悪役令嬢は麗しの貴公子
5. 義弟
 
 お父様が宣言した私の社交界デビュー日まで、残り半年。
 本日、ルビリアン公爵家では私の11歳の誕生パーティーが行われている。
 パーティーと言っても、お客様を呼ぶわけでもなく、お父様と私、そして使用人一同のみでの本当にちんまりとした誕生会なのだが。
 お父様は財務長官で毎日忙しいのにも関わらず、私の誕生日は毎年休みをとって一日中一緒に過ごしてくれる。
  それに、使用人達も皆朝からいつもより元気で廊下やホールなど、会う度に「坊っちゃま、11歳のお誕生日おめでとうございます!」と声をかけてくれる。
 特にお父様は、毎年素敵なプレゼントを用意してくれるから今年も楽しみにしていた。
 .....................なのに。
 今私の目の前には、私と同じ歳くらいの男の子が立っている。私と同じ銀髪、アメシストの瞳が綺麗な線の細い中性的な顔立ちをしている。
 お父様が、「今年のプレゼントだよ」と言って部屋に入ってきた目の前の少年。ずっと無表情で、私のことを静かに睨んでいる。いや、威嚇している、と言った方が正しいのかな?
 まぁ、それは置いといて。私の勘が正しければ、悪役令嬢ロザリーには義弟がいたはず。それも攻略対象の。
 そして、その義弟と今目の前にいる男の子の容姿はほとんど一致している。私は、どうか否定してくれという思いを込めてお父様に尋ねた。
 「父上、プレゼントとはこの男の子のことでしょうか?」
 「あぁ、そうだよ。私も仕事が忙しくてあまりローズと一緒にいてあげられないし、ローズもクレアが亡くなってから本邸に引き篭もって勉強ばかりしてるとマーサから報告を受けていてね。」
 成程。つまり、お父様は私が家にずっと1人きりで寂しいから勉強ばかりしているんだろう、と。
 お父様、確かにお母様が亡くなって寂しいけど1人減ったら1人増やせばいいということではないのですよ?
 「父上、お気遣い頂いてありがとうございます。早速ですが、この子を紹介して頂けますか?」
 しかし、ここでお父様に愚痴ってもしょうがないので、先を促すことにした。
 「そうだね。この子は今日からローズの義弟になるニコラスだ。ニコラス、挨拶なさい。」
 「よろしくお願いします。」
 それだけ言って、紹介されたニコラスという少年は無表情のままペコリと頭を下げた。
 「やぁ、初めまして。私は、今日から君の義兄になるロザリーだ。これからよろしく頼むよ。」
 手を差し出したが、ニコラスはそれを一瞥しただけで手をとってはくれなかった。
 ...握手してくれないの、まぁいいけど。
 でも、これで確定した。彼は攻略対象者の1人、ニコラス・ルビリアン。貴族の父親と娼婦の間に生まれ、父親に引き取られるが娼婦の子どもとして酷い扱いを受ける。
 その後、ルビリアン公爵家に引き取られるが今度はロザリーが同じ理由で虐める。
 しかし、学園で出会ったヒロインがニコラスの心の傷を癒し、長年虐げてきたロザリーに復讐をしてハッピーエンドを迎える。
 
 まさかロザリーの誕生日に出会うなんて思わなかった。そんな設定なかったし。お父様は一体何を考えているんだ、私の正体がバレたらどうするんだ全く。
 「ローズ。明日、ニコラスに屋敷内を案内してあげなさい。今日はもう休ませるから」
 「はい、父上。ニコラス、明日部屋に迎えに行くから待っててね」
 「はい。失礼します」
  
 彼はまた頭を下げて、使用人と一緒に部屋を出ていった。
 ...既に色々問題はあるみたいだけど、ニコラスのことは明日考えよう。うん、そうしよう。
 それよりも今は。
 「父上、一体どういうつもりです?」
 急に目が笑わなくなった私にビクリとするお父様。
 「いやぁ…、まぁローズも同じ年頃の兄弟がいてもいいかと思ってな」
 「私の現状を理解した上で、それを言うと?」
 更に口元の笑みを深めた私に、お父様は私から目を逸らした。
 「...お前1人に負担をかけたくなかったんだ。ニコラスは、今はあんな様子だがいづれお前の役に立つだろう。お前の正体を明かすかは、お前に任せる。」
 お父様が責任を感じる必要なんてないのに。
 私は、一度わざとらしくため息をついてからお父様と目線を合わせるように場所を移動した。
 「父上、これは私が自分の意思でやってる事なので気にしないでください。」
 「ローズ...」
 「誕生日プレゼント、すごく嬉しいです。素敵な義弟をありがとうございます」
 お父様を安心させたくて、ニッコリ笑ってみせる。すると、お父様も微笑んで優しく頭を撫でてくれた。
 「お前が喜んでくれて良かった。仲良くするんだぞ」
 「はい、父上!」
 ゲームのことや私の正体のことを考えると、あまり関わらない方がいいのだが、犬や猫みたいに元あった所に返してきて!なんて言えないし…。
 前世でも兄弟がいなかった私にとっては兄弟ができて嬉しいと思っている部分もある。でも、私の正体がバレることを考えると複雑な気持ちになってしまう。
 あの後、部屋に戻ってからも色々考えたがいい解決策が見つからなくて結局考えることを放棄して、私は広過ぎるベッドにダイブして意識を手放した。
 
※クレア→ロザリーの母の名前
 補足説明してなくて申し訳ございません。
 
 お父様が宣言した私の社交界デビュー日まで、残り半年。
 本日、ルビリアン公爵家では私の11歳の誕生パーティーが行われている。
 パーティーと言っても、お客様を呼ぶわけでもなく、お父様と私、そして使用人一同のみでの本当にちんまりとした誕生会なのだが。
 お父様は財務長官で毎日忙しいのにも関わらず、私の誕生日は毎年休みをとって一日中一緒に過ごしてくれる。
  それに、使用人達も皆朝からいつもより元気で廊下やホールなど、会う度に「坊っちゃま、11歳のお誕生日おめでとうございます!」と声をかけてくれる。
 特にお父様は、毎年素敵なプレゼントを用意してくれるから今年も楽しみにしていた。
 .....................なのに。
 今私の目の前には、私と同じ歳くらいの男の子が立っている。私と同じ銀髪、アメシストの瞳が綺麗な線の細い中性的な顔立ちをしている。
 お父様が、「今年のプレゼントだよ」と言って部屋に入ってきた目の前の少年。ずっと無表情で、私のことを静かに睨んでいる。いや、威嚇している、と言った方が正しいのかな?
 まぁ、それは置いといて。私の勘が正しければ、悪役令嬢ロザリーには義弟がいたはず。それも攻略対象の。
 そして、その義弟と今目の前にいる男の子の容姿はほとんど一致している。私は、どうか否定してくれという思いを込めてお父様に尋ねた。
 「父上、プレゼントとはこの男の子のことでしょうか?」
 「あぁ、そうだよ。私も仕事が忙しくてあまりローズと一緒にいてあげられないし、ローズもクレアが亡くなってから本邸に引き篭もって勉強ばかりしてるとマーサから報告を受けていてね。」
 成程。つまり、お父様は私が家にずっと1人きりで寂しいから勉強ばかりしているんだろう、と。
 お父様、確かにお母様が亡くなって寂しいけど1人減ったら1人増やせばいいということではないのですよ?
 「父上、お気遣い頂いてありがとうございます。早速ですが、この子を紹介して頂けますか?」
 しかし、ここでお父様に愚痴ってもしょうがないので、先を促すことにした。
 「そうだね。この子は今日からローズの義弟になるニコラスだ。ニコラス、挨拶なさい。」
 「よろしくお願いします。」
 それだけ言って、紹介されたニコラスという少年は無表情のままペコリと頭を下げた。
 「やぁ、初めまして。私は、今日から君の義兄になるロザリーだ。これからよろしく頼むよ。」
 手を差し出したが、ニコラスはそれを一瞥しただけで手をとってはくれなかった。
 ...握手してくれないの、まぁいいけど。
 でも、これで確定した。彼は攻略対象者の1人、ニコラス・ルビリアン。貴族の父親と娼婦の間に生まれ、父親に引き取られるが娼婦の子どもとして酷い扱いを受ける。
 その後、ルビリアン公爵家に引き取られるが今度はロザリーが同じ理由で虐める。
 しかし、学園で出会ったヒロインがニコラスの心の傷を癒し、長年虐げてきたロザリーに復讐をしてハッピーエンドを迎える。
 
 まさかロザリーの誕生日に出会うなんて思わなかった。そんな設定なかったし。お父様は一体何を考えているんだ、私の正体がバレたらどうするんだ全く。
 「ローズ。明日、ニコラスに屋敷内を案内してあげなさい。今日はもう休ませるから」
 「はい、父上。ニコラス、明日部屋に迎えに行くから待っててね」
 「はい。失礼します」
  
 彼はまた頭を下げて、使用人と一緒に部屋を出ていった。
 ...既に色々問題はあるみたいだけど、ニコラスのことは明日考えよう。うん、そうしよう。
 それよりも今は。
 「父上、一体どういうつもりです?」
 急に目が笑わなくなった私にビクリとするお父様。
 「いやぁ…、まぁローズも同じ年頃の兄弟がいてもいいかと思ってな」
 「私の現状を理解した上で、それを言うと?」
 更に口元の笑みを深めた私に、お父様は私から目を逸らした。
 「...お前1人に負担をかけたくなかったんだ。ニコラスは、今はあんな様子だがいづれお前の役に立つだろう。お前の正体を明かすかは、お前に任せる。」
 お父様が責任を感じる必要なんてないのに。
 私は、一度わざとらしくため息をついてからお父様と目線を合わせるように場所を移動した。
 「父上、これは私が自分の意思でやってる事なので気にしないでください。」
 「ローズ...」
 「誕生日プレゼント、すごく嬉しいです。素敵な義弟をありがとうございます」
 お父様を安心させたくて、ニッコリ笑ってみせる。すると、お父様も微笑んで優しく頭を撫でてくれた。
 「お前が喜んでくれて良かった。仲良くするんだぞ」
 「はい、父上!」
 ゲームのことや私の正体のことを考えると、あまり関わらない方がいいのだが、犬や猫みたいに元あった所に返してきて!なんて言えないし…。
 前世でも兄弟がいなかった私にとっては兄弟ができて嬉しいと思っている部分もある。でも、私の正体がバレることを考えると複雑な気持ちになってしまう。
 あの後、部屋に戻ってからも色々考えたがいい解決策が見つからなくて結局考えることを放棄して、私は広過ぎるベッドにダイブして意識を手放した。
 
※クレア→ロザリーの母の名前
 補足説明してなくて申し訳ございません。
 
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
2
-
-
24251
-
-
755
-
-
4
-
-
52
-
-
0
-
-
157
-
-
149
-
-
59
コメント