魔王の息子が勇者のパーティーに入りました。
10話 装備と魔導書
『フレアへようこそ!!』という看板が大きなアーチに引っ付いている。
そのアーチを潜ると、思わず上を見上げてしまう建物の大きさ、美しさに圧倒された。
「うわぁ……。」
己の世界がいかに小さかったのかが思い知らされた。
「ふふっ、リアンは初めて見たの? こういう街!」
「そうだよ。」
取り敢えず見たことが無いという設定にしておいた。実際にリアンは見たことが無かったので深く突っ込まれると危険だと判断したからだ。
「ってことはー、スラム街にいたのかな?」
「スラム……まぁその辺だよ。」
――いつもは豪華な生活してたがな。クソッタレが……。あのゴブリン……。
スラム街なんてまっぴらゴメンだという思いと、ゴブリンへの怒りが再度沸いてきたが、今は可愛らしい子供を演じないといけない。それを理解しているリアンは、勇者パーティーとはぐれないように小さな歩幅でせっせと歩く。
「おーい。ねぇーちゃん達〜! ここ! いい物置いてるぞ〜! 」
すると、屋台のオジサンが話しかけてきた。
――くそっ。足止めしやがって。
「ん?何置いてるのー?」
「君らの格好からするに、冒険者だな?」
「だったらなんですか?いまから服を買いに行くので、失礼しま――」
「――服ならここにも置いてんぜ。他にも魔導書とか、色々買い取ったもんを売ってんだよ。なっ!買ってくれって!イケメンさんよー!」
「魔導書……」
――魔導書は気になる。
リアンは早めに偽装のスキルを覚える必要があった。万が一魔術が使えた時に魔族ということをバレないようにするためだ。
「ちょっと見てってもいいか?」
「こんな古臭い所になにがあるというのだ。」
そんな勇者の言葉をフル無視し、商品棚を見渡す。
「これ買ってほしい。」
早速いいものを見つけた。くたびれてボロボロだがカッコイイ黒ローブだ。
「なんかガルを思い出しちゃうなぁ。そういや、リアンは何が使えるの?」
魔族は黒魔術専門と決まっているので、答えは決まっていた。
「黒魔術だ。」
「え!? そうなの!?」
「奇遇ですねぇ。実は少し前に仲間を失ってしまったのですが、その方も黒魔術師でした……。ちょうど火力に困っていたので、助かります。」
「残念だったな。でも、それなら丁度良かった。」
――皮肉だな……。この世界も。パーティーメンバーを殺した奴の息子がそのパーティーに入るなんて。
まぁ俺が父さんなら間違って一人殺した時点で全員殺すけど。
冷めた目でクタクタの革製黒ローブを見る。
リアンは悪い気など一切していなかった。やられる方が悪い、弱いやつが悪い、そんな世界で育ったリアンにとっては死などそいつの滑稽さが滲み出ただけなのだと思うのだ。
「おう! お買い上げありがとうごぜぇーまず! 黒魔術師さんならこれもどうだい!? 黒魔術スキル収録本!」
無言で本を手に取り、パラパラとめくると正の魔力で発動する下級魔術も何個か載っているようだった。勿論『偽装』もあったのでナルにお願いし購入して貰った。
シュッ
革製の黒ローブを羽織る。
フード付きだ。
「様になってるじゃないー!」
「黒魔術師っぽいな」
「いいですね〜」
リアンは新しいローブを買ってもらいウキウキである。魔界では服を誰かと選んで買うことが無かったので新鮮だったのである。
「ナル、ありがとう。」
少し微笑みながら優しく発する。
――いくら魔界に行ったら用済みとは言えお礼の言葉くらい言っておかないとな。
「全然いいよ! 後は上下の服ね。服屋さんで買いましょ!」
「ローブがあるから隠れるよ。大丈夫だ。心配するな。」
――上下の服を買わないためにも、ローブを買ってもらったのに。こいつの為とかでなくて、ただ単にめんどくさい。うん。
魔界では服など脱がないのであった。
排泄や汚れは魔術で転送しているのだった。
「遠慮しなくていいってー!」
「そうですよー。その弱々女の金を全部使っちゃっていいですからね。」
「それをお前が言うんじゃねぇー!」
「やめろってお前ら。新しいメンバーが入ってきたばっかだぞ。」
――ナルは、ハーネスの前じゃ怖くなるな……。それを勇者レンがとめるっと……。
――団結力は戦闘であるのかな……。まぁ、ある方が魔界に行きやすそうでいいんだけど……。こんな街で滞在しとくわけにはいかないしなぁ。
と、まぁ言い争いをしていると店主が
「嬢ちゃん達そう争うな、色々買ってくれたおまけに服やんよ!」
ニッコリと笑いながら奥から赤黒いTシャツと黒のズボンを出てきた。
――なっ……!? 魔界じゃ金を払わないだけで殺されるってのに……こいつら優しすぎやしないか?
「おっちゃん気前いいじゃない〜!」
ナルが服を受け取る。
始まりの街の暖かさを感じながら全身装備を揃えたリアンであった。
しかし、始まりの街フレアから抜け出せるのかと言う不安は高まる一方である。
そのアーチを潜ると、思わず上を見上げてしまう建物の大きさ、美しさに圧倒された。
「うわぁ……。」
己の世界がいかに小さかったのかが思い知らされた。
「ふふっ、リアンは初めて見たの? こういう街!」
「そうだよ。」
取り敢えず見たことが無いという設定にしておいた。実際にリアンは見たことが無かったので深く突っ込まれると危険だと判断したからだ。
「ってことはー、スラム街にいたのかな?」
「スラム……まぁその辺だよ。」
――いつもは豪華な生活してたがな。クソッタレが……。あのゴブリン……。
スラム街なんてまっぴらゴメンだという思いと、ゴブリンへの怒りが再度沸いてきたが、今は可愛らしい子供を演じないといけない。それを理解しているリアンは、勇者パーティーとはぐれないように小さな歩幅でせっせと歩く。
「おーい。ねぇーちゃん達〜! ここ! いい物置いてるぞ〜! 」
すると、屋台のオジサンが話しかけてきた。
――くそっ。足止めしやがって。
「ん?何置いてるのー?」
「君らの格好からするに、冒険者だな?」
「だったらなんですか?いまから服を買いに行くので、失礼しま――」
「――服ならここにも置いてんぜ。他にも魔導書とか、色々買い取ったもんを売ってんだよ。なっ!買ってくれって!イケメンさんよー!」
「魔導書……」
――魔導書は気になる。
リアンは早めに偽装のスキルを覚える必要があった。万が一魔術が使えた時に魔族ということをバレないようにするためだ。
「ちょっと見てってもいいか?」
「こんな古臭い所になにがあるというのだ。」
そんな勇者の言葉をフル無視し、商品棚を見渡す。
「これ買ってほしい。」
早速いいものを見つけた。くたびれてボロボロだがカッコイイ黒ローブだ。
「なんかガルを思い出しちゃうなぁ。そういや、リアンは何が使えるの?」
魔族は黒魔術専門と決まっているので、答えは決まっていた。
「黒魔術だ。」
「え!? そうなの!?」
「奇遇ですねぇ。実は少し前に仲間を失ってしまったのですが、その方も黒魔術師でした……。ちょうど火力に困っていたので、助かります。」
「残念だったな。でも、それなら丁度良かった。」
――皮肉だな……。この世界も。パーティーメンバーを殺した奴の息子がそのパーティーに入るなんて。
まぁ俺が父さんなら間違って一人殺した時点で全員殺すけど。
冷めた目でクタクタの革製黒ローブを見る。
リアンは悪い気など一切していなかった。やられる方が悪い、弱いやつが悪い、そんな世界で育ったリアンにとっては死などそいつの滑稽さが滲み出ただけなのだと思うのだ。
「おう! お買い上げありがとうごぜぇーまず! 黒魔術師さんならこれもどうだい!? 黒魔術スキル収録本!」
無言で本を手に取り、パラパラとめくると正の魔力で発動する下級魔術も何個か載っているようだった。勿論『偽装』もあったのでナルにお願いし購入して貰った。
シュッ
革製の黒ローブを羽織る。
フード付きだ。
「様になってるじゃないー!」
「黒魔術師っぽいな」
「いいですね〜」
リアンは新しいローブを買ってもらいウキウキである。魔界では服を誰かと選んで買うことが無かったので新鮮だったのである。
「ナル、ありがとう。」
少し微笑みながら優しく発する。
――いくら魔界に行ったら用済みとは言えお礼の言葉くらい言っておかないとな。
「全然いいよ! 後は上下の服ね。服屋さんで買いましょ!」
「ローブがあるから隠れるよ。大丈夫だ。心配するな。」
――上下の服を買わないためにも、ローブを買ってもらったのに。こいつの為とかでなくて、ただ単にめんどくさい。うん。
魔界では服など脱がないのであった。
排泄や汚れは魔術で転送しているのだった。
「遠慮しなくていいってー!」
「そうですよー。その弱々女の金を全部使っちゃっていいですからね。」
「それをお前が言うんじゃねぇー!」
「やめろってお前ら。新しいメンバーが入ってきたばっかだぞ。」
――ナルは、ハーネスの前じゃ怖くなるな……。それを勇者レンがとめるっと……。
――団結力は戦闘であるのかな……。まぁ、ある方が魔界に行きやすそうでいいんだけど……。こんな街で滞在しとくわけにはいかないしなぁ。
と、まぁ言い争いをしていると店主が
「嬢ちゃん達そう争うな、色々買ってくれたおまけに服やんよ!」
ニッコリと笑いながら奥から赤黒いTシャツと黒のズボンを出てきた。
――なっ……!? 魔界じゃ金を払わないだけで殺されるってのに……こいつら優しすぎやしないか?
「おっちゃん気前いいじゃない〜!」
ナルが服を受け取る。
始まりの街の暖かさを感じながら全身装備を揃えたリアンであった。
しかし、始まりの街フレアから抜け出せるのかと言う不安は高まる一方である。
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