺さないと。
「リン……。」
心配そうに見るミハル。

落ち着こう。
あいつの口車に乗せられたら終わりだ。
「大丈夫。ミハルは必ず守る。そう決めた。だから…安心して。」
ミハルだけでも守らないと…。

考えよう。
レイ副団長ならきっと未来視を使い次の行動を予測できる。
が…私にはそんな能力はない。

アム騎士団長とツバサ副団長は悪魔であるから本気を出せば普通にあいつは倒せる。
が…アム騎士団長は負傷し、しばらく行動は出来ない。
ツバサ副団長はタイキとともにいるため…この場は2人の力を借りることは出来ない。

タイキなら…ミツルなら…きっと力で押し切れる。
が…もしミツルの体力がきれたら…タイキに戻った瞬間殺られる可能性がある。

一体どうしたら……

『知ってるか?魔女の噂。魔女はどうやら影に隠れて現れるらしい。本当だぞ!!いつの間にかにそこにいたんだ!って言う人が多いんだ!!』

昔聞いた私についての噂。
確かに昔から影は薄かった。
それを利用していたのは事実。
使えるか?出来るのか?今の私に…?
いいや。
やるんだ。やらないと。
「ミハル。アム騎士団長の元へ。」
静かに頷きアム騎士団長の元へと行くミハル。
あいつがOriginal numberなら…きっと。
あの記述が正しければ……
影に隠れる。
月の明かりも雲に隠れ光が何もないこの現状。
魔女には…いいや、私には都合のいい状況だ。
「どこにいるんだ?オレの目を欺こうってか?忘れたのか!?オレは殺人機械だ。こんな暗闇の中で隠れきれるとでも。」
「ああ。隠れきれるさ。なんなら…お前も倒せる。」
ナギサの近くで声を発する。
流石に驚いたのだろう。こちらの方を見た時の表情に焦りが見えた。
Original numberの弱点。
限りなく人間に近い状態で作った故…暗闇時の戦闘は…
不向き。
「やっと見つけた。お前の弱点。」
足音を立てず、ナギサの周りを歩き始める。
「目で見える範囲は攻撃可能範囲。でもそれ以外はプログラム上攻撃可能範囲外。それがOriginal number ナギサの弱点。」
「オレのことを番号で呼ぶな!!」
先程まで立っていた所に剣が振り下ろされる。
コツン…コツン…
足音を鳴らしたり…足音を消したり…
周りを注意深く見るナギサの目には恐怖が映っていた。
「魔の道化。お前は道を誤った。博士はお前にそんなことを頼んではないはず。」
「ダマレ!!オマエニナニガワカル!?」
機械音。しかしルージュさんとは違う音。
なるほど。こいつはもう……。
「もうやめよう。ライオット。もう…動けないだろ?」
鈍い機械音。
あらゆるところから聞こえる悲鳴。
それがナギサの内部から聞こえてくることに気づくのにさほど時間はかからなかった。
「ライオット。これ以上戦っても無駄だ。お前は負ける。もう、やめよう。」
「ふざけるなよ…?オレはまだ立っている!人間を殺すまではシネナイ。」
いきなり剣が振り下ろされる。
これは…死ぬ……
そう思った。
しかし痛みはない。なんで?
その理由は…耳に届いたミハルの声だった。
「ミハ……ル??」

【永遠の願いこの元へ
未来の時を刻んでいく
あるべき姿この元へ
過去を背負い進みゆく
時の声この元へ
私は現在(いま)を生きてゆく】

綺麗な歌声だった。
まるで…今までの傷が癒えるような……
「まさか!!」
ナギサを見る。
頭を抱え込んで苦しんでいる。
「ミハル…お前!!」
「私に…これを……教え…たの…は……貴方です…。ナギサ=ライオット。」
息も整わないミハルを静かに支えるアム騎士団長。
「ナギサ=ライオット。もう終わりです…もうこれ以上の悪事は…許しません。」
静かに笑うナギサ。その表情はどこか悲しげだった。
「……『アリシア』。それで死んじまうのか……。まぁ…そういう…運命…か。ミラの時に受けた呪いはきっと…これだったか…。マスター……すみませんでした。オレ…完璧な人間になれ…な…か…っ………タ。」
その場に力を失い崩れ去るナギサ。

《プログラム上にエラー発生。
システムをシャットダウンします。》

無機質な声だけが広場に響いていた。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品