異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~
交差する思い(3)
「シャルロット様?」
部屋の前に到着すると扉の前に立っていた兵士の方が私に語り掛けてくる。
「何度もごめんなさい。アリエルと話をしたいのだけど――」
私の言葉に困惑した表情を浮かべる兵士さん達。
短い時間で何度も伯爵家に牙を向いた人と会話させるのは好ましくないと思っているのかも知れない。
「咎人のアリエルからは、伯爵家令嬢と話すことは無いと言われていますが……」
「そう。だけど、私には会って話すことがあるから」
拒絶の意志を示されても私は下がることはしない。
自分の思いを相手に伝えない限り、相手の本当の気持ちを知る術なんて無いから。
私は、異世界に来てからそれをお母様に教えてもらった。
ううん。お母様だけでなく皆に教えてもらった。
だから、私は引き下がらない。
「シャルロット様の好きなようにさせてください。ご当主様の意向でもあります」
「セバスさん?」
カルロ達が閉じ込められている隣の部屋――、アリエルと対話した客室から出てきたセバスさんは、兵士さん達に静かに告げると私に近寄ってくると「シャルロット様、アリエルの事をよろしくお願いします」と、告げてきた。
「わかりました」
「アリエルは客室で待っています」
セバスさんの言葉に私は頷く。
その瞳は、どこか期待を含んでいるように見える。
彼に後押しされるように室内に入るとソファーにアリエルさんが座っていて、すぐに私へ視線を向けてきた。
「…………シャルロット様ですか。私は、これ以上何も話すことはないと申し上げたつもりですが?」
「そう?」
私は首を傾げながら少し挑発的に呟いた。
その仕草が気にいらなかったのかアリエルさんは表情を消す。
そんな彼女から視線を逸らさずに、対面のソファーに腰を下ろす。
私とアリエルの間には木で作られたテーブルがあるだけ。
「何のつもりで来たのですか?」
「何のつもりって、アリエルと話すために来たのよ?」
彼女は、一瞬笑みを浮かべると「ご冗談を」と、私に聞こえるかどうかの小さな呟きを見せる。
「冗談じゃないわ。私は、アリエルの本心を知りたいから来たの」
「それはもうお伝えしたはずですが?」
アリエルの言葉に私は肩を竦めながらいくつもの疑問点を頭の中で精査していくけれど、やっぱり私には論理的に相手を突き詰めることなんてできないと断念する。
――だから。
「アリエル。私ね、ずっと黙っていたことがあるの」
「黙っていたこと?」
そこで初めてアリエルが私の言葉に感心を持ってくれた。
それと同時に私は、アリエルの瞳が警戒の色を宿したことも把握する。
それは私が、異世界に転生してきてからずっと持っていたから分かったからかも知れない。
「アリエルは転生って知っている?」
「転生……、輪廻転生ですか? それは大地母神メルルの教義にあった物だと思って――。ま、まさか……。――で、でも……」
「理解してもらえた?」
彼女は無言のまま頭を左右に振る。
どうやら私の言っている事が本当の事だとは信じてもらえそうにない。
最初から簡単に信じてもらえたら楽だったけれど、それなら順序立てて説明するしか方法が……。
「シャルロット様。ご当主様に、私を説得するにはどうすればいいのか? と聞かれたのですね? それとも、奥様に相談致しましたか?」
「――え?」
「私は存じております。転生者というのは知性に富んだ人間だということを。普段から、拙い行動や思慮をしておられた貴女が転生者だと言うのは些か無理があるのではないですか?」
「…………違うから! 本当に転生者だから!」
バン! とテーブルを両手で叩きながら私は自分が転生者だと言う事を力説するけど信じてもらえない。
子供扱いされている!
「仕方ありません。100歩譲って貴女が転生者だとしたら、私に何の用なのですか? 転生者なら尚更、私のような裏切り者を処断しない理由が分からないとは言えませんが?」
「ふふっ。残念ね! アリエルの処遇は私に一任されているのよ!」
「――!」
そこで初めてアリエルが信じられないと言った表情で「そ、それは当主様が?」と呟いたので「国王陛下の認可よ!」と、言葉を叩きつけた。
「国王陛下……、フレベルト国王陛下様ですか?」
「そうよ」
「そういうことですか……。転生者というのは本当なのですね」
部屋の前に到着すると扉の前に立っていた兵士の方が私に語り掛けてくる。
「何度もごめんなさい。アリエルと話をしたいのだけど――」
私の言葉に困惑した表情を浮かべる兵士さん達。
短い時間で何度も伯爵家に牙を向いた人と会話させるのは好ましくないと思っているのかも知れない。
「咎人のアリエルからは、伯爵家令嬢と話すことは無いと言われていますが……」
「そう。だけど、私には会って話すことがあるから」
拒絶の意志を示されても私は下がることはしない。
自分の思いを相手に伝えない限り、相手の本当の気持ちを知る術なんて無いから。
私は、異世界に来てからそれをお母様に教えてもらった。
ううん。お母様だけでなく皆に教えてもらった。
だから、私は引き下がらない。
「シャルロット様の好きなようにさせてください。ご当主様の意向でもあります」
「セバスさん?」
カルロ達が閉じ込められている隣の部屋――、アリエルと対話した客室から出てきたセバスさんは、兵士さん達に静かに告げると私に近寄ってくると「シャルロット様、アリエルの事をよろしくお願いします」と、告げてきた。
「わかりました」
「アリエルは客室で待っています」
セバスさんの言葉に私は頷く。
その瞳は、どこか期待を含んでいるように見える。
彼に後押しされるように室内に入るとソファーにアリエルさんが座っていて、すぐに私へ視線を向けてきた。
「…………シャルロット様ですか。私は、これ以上何も話すことはないと申し上げたつもりですが?」
「そう?」
私は首を傾げながら少し挑発的に呟いた。
その仕草が気にいらなかったのかアリエルさんは表情を消す。
そんな彼女から視線を逸らさずに、対面のソファーに腰を下ろす。
私とアリエルの間には木で作られたテーブルがあるだけ。
「何のつもりで来たのですか?」
「何のつもりって、アリエルと話すために来たのよ?」
彼女は、一瞬笑みを浮かべると「ご冗談を」と、私に聞こえるかどうかの小さな呟きを見せる。
「冗談じゃないわ。私は、アリエルの本心を知りたいから来たの」
「それはもうお伝えしたはずですが?」
アリエルの言葉に私は肩を竦めながらいくつもの疑問点を頭の中で精査していくけれど、やっぱり私には論理的に相手を突き詰めることなんてできないと断念する。
――だから。
「アリエル。私ね、ずっと黙っていたことがあるの」
「黙っていたこと?」
そこで初めてアリエルが私の言葉に感心を持ってくれた。
それと同時に私は、アリエルの瞳が警戒の色を宿したことも把握する。
それは私が、異世界に転生してきてからずっと持っていたから分かったからかも知れない。
「アリエルは転生って知っている?」
「転生……、輪廻転生ですか? それは大地母神メルルの教義にあった物だと思って――。ま、まさか……。――で、でも……」
「理解してもらえた?」
彼女は無言のまま頭を左右に振る。
どうやら私の言っている事が本当の事だとは信じてもらえそうにない。
最初から簡単に信じてもらえたら楽だったけれど、それなら順序立てて説明するしか方法が……。
「シャルロット様。ご当主様に、私を説得するにはどうすればいいのか? と聞かれたのですね? それとも、奥様に相談致しましたか?」
「――え?」
「私は存じております。転生者というのは知性に富んだ人間だということを。普段から、拙い行動や思慮をしておられた貴女が転生者だと言うのは些か無理があるのではないですか?」
「…………違うから! 本当に転生者だから!」
バン! とテーブルを両手で叩きながら私は自分が転生者だと言う事を力説するけど信じてもらえない。
子供扱いされている!
「仕方ありません。100歩譲って貴女が転生者だとしたら、私に何の用なのですか? 転生者なら尚更、私のような裏切り者を処断しない理由が分からないとは言えませんが?」
「ふふっ。残念ね! アリエルの処遇は私に一任されているのよ!」
「――!」
そこで初めてアリエルが信じられないと言った表情で「そ、それは当主様が?」と呟いたので「国王陛下の認可よ!」と、言葉を叩きつけた。
「国王陛下……、フレベルト国王陛下様ですか?」
「そうよ」
「そういうことですか……。転生者というのは本当なのですね」
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