future~未来へつなぐ奇跡の歌〜

キロ

12

ミハルside

街中で倒れているレイ元副団長を見つけた。
もう意識は朦朧としていて、声をかけても返事が返ってこない。
少し離れたところにカエデが倒れていた。
どこにも外傷はない。
でもその息は止まっていた。
なにがあったかはわからない。
でも嫌な予感はした。
私の大切な人がいなくなってしまうのでは?
そんな嫌な予感が……。
「…!ミハ!!」
遠くから声が聞こえる。
その声は昔からよく聞いていた双子の弟の声。
「タイキ!!」
走ってタイキの元へと向かう。
その隣にはルージュさんと……見覚えのない人がいた。
でもどこかであったような……
「ミハ、無事?大丈夫?怪我は?」
相変わらず過保護だなぁ…。
「大丈夫!ほら元気だし!怪我もしてないよ。」
「よかった…ミハに何かあったら……僕…」
今すぐにでも泣き出しそうなタイキを慰める。
「姫。申し訳ございません。私……」
「ルージュさん。なにも言わなくても大丈夫です。すみません。私のせいで。」
彼女の頬についている血を拭う。
ルージュさんのことだ。
きっと……私のために命令に歯向かったんだ。
「ルージュさん……大丈夫です。貴女は貴女です。それは変わりません。」
静かに頷く彼女。
「ミハル…。ミハル=スノウティア。大きくなったな。」
そういう黒髪の男性。
「すみません。名は……」
「覚えてない…か。まぁそうだよね。あの時はまだ幼かったから。改めて自己紹介を…。僕はクロウ=アストニア。またの名を…ツバサ=クレイドル。」
クロウ?ツバサ??
1つ心当たりがある。
確か…昔お母様が…話してくれた…かっこいい騎士の名前。
お母様の幼馴染の2人…
名は……メアとクロウ……
「クロウ…さん。クロウさん…生きていらっしゃったんですね…」
目には涙が溜まって視界が良くない。
そんな私の頭を撫でるクロウさん。
「ミハル。よく頑張ったな。ミラも褒めてくれるさ。」
「クロウさん……」
その場で泣きじゃくる私をただただクロウさんは慰めてくれた。

「ライオットが……?」
「あぁ。そうだ。」
お母様の死に関係があったらしいナギサの話を聞いた。
『アリシア』
お母様はなかなか教えてはくれなかった。
その理由が今ようやくわかった。
生命が脅かされる。
それを分かっていて私には教えずお母様1人で背負ったのだ。
「お母様……どうして…」
「お前を守りたかったんだ。それなのに……あいつが…お前にアリシアを教えた。」
そう。
私にアリシアを教えたのはナギサ=ライオットだった。
お母様が亡くなって…しばらくしてから教えてくれたのだ。
ようやくお母様に追いついた…そう思ったのに…
結局はナギサ=ライオットの手のひらで踊らされていただけなのだ。
許せない。
お母様を死なせ、メアさんとクロウさんに酷いことをして…ここに居座っていることに。
「ミハ…?」
「タイキ。ナギサはどこにいますか?」
冷たい声。怒りを抑えようと必死なのだ。
「…広場…です。今、アム騎士団長と姉さんがナギサと戦っております。」
「そうですか。」
1つ息をはきタイキ達に命令する。
後で怒られることを覚悟して。
「タイキ=ウィスト。命令です。2人とともに皆の安全の確保を。城は今は危険です。城内から出るよう皆を誘導しなさい。クロウ=アストニア。ルージュ=アンジェリア。タイキとともに皆の安全を。」
「…ミ……姫はどうなさるおつもりで?」
震える声で聞くタイキに力強く答える。
3人は黙って頷いた。
「リン達を助けに行きます。ナギサに事の真偽を問います。」

広場に着く。
リンの姿が見える。
自然とリンを呼ぶ声が出てしまった。
「リン!!!!!!」
その声に反応するナギサ。
その目は確実に私を殺そうとする目だった。
ナギサの剣が振り下ろされるのとリンが私の手を引くのはほぼ同じだった。
私を抱きしめるリンの声はいつも以上に焦っていた。
「なんでだよ…なんで……逃げてくれよ。ここは危ないんだぞ?!ミハル!!」
そんな彼女に笑ってみせる。
大丈夫だと…そういう様に。
「リン。ごめんね。でも……どうしても……」
「……わかってる。ミハルのことだ…。真偽を問うために来たんだろ?だとしても…無茶するなよ…」
さすがリンだ。言わずとも分かってくれる。
「ミハルは私が守る。だから……私から離れないでください。」
一瞬、昔私を守ってくれた騎士を思い出した。
危ない目にあった時に私を助けてくれた騎士。
『姫は私が守ります。だからどうか私から離れないでいてください。』
その騎士とリンが重なった…ような気がした。
私は静かに頷く。
私を背後に隠し剣を構えるリン。
「来いよ。」
その短い言葉が再び止まっていた時間を動かした。

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