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太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

Newborn moon〜10〜

和希くんを抱っこして脱衣所に着いて、服を脱いで和希くんのも脱がせてから中に入った。


「和希くん、そこに座って。
洗ってあげるから。」


僕がそう言うと和希くんは頷いて座った。
小さい子ってお風呂怖がるって聞いたことあるけど、和希くんは大丈夫なのかなと思いながら僕は後ろに座った。


「お湯かけるよ、目つぶっててね。」


和希くんはまた頷くとぎゅーっと目をつぶった。
それを見て微笑みつつ洗い出すと、懐かしい記憶が脳裏をふとよぎった。


「…僕も体大きくする前、お兄ちゃんとよくお風呂入って洗ってもらったな…」


一度思い出したら、色んな記憶が溢れてくる。
あの手の大きさ、温かさ、低いけど優しい声、抱きしめてくれた時に伝わる鼓動。


「…悠隼にいちゃん、大丈夫?」


和希くんに声をかけられて、自分の手が止まっていたことに気づいて慌てて洗い終えて流した。


「…うん、大丈夫だよ。
ごめんね、ちょっと考え事してて。」
「…そっか、悠隼にいちゃん座って?
僕も洗ってあげたい。」
「いいの?じゃあお願いしようかな。」


和希くんがせっかく洗ってくれると言うので、僕は甘えることにした。
僕もお兄ちゃんが洗ってくれたあとは同じことをしたくて洗わせてもらったっけな…。
和希くんが洗ってくれている間、僕はずっとお兄ちゃんのことを考えていた。
すると、突然今まで聞こえていたお湯の流れる音が止んでまた声が聞こえてきた。


『悠隼、お前が思っているよりも俺は近くにいる。…今でもな。
いつかわかるよ、俺の今の居場所なら。』


…お兄ちゃん…?
今まで聞こえていた声は僕を安定させるため、落ち着けるためみたいな内容だったのに…今のは…?
お兄ちゃんが近くにいる?
僕は少し混乱したけど、お兄ちゃんがいつかわかるって言っていたから、素直に信じることにした。


「悠隼にいちゃん、終わったよ。」
「ありがとう和希くん。
どうする、あったまってく?」


大きな浴槽を指差すと、和希くんはちょっと考えたあと頷いたので一緒にお湯に浸かった。
和希くんは危なくないように僕の膝の上に乗せた。
…体があったまって血の巡りが良くなったからか、和希くんの体の痣がより濃く浮き出ていた。
痛々しいな、と思いながら自然に僕は和希くんの頭を撫でていた。
和希くんは少し驚いたようだったけれど、そのあとは嬉しそうに微笑んで目を閉じた。


「…あのね、僕お風呂は怖いものだって思ってたんだ。
水の中に入れられて、息が出来なくさせられるところだったから。
けど、悠隼にいちゃんと一緒なら怖くない。
…ありがとう、悠隼にいちゃん。」


ぽつりと和希くんが漏らした言葉に、僕は幼いながらに和希くんが受けてきたことを悲しく思った。
でも、僕となら怖くないと言ってくれたことが嬉しくて思わず和希くんをそっと抱きしめた。
…この傷ついた小さな体と魂は、僕が守る。
もう誰にも傷つけさせない、と僕は心に決めた。


少しして和希くんが眠そうになったので上がり、服を替えて戻ってその日は僕の部屋で一緒に眠った。

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