自殺少女

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自殺少女

レポートNo.100  実験第99回目
7月22日、13時43分、地下鉄〇〇線〇〇駅

今回の実験、「電車自殺」は

今考えると大変迷惑な死に方だったと思う。

今日のレポートにはそう書こう。
電車のライトに照らされて線路にいざ飛び込んだ私は、そんなことを考えていた。






『昨日13時43分地下鉄〇〇線〇〇駅で人身事故が発生しました』
一人暮らしの狭いアパートで寝っ転がりながらテレビを見ていると、そんなニュースが流れてきた。
「・・・・・」
別に見たかったわけではない。元々ニュースなんて見るような真面目くんではない。そのせいで大学1年にして我が国の経済状況も政治状況も全然わかってないのだが。

とにかく、普段アニメかバラエティ、たまにドラマしか見ない俺がそんなニュースを見たのは伸びをしたからだ。ずっと同じ体勢で寝ていたので体を伸ばしたら運悪くチャンネルのボタンを押してしまったのだ。
「・・・もっぺん死ねよ」
舌打ちと共に呟いた。
電車自殺なんてするもんじゃない。死ぬなら他でやってくれ。わざわざ電車を止めて、人に迷惑をかけてから死ぬ必要があるか?
不謹慎?人でなし?クズ人間?
なんとでも言ってくれ。
俺は昔人身事故で電車が遅れ、好きなアイドルのライブ(チケット当選確率20%くらい)に行けなかった出来事があってから、電車で死ぬ奴には嫌悪感を抱いていた。
・・・まぁそもそも自殺かどうかもわからないんだけど。

ピロン!

行き場のない怒りを抱えていると俺の滅多にならないスマホが音を立てた。
「・・・・・」
どうせ公式アカウントだろ?知ってるよ。
期待したって友達からとか、好きな子からとか、街中で俺に一目惚れした美人なお姉さんとか、果てはサキュバスからとか・・・そんな方達から俺にLINEが来ることは一切ないのだ。
いや、後半は俺の性癖が入っている気がするが多分気のせいだ。

恐る恐るスマホに手を伸ばす。ドキドキしながら画面を見た。
「えっ」
ドキリとした。
公式ではなくれっきとした人間だったのだ。

ちなみに、女性ではない。1つ上のイケてる先輩、高田さんからだ。
『津崎おひさ!今夜サークルで飲み会なんだけど来ない?』
そういえば大学入学当初、サークルに入ったのだった。テニスサークル。イケイケなイメージがあって、大学デビューしようとした俺にはピッタリのサークルだと思った。
結局、馴染めずに今は行ってない。

飲み会なんてイベント、まず行かない。
行ったって誰も話す人がいない。家で飲んだほうがいい。
だけど・・・
『あ、あと摩耶ちゃんも来るぞー』
どうやら今夜の飲み会には俺の想い人、摩耶ちゃんが来るらしい。

〜〜〜〜〜〜〜


結局来てしまった・・・
来たって楽しくない。むしろ辛いことぐらい分かってるのに。それでも・・・
俺は少し離れた席の摩耶ちゃんを見た。
「津崎、来たからには絶対摩耶ちゃんモノにしろよ!」
小声で高田先輩が俺に言った。
「ぜ、善処はしますけど・・・」
「そんなヘタレだから未だに童貞なんだろお前!!!」
「わっちょっ・・・聞こえますって!ボリューム下げてくださいよ!」
「え、マジで童貞だったの?」
高田コイツ・・・・・
まぁでも、悪い人ではない。サークルに入った当初、浮いてた俺にわざわざ声かけてくれたし、今日だって俺が摩耶ちゃんを好きな事に気を使って飲み会に呼んでくれたり。
優しい人では、あるのだが・・・
「配慮が足りないんですよ・・・」
高田先輩に対して放った言葉はしかし、酔いが回ったサークルメンバー達の喧騒に掻き消されてしまった。

〜〜〜〜〜〜

「はあああぁぁぁぁ〜〜〜〜・・・・」
「な、なんか今日は呼んですまんかった津崎・・・」
「別に。いいんですよ・・・高田先輩のせいじゃないですし・・・別に、傷ついてませんし・・・」
「明らかに負のオーラ出ててるぞ・・・」

飲み会の結果は虚しく、失敗に終わった。
摩耶ちゃんは俺の目の前で、名前も知らないゴミクソ男性サークル員と一緒に帰っていった。
いわゆるお持ち帰りというやつだ。

・・・いや、俺が悪いのだ。男性サークル員は全く悪くない。俺がヘタレだったばっかりに・・・
「俺が・・・おれが・・・オレガ・・・」
「つ、津崎!飲みいこ!もう一軒!な!?」
先輩の優しい性格が、今となっては迷惑だ。
「いや、いいです・・・今日は1人にさせてください・・・」
「・・・わ、分かった・・・今日は帰るわ。じゃ、じゃあな!」
助かった。
「・・・・っ」
かなり酔ってるし、周りに人がいたら何するかわからない。
それに・・・
「ぐっ・・・ふっ・・・うぅ・・・」
この歳になって、泣いてる姿を人に見られたくなかった。

親に言われて勉強尽くめの中高生活、両親が事故と病気で死んでからも続けた勉強のせいでロクに友達も、もちろん恋人もいなかった。苦労して、苦労して、合格できた大学。
期待に胸を膨らませていた。
友達が沢山いる人気者で、可愛い彼女がいて、後輩からも先輩からも尊敬されて、困っていたら勉強を教えたり、助けたり・・・

それが今はなんだ?友達は0。彼女なんてもちろんいない。必要最低限しか家を出ず、勉強なんて大学に入ってからこれっぽっちもやっていない。親戚から送られる仕送りに頼ってバイトもせず・・・高田先輩だって、ぼっちの俺に気を使ってるだけだろ・・・
「みんなに・・・必要と、されたく、て・・・」
「なんで泣いてるの?」
「失恋だ。ほっといてくれよ」
「ほっとけないよ。こんな夜中に顔赤くしてうずくまって泣いてて、怪しいもん。不審者だよ。」
「なんだよ、心配してんじゃねぇのかよ。はは・・・」
「見知らぬ変な大人に心配する方が変だよ」
「そうかよ。なぁ、あっち行っててくれないか?失恋だって言ったよな?1人にしてくれよ」
「だからほっとけないって。明らかに不審者ーー」
「あのなぁ!!!」
さっき何故か話しかけてきた見知らぬ少女の胸ぐらを掴んで道の脇に移動させた。
女子高生だろうか?黒髪ショートカット。可愛い。俺の好みだ。でも今はそれどころじゃなかった。どうしようもなく腹が立っていた。
「それ以上つきまとうならブッ殺すぞ」
酔っていたからだろうか。普段なら人に言えないような汚い言葉を口走っていた。
「殺せるの?無理だよ。私を殺せた人いないもん。」
「あ?」
煽られて俺は少女の首に手をかけた。
ブレーキが効かなかった。
「首、締めるの?結構力いるよ?」
「バカにしやがって・・・・!」
手に力を込めた。
本当だ。結構力がいる。それとも無意識に力を抜いてるのだろうか?
「・・・っ!?・・・んぐっ・・・!」
少女は苦しそうだった。ざまあみろ。大人をからかうんじゃーー
「っ!やっ・・・!べ・・・」
俺は自分のやってることの重大さに気づいて直ぐに手を止めた。
少女は激しく咳き込んでいた。
「あ、あの、ごめ・・・」
「・・・なんでやめちゃうの・・・?」
「へ?」
少女は涙目で上目遣いをしながら俺に言った。
「な、なんでってそりゃ・・・」
「ここまでした人初めて。あなたなら私のこと殺せるかもしれない。」
「・・・・・・」
終始頭の中に「?」が浮かんでいた。
失恋した帰り道に見知らぬ少女に話しかけられ、酔った勢いで少女の首を絞め、やめたら「なんでやめちゃうの?」と言う。
ただでさえ今日は異常なのにーー

「今から私と一緒にホテル、来て」

まだイベントがあるなんて、聞いてない。



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