太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

Newborn moon〜6〜

翌日の10時くらいにひーちゃんは和希くんを連れて買い物に行った。
その間僕はいつも通りずーっと研究室に詰めていて、いつの間にか夕方近くになっていた。
恐らく日も沈みかけている頃だろう、僕はぐーっと伸びをすると疲れてしばしばする目を軽く抑えながらソファに座った。
すると、少ししてノック音のあとにひーちゃんと和希くんが入ってきた。


「買い物終わったぞ。」
「ただいま、悠隼にいちゃん。」
「おかえり…ん?にいちゃん?」


さらっと呼ばれすぎて危うく聞き逃しそうになったけど、突然和希くんが悠隼にいちゃんという呼び方をした事に驚いて僕はひーちゃんに目を向けた。


「…いや、買い物してる間にお前の話をしてたらいつの間にか定着してた。」
「…なるほどね、納得した。
和希くん、楽しかった?」


僕が目線を合わせて問いかけると和希くんは目をキラキラさせながら首をぶんぶんと縦に振った。
どうやら相当楽しかったらしい。


「何買ってもらったの?」
「えっとね、新しい服を沢山とユウの友だち!」
「…ユウ?」
「この子のことだよ!」


ユウというのが誰のことか分からないでいると、和希くんがいつも連れているテディベアを僕の目の前に出してきた。
なるほど、ぬいぐるみを買ってもらったのか。


「よかったね、大事にするんだよ?
そうそう、それから和希くんの部屋は明日出来上がるって。」
「うん、大事にする。
僕の部屋出来ても、みんな来てくれるよね?」
「当たり前だよ、ちゃんと行くよ。
一人にはしないから。」

そう答えると和希くんが分かりやすく嬉しそうな顔をしたので、自然に頭を撫でると和希くんが僕に両手を伸ばしてきた。


「…和希くん、どうかした?」
「抱っこしてほしいってさ。
体が小さい頃のお前とそっくりだ。」


ひーちゃんが解説してくれたので、僕は苦笑しながら和希くんを抱き上げて膝に乗せた。
するとさっきの興奮が落ち着いてきたようで、和希くんのお腹がきゅーっと音を立てた。
慌てて和希くんは赤面しながらお腹を押さえたが僕たちには丸聞こえだった。


「ふふ、そうだよね。
お腹すいたよね、もうすぐご飯だし一緒に食べに行こうか。」
「一緒に食べてくれるの?
ありがとう、悠隼にいちゃん。」
「どういたしまして。ひーちゃんも行こう、みっちゃんも呼んでさ。」
「そうだな、行こう。」


そう答えたひーちゃんはみっちゃんに連絡して、僕は和希くんを抱っこしたまま食堂に足を向けた。

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