不完全な僕達の戦争
2学期の始まり
人には下と上がいて、きっと昔は学力や容姿、人柄なので決めていたのだろう。
でも今は違う、力が全てだ。
2学期が始まった宗介(そうすけ)のクラスは、特に変わったことは無かった。
あったとすれば、クラスの女子が髪を切ったとか、日焼けしたとか、そんなものだろう。
「皆、おはよう」
気品のある感じで言ったのは、クラスの中で1番の権力をもつ茨(いばら)だった。
「おはよう茨ちゃん」
「茨ちゃん、おはよう」
茨の元へ沢山の女子が向かった。
それは当たり前だ、彼女に嫌われればこの高校生活は真っ暗な闇の中に変わってしまうのだから。
沢山の女子に囲まれ、楽しそうに笑う茨。特徴的な赤い髪は、彼女の性格そのものを表しているようだった。
「……あら、噂をすれば来たわね」
茨の言葉と同時に、クラスのドアの前には1人の女の子が立っている。
このクラスで1番権力が無い、花宮(はなみや)叶(かな)だ。
「ふふ……2学期も宜しくね」
不敵な笑みを浮かべながら、茨は花宮の前に手を出す。『握手』だろうか?
だが、だだの握手ではないことは、茨の後ろに立つ女子達の顔でわかる。
しかし花宮は断ることも出来ず、ただ怖がりながら、ゆっくりと手を前に出し、握手をしようとする。
───パチンッ!!
花宮と握手を交わすとなく、茨は花宮の顔を叩いた。
その音だけで、どれだけ痛いか伝わってくる。
「誰が貴女のような、『無能力者』と握手を交わすとでも?」
笑いながら、茨は花宮の元を離れていった。
花宮はただその場で立っていた。
これがこの高校のルール
1、無能力者は、ゴミである。
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