異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~
生活魔法(7)
「えーと……、魔法入門書と言えば……」
魔法入門書をペラペラと捲っていく。
「な、ない!?」
何度も目を通したけど目次が存在していない。
中途半端な時間に眠ってしまって目が冴えてしまったから、目次から必要な項目だけピックアップして勉強しようと思っていたのに……。
もしかしたら、この世界では目次というのが無いのかもしれない。
それだったら目次文化を伝えたら本が売れるようになるかも……。
「でも……、紙の価格とか知らないから本がどれだけ貴重なのかも分からないし……。そういえば、この魔法入門書って材質が紙ではないよね。もしかしたら紙の文化が無いのかも。そうなると、本の価格がすごく高そう! お母様が薬の代金の代わりに貰ったって言っていたけど……。実は結構、価値があるものだったりして……」
私はテーブルの上に置いて捲っている本を見ながらゴクリと唾を飲み込む。
そして脳裏に電流のごとく流れる!
この本は、売ったら幾らになるのかという思考が!
「いけない。お母様は、私を心配して渡してくれたのだから――」
そんな本を売るなんて良くない。
「とりあえず、1ページ目から目を通そうっと――。その前に部屋を明るくしないといけないよね? 目に悪いし……」
椅子に背中を預けながら私は光の玉が部屋の中を照らす事を想像する。
「光!」
力ある言葉を紡ぐと共に頭上に直径10センチくらいの光の玉が現れる。
光の玉を天井近くに浮かべると月明りだけで照らされていた室内は一気に明るくなった。
私は光の玉を維持しながら視線を魔法入門書に落とす。
「1ページ目には、魔法に関しての記述が書かれているのね」
一人、声を出しながら本の中を朗読していく。
魔法には大きく分けて3系統存在している。
――一つ目は生活魔法と呼ばれるもの。
薪に火をつけたり飲み水を確保したり洗濯物を乾かしたりと家庭的な魔法というイメージが強いらしい。
――二つ目は魔術と呼ばれている魔法。
主に攻撃魔法や防御魔法に特化した物であり魔物も扱うことが出来る。
魔術には系統が存在していて、それを属性と言う。
火は、攻撃に特化していて万物を焼き払う。
水は、治癒と防御と攻撃に使えるため攻守ともにバランスが取れている。
風は、移動や攻撃に使えるため水の次にバランスが良い。
地は、防御に特化しており攻撃手段は殆どない。
「なるほど……」
本を見ながら私は一人頷く。
そうすると、私の光の魔法は……。
「あったあった」
次のページに光の魔法について書かれていた。
光の魔法は、聖女や勇者のみが使える特別な魔法で神々の祝福を受けていないと使うことが出来ない。
「……ふむ」
もしかして光の魔法ってすごい?
さらに読み進めていく。
光の魔法が使えるというのは神々の祝福を受けていて世界で一人いるか居ないかです。
女性なら聖女、男性なら勇者として扱われ例外なく王家と婚姻を結ぶことになりますが、光の魔法が使える人物は100年に一人の割合なので、この本を読んでいる人は気にする必要はないでしょう。
「……ど、どうしよう。私、光の魔法使える……。それに……、王家って……。権力闘争に明け暮れるイメージしかないんだけど……」
絶対に胃が痛くことしか起きない気がする!
もしかしたら、お母様が私の身を守るために魔法を覚えなさいと言ったのも、そう言った原因があるのかも知れない。
私はテーブルの上の本を「パタン」と、閉じる。
「――と、とりあえず。お父様に、お願いして光の魔法は使えないってことにしてもらおう!」
私は辺境で刺繍したり薬を作って生計を立てている方がいい。
貴族の権力闘争の中で生活するなんて考えただけでも頭が痛くなる。
身を守る術は、王宮――、王族に嫁がないこと!
「まずは、領地の借金を返して普通に暮らす方法を考えましょう!」
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