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太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

「Newborn moon」〜16〜

「…ねえ、和希くん。
君は…お兄ちゃんなの?」


和希くんが振り向いて僕をじっと見つめる。
護衛2人が固唾を呑んで見守る中、長い時間が過ぎたような気がした。
…いや、本当は数分なのかもしれない。
それでも見つめっている間は長く感じた。

ややあって和希くんがやっと口を開いた。


「…僕は結城怜じゃないよ。」


…なんだ、違うのか…。

落胆しかけた僕は、そこである事に気づいた。


「…僕、和希くんにお兄ちゃんの名前教えたっけ?」


…お墓は見たとは言ってた、でもあれはアルファベット表記だ。
和希くんのような境遇にいた子では読めないだろう。
なのに何故…?
混乱している僕を見兼ねたのか、和希くんが再び口を開いた。


「…僕は結城怜じゃないよ、と言うと少し違うかもしれないけど…
だって、結城怜の魂は僕の中にあるから。」


そう言って和希くんは自分の左胸に手を当てた。
和希くんの中に、お兄ちゃんの魂…?
より混乱している僕を見つめたまま、和希くんは言葉を続ける。


「僕の中には、正しくは僕の魂と結城怜の魂があるんだ。
だから…言われてみれば、僕は結城怜、結城怜は僕かもしれないね。」
「…どうして、君の中にお兄ちゃんの魂が…?」


僕が再び問いかけると、和希くんは微笑んですぐに答えてくれた。


「…僕をあの家から逃げられるように仕向けたのは、他でもない結城怜だからね。気づいたら僕の中にいたんだ、それで僕を助けてくれるって言った。
その代わりに、あの家を出たら怜の意思のままに進めと言われたんだ。
どうやったかは知らない、でも僕はあの家から逃げられた。
そして怜の言う通りに進んでここに着いた。
…悠隼にいちゃんに初めて会った時、怜が言ったんだ。
あいつに近づけ、逃がしてはならないって。」


…口調も相変わらずだ…本来ならそんな事言われてもすぐに信じることは出来ないのに、和希くんが現れてから起こりだした不思議な事象のせいでそれすら起こってもおかしくないとすら思えるようになってしまっていた。

─和希くんはお兄ちゃんで、お兄ちゃんは和希くん。

それを知って、今まで起こった不思議なことも少し納得がいった。


「…ねえ和希くん、お兄ちゃんと話せたりする?」
「話せるよ、頭の中に声が聞こえてくる。
僕は怜の記憶も全て知っているけどね。」
「…違う、そうじゃなくて…僕達もお兄ちゃんと話せる?お兄ちゃんは表に出てこられるの?」


その問いかけに和希くんは首を傾げた。
質問が難しかったかな、と思ったけどそうじゃないみたいで和希くんはすぐに口を開いた。


「…やったことないからわかんない、やってみる?」
「…いいの?」
「出来るかはわからないけどね」


和希くんがそう答えたところでひーちゃんが口を挟んだ。


「…俺たちは全然内容についていけてないが、取り敢えず部屋に戻ろう。話はそれからしてもいいだろう?」


それもそうだ、と思って僕は苦笑したあと和希くんを抱き上げて部屋に戻った。

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