キャリコの唄

ぶんたん。

姫巫女

若草の風が吹き抜けて
七色の雫が煌めけば
鈴の音しゃらしゃら響かせて
軽やかに君がやってくる

私の可愛い金魚姫────






どこまでも青い空に白い雲がもくもくとわたあめのように模様を描いていた。
つい先日まで蛙がそこらの田圃で大合唱をしていたというのにもう蝉が鳴いている。
────夏が来たのだ、と私は思った。
この季節は金魚売りである私にとって一番の稼ぎ時であった。金魚は夏の風物詩、子供も大人もこれを欲しがる。
────そろそろ金魚玉の準備をしなくてはならないなぁ。
私は別に金魚など売りたくはない。私もざが売り物にしたいのは文章…もとい私自身の書いた小説であるのだから。金魚売りという商売は元は祖父の生業で、私が亡くなった時に親類が体良く清四郎に押し付けたのだ。「勤めに出ずに稼げるよ」と言って。確かに毎日勤めなくて良いのはこの上なく魅力であったが金魚とて生き物、その世話は中々大変だった。


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