異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~
領地が大変です(4)
ジャンさんに布地を何枚も見せてもらう。
「あの……」
「何だ?」
「セバスさんが購入しているのは、この布地ですか?」
「そうだが?」
手に持った生地を触りながら店の中を見渡す。
「あの、あれは――」
「布地にする前の糸だな」
壁の棚に並べられている糸は、私がいつも刺繍で使っている糸で思っていたよりも多くの染色された糸が並べられている。
「幾らくらいするのですか?」
「一巻き銅貨1枚と言ったところだな」
銅貨一枚……。
糸の量から見て私がセバスさんから渡されている布地を5枚は作れそうだけど。
時間があれば糸から布地を作った方が安く上がるのかも。
「そういえば、食事をしにきたんじゃないのか?」
「そうだったわね。シャルロットさん、行きましょう」
「あ、はい」
店内も一通り見て満足した私はコルネットさんと共に服飾店を出ると踏み固められた土の上をしばらく歩き一件の店に入ると、一人の栗色の髪の女性が近寄ってくる。
「あら? コルネットじゃないの?」
「ジェニー、ひさしぶりね」
「ええ、何年ぶりかしら? 10年ぶりくらい? それより、その子は、貴女の子なの? 男の子って手紙には書かれていたけど、どう見ても女の子にしか見えないのだけど? 書き間違いだったの?」
「間違いではないわ。息子は数日遅れで来ることになっているの」
「それで、その子は?」
「エルトール伯爵家の令嬢よ。町の案内を頼まれているの」
「その子が、エルトール伯爵家の?」
「ええ――、それよりも食事を用意してくれるかしら?」
「わかったわ。椅子に座って待っていてね」
コルネットさんと共に、窓近くに置かれている椅子に座りながら外を見る。
「お昼時なのに人通りが少ないですね」
「そうね……」
「そういえばコルネットさんは、先ほどの女性と知り合いみたいですけど?」
「ええ。ジェニーは、幼馴染だから」
「コルネットさんは、この町の出身なのですか?」
「違うわ。だけど……、この町に彼女が来ているということは――」
彼女の表情に翳りが見える。
もしかしたら人が集まっている町よりも、それ以外の集落の方がずっと厳しい状況に晒されているのかも知れない。
「あの……」
「食事が届いたみたいね」
テーブルの上に食事が並べられていく。
ずっと歩いていて喉が渇いていたこともありテーブルの上に置かれているコップに目がいってしまう。
木のコップを手に取り匂いを嗅いで見ると滓かにアルコールだというのが分かる。
「あの……、これは――」
「果実酒のようね」
「果実酒……」
「私、アルコールは飲んだことないのですけど……」
「そうなの?」
コルネットさんの言葉に私は頷く。
そんな私を見て、ジェニーさんはテーブルから離れると一つのカップを持って戻ってきた。
「シャルロットさんは、お酒が飲めないのよね?」
「はい」
答えると同時に彼女の指先に、小さな水の塊が生まれるとカップの中に落ちる。
「今のって魔法ですか?」
「魔法と言うよりも生活魔法だけどもね」
「生活魔法……?」
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コメント
クルクルさん/kurukuru san
子供に酒を飲ませるとか.....