future~未来へつなぐ奇跡の歌〜

キロ

9

レイside

あれからどのくらい時間が経った?
もう分からないぐらいに立っている。
「しぶといな…」
そう口に出すカエデを睨む。
「騎士がそんなことを洩らすな!」
さっきより力がこもる。

「騎士なんだったら戦っている相手に敬意を払え!!」
メアに教えて貰った優しさ。

「騎士なら仲間のために知性を働かせて皆で生きて帰ろうとしろ!」
クロウに教えて貰った強さ。

それを後に託したつもりだった…。
でも…託されてなかった…。
「もう…白騎士も終わりか…」
悲しいな…辛いな…。
ごめんな…メア。クロウ。
俺…お前らみたいには…なれなかったみたいだ…

「もう…お前らしか…まともなやつはいないみたいだな…」
そう思い出す姉弟の姿。

こいつらのためだ…命は捧げてやるよ…
「レイ=ルミエスタ!死ね!」
剣を振りかぶるカエデ。
そいつを睨みつける。
すると彼は振り下ろす前に止まる。
「!??」
「てめぇ…あんまり俺をなめんなよ…」
『未来視』は寿命を縮めるもの。
確かに刻一刻と俺の命は縮んでいる。
だがそれだけではないのだ。
何年も付き合ってくるとこいつの使い方ぐらい分かってくる。
例えば…そう。人の未来を変えることさえ簡単なのだ。
「なにを…」
「なにって…お前の未来を見てその未来だけを殺したまでだ。安心しろ。まだ死なない。まだ……な?」
その意味を教える必要はなかった。
目の前の敵は恐怖に顔を歪めた。
「なにをそんなに怖がっている?自分で望んだんだろ?俺と戦うこと。」
カエデが剣を落とす。
「相手を間違えたな。ライオット。俺はアイツらみたいに甘くはないからな。」
そう告げ指をならす。
背後から何かが崩れ落ちる音が聞こえる。
「て…てめぇ…だ…けは……こ…ろ…」
「殺せるもんなら殺してみろよ。あの世でな。」
命の糸が切れたかのように倒れるカエデ。その息は止まっていた。
終わった。
そう思った瞬間だった。
「っ!…っ…はぁ…はぁ」
近くの木にもたれかかる。
あぁ。これが死か…
息が整わない。
視界がゆれる。
もう一度立ち上がる力もない。
「…はは…そっか…これが俺の最後か…」
まだ心残りがあるのに…な……
まだ……あいつらが描く未来を……見ていたいのに…。
あの姫さんに謝ってないことがあるのに……。
まだ……死にたくな…い……。
遠のく意識の中。
聞き覚えのある声が俺の名を呼んだ…そんな気がした。

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