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太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

Newborn moon 〜19〜

暫くそうやって抱きしめていると、再び目が開いた。


「…ちゃんと伝えたいこと、伝えられた?」


どうやら和希くんが戻ってきたようだ。
その問いかけに僕は頷いて答えた。


「…うん、伝えられたよ。
ありがとう、お兄ちゃんと話させてくれて。」
「ううん、大丈夫…怜も話せて嬉しかったみたいだよ。
…ねぇ、悠隼にいちゃん。」


微笑んでいた和希くんが、打って変わって真剣な表情で僕の目を見る。
僕もちゃんと見つめて言葉の続きを待っていると、和希くんはこう言った。


「…半分こしよう。」
「…半分こ?」


あまりにも唐突かつすぐには意味が分からない言葉に僕は首を傾げた。
一体何を半分こするのか…疑問符を浮かべつつ考えているとくすっと笑って和希くんが言葉をまた続ける。


「うん、半分こ。
   お母さんが言ってたんだ。家族は嬉しいことも楽しいことも、辛いことも悲しいことも半分こにするんだって。
嬉しいことや楽しいことを分け合ったら二倍嬉しいし楽しくなる、辛いことや悲しいことを半分こにしたらその分寄り添えて辛くなくなるって。
…今、悠隼にいちゃんは辛くて悲しくて寂しいでしょ?
だからそれを僕にも分けてよ、誰かと一緒なら半分こだよ。」


…参ったな、こんな小さな子に慰められて大事なことを教えられるなんて思ってもみなかった。
でも、その提案が嬉しくて僕はすぐに頷いた。


「…うん、うんそうだね…半分こしたら、分け合えるからきっと辛くないね…ありがとう、和希くん。」


和希くんがにこっと笑って気にしないで、と言うように左右に首を振る。
僕は思いやりのあるいい人たちに囲まれて幸せだなぁ、と改めて感じることが出来た。

けどそこで一つ、僕の脳内に疑問が浮かんだ。


「…そういえば、お兄ちゃんはなんで和希くんの体に入って戻ってきたんだろう…?何か思い残しでもあったのかな…?」


その呟きに、和希くんがすぐに答えてくれた。


「…守るために帰ってきたんだ…太陽を守るために。
怜が悠隼にいちゃんのことを太陽、誰かが怜のことを月だと言った。
…怜にとっての太陽を守るために、僕はここにいる。
自分にはもう体が無い、けどこれから先悠隼が危険な目に遭った時…あの二人が後れをとった時、俺の代わりに守る者が必要なんだって言ってた。」
「…代わりに…守ってもらってなんだけど、和希くんはそれでいいの?君にとって僕はまだ会ったばかりの少ししか知らない人だよ?」


そう言った僕を見て、和希くんは微笑みながら揺るぎなくこう答えた。


「もう、知らない人じゃないよ?悠隼にいちゃんは僕の大事なお兄ちゃん。そして、怜は僕をあの家から助けてくれた人。利用されてる、と考える人もいるかもしれない…でも、怜は決してそんな人じゃないから…怜への恩返しも含めて僕は悠隼にいちゃんを守るんだ。だからいいんだよ。」
「…そっか…ありがとう、和希くん。けど、それなら僕も君を守るよ。
君と会って、君が経験した辛いことを知って…僕も決めていたんだ。
その傷ついた体と魂は僕が守るんだって。
だから、僕に君を守らせてほしいんだ。僕の大事な弟を守りたいんだ。」


そう言って僕が和希くんに手を差し伸べると、和希くんは本当に嬉しそうに笑って手を取ってくれた。


「…うん!ありがとう悠隼にいちゃん!」


僕も微笑んで和希くんを…いや、和希を引き寄せて抱きしめた。

こうして、僕たちは本当の兄弟になれた。

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