悪役令嬢は麗しの貴公子

カンナ

22. ヒロインは歓喜する



 ーーー全てのことには理由わけがある。

 誰が言ったかなんて知らないけど、きっと私がこの世界に転生したのにも理由があったんじゃないかって思うの。

 なんてことない。ふとした瞬間に全て思い出した。あぁ、そうだ。ココは夢にまで見たあの世界・・・・だ。
 アルバート、ヴィヴィアン、ニコラス、クラン…あぁ、知ってる。みんなみんな知ってるわ!何度だってプレイしたんだもの!

 ココは乙女ゲーム『クリスタル・クラウン〜宝石達の真実〜』の世界。女の子なら一度は憧れるシンデレラストーリー。私はリディア・クレイン。この世界の主人公ヒロインであり、愛されるべき存在。

 知性溢れる魅惑的な王太子補佐、明るくて気さくな世界情勢に詳しい未来の外交長官、娼婦の子と烙印を押された愛を知らない公爵家の貴公子、2周目からしかプレイできない隠れ攻略キャラ。
 そして、私が愛してやまない誰もが憧れる王子様ーーーアルバート・リリークラント。私の心を掴んで離さない愛しい存在。

 画面の向こう側にいた彼らが、今ではこうして会って触れることも出来る。みんな私を愛してくれる。
 嗚呼、なんて素晴らしいの!


ーーーなのに。一人だけ例外がいた。
 悪役令嬢ロザリー・ルビリアンだけがこの世界にいない。代わりに同じ名前、同じ顔の令息が私のアルバート様の隣にいる。

 どうしてあの女がいないの? 彼女がいないと物語が進まないじゃない。

 「ゲームでもあまり役に立たなかったけど、いないなんて信じらんない。ほーんと、役に立たないんだから」

 まぁいいわ。いないものはしょうがないもん。性別以外は一緒のあの令息を私が幸せになるための踏み台にさせてあげる。

 「ちょっとゲームとは違う部分もあるけど、それはココが現実だからよね。ゲーム開始は来年からだけど、今からアルバート様と交流を持っておくのもアリかしら。ふふ、早く来年にならないかなぁ」
 


 少女は気づいていない。己の口で「現実」と言いながら、その目は決して現実を見てはいないことを。
 ココが、ゲームの世界だと信じて疑っていないことを。

 少女の瞳に映るのは、いづれ主人公自分を愛するであろう攻略キャラ達の姿だけ。少女はただ、『主人公ヒロインだから』という理由だけでこの世界で愛され、思いのままに出来ると思い込んでいる。

 悪役令嬢が存在しないことも、自分の他に転生者がいることも、何も知らない。

 いづれゲームが始まれば、彼女の愛するアルバートをはじめとした攻略キャラ達に愛されると信じてやまない少女は、瞳を輝かせて笑うだけだったーーー。






 本日とありがとうございました(´˘`*)
 次回もお楽しみに。


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