ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~
友達というものは……
『もう割といい時間ですし…残念ですけど、今日はここまでと致しましょうか?』
てっきり、もうしばらく連れ回されるものだと思ってたところに想定外の一言を返されて、思わずキョトンとしてしまった。
え? もう終わりなの? ――と、下之城さんと別れるのを寂しく思う気持ちと、あれ? 下之城さん、『夜は何時まででも――』って言ってなかったっけ? なのにどうして……?――と、下之城さんの発言を疑問に思う気持ちが半々。
がしかし、次第に“どうして?”という気持ちの割合が増えていき……、
「!!」
自分の中で一つの結論に至った瞬間、サーッと血の気が引いた。
もしかして、私と一緒に居てもつまらなかった、から……?
別に帰らなきゃいけない時間というわけでもないのに帰ろうと言う理由……そんなの、“帰りたい”からに決まってる……。そんなの“つまらないから”以外に思いつかない……。
確かに今日一日、下之城さんは終始楽しそうにしてた様に見えた。
だけど、それは“楽しそうなフリ”で、本当は……。
「ごめんなさい……私、自分のことだけで精一杯で全部下之城さんに任せっきりで……。下之城さんは楽しませようといろいろ考えてくれてたのに、私は何もできずに、ただついていくだけで……」
あんなにいろいろ準備したのに……。
奏太君と栞ちゃんにも協力してもらったのに……。
気付けば私の心は申し訳ない気持ちと不甲斐ない自分自身への苛立ちで溢れていた。
何かを提案することもできず、自分から話題を提供することもできず、ろくな気遣いもできず。
今日一日の私の行動を冷静に振り返れば下之城さんに愛想尽かされても仕方ないことが良く分かる。
「ごめんなさい。私のせいでつまらない時間を過ごさせてしまって……」
最早私にできることは頭を下げることだけだった。が、しかし、
「? なごちゃん、何を仰ってるの?」
そんな私を見て、下之城さんは不思議そうな顔で小首を傾げると、またもや予想外の言葉を投げかけてきた。
「何か勘違いをしているようですけれど、ワタクシ、今日は思わず時間を忘れてしまうくらい、楽しい時間を過ごさせていただきましたわよ?」
「え?」
「ワタクシ、何回かクラスメートの方々と一緒に今日と同じようにお出かけしたこともありますけど、今日ほど心から楽しいと思えた日はありませんでしたわ」
「で、でも、この前は『夜何時まででも』って言ってたのに『今日は帰ろう』って……」
「ああ! ――だって、なごちゃんが疲れてるんですもの。そりゃあワタクシだってもっとなごちゃんと一緒に居たいですけど、なごちゃんが倒れてしまったりしたら大変ですもの」
下之城さんはちゃんと楽しんでいて、『帰ろう』と言いだしたのはへばっていた私の体調を気遣った結果? 見た感じ下之城さんが嘘を吐いてるようには見えないし……。ってことは、私はまだ下之城さんに愛想尽かされて嫌われちゃったわけじゃないってことでいいの!? でも……
「じゃあ、私達、まだ友達ってことで……いいの?」
「当然ですわ。ワタクシがなごちゃんと友達でなくなる時は、ワタクシがなごちゃんの恋人になった時だけですのよ」
「でも私……、今日一日で下之城さんに友達らしいこと何もしてあげれなかったし……」
「もう、なごちゃんったら。そんなの関係ありませんわよ?」
私が下之城さんのために何もしていないというのは事実。そんな私が彼女の“友達”を名乗るなんて。――そんな気持ちからか、なかなか自信を持てない私に、下之城さんは優しく笑いかけてくれた。
「別に何をしてくれたかなんて関係ありませんわ。重要なのは“誰と一緒にいたか”ですわ」
「誰と、一緒にいたか?」
「ええ。実際にいろいろと気遣ってくれるクラスメートの方々と出かけるよりも、今日の方がかなり楽しかったですし――なごちゃんも似たようなこと、あるんじゃありません?」
言われてみれば、確かに分かる気がする。
例えば凄く気遣いのできる人と一緒に居るよりも、私は何もしてくれなくても奏太君と一緒に居る方が何倍も楽しいと感じると思うし。
「なごちゃん、ワタクシ思うんですけど……友達だからと言って“何かしてあげなくちゃ”とか“気を配ってあげよう”って考えるのはおかしいですわ――“お互い何もしてくれなくていい。互いに遠慮する必要もなく、ただ一緒にいるだけで楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまう”――それが“友達”というものじゃないのかしら」
「!!」
そして私は、その下之城さんの考え方に思わずはっとさせられた。――そうか……友達ってそういうものなんだ、と。
相手を楽しませられなかったり、相手の役に立てなかったら愛想尽かされちゃうわけじゃないんだ!
一緒に遊びに行くからって、別に身構える必要なんて無かったんだ!
私、まだ下之城さんの友達でいいんだ!!――そう思うと、自然と私の表情はぱあっと明るくなってきて……、
「下之城さん!」
「どうしましたの?」
「そ、その……、今日はありがとう!!」
嬉しくて嬉しくて、ついつい勝手に頬が緩んでしまった。そして、
「し、下之城さん! そ、その……また一緒に遊びに行って、くれる?」
「ええ。勿論ですわ!」
改めて自分にも友達がいるという喜びに、その友達との仲を深められたと実感できた喜びが合わさり、気付けば私の顔は、自分でも自覚できる程の満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとう! よろしくね!!」
てっきり、もうしばらく連れ回されるものだと思ってたところに想定外の一言を返されて、思わずキョトンとしてしまった。
え? もう終わりなの? ――と、下之城さんと別れるのを寂しく思う気持ちと、あれ? 下之城さん、『夜は何時まででも――』って言ってなかったっけ? なのにどうして……?――と、下之城さんの発言を疑問に思う気持ちが半々。
がしかし、次第に“どうして?”という気持ちの割合が増えていき……、
「!!」
自分の中で一つの結論に至った瞬間、サーッと血の気が引いた。
もしかして、私と一緒に居てもつまらなかった、から……?
別に帰らなきゃいけない時間というわけでもないのに帰ろうと言う理由……そんなの、“帰りたい”からに決まってる……。そんなの“つまらないから”以外に思いつかない……。
確かに今日一日、下之城さんは終始楽しそうにしてた様に見えた。
だけど、それは“楽しそうなフリ”で、本当は……。
「ごめんなさい……私、自分のことだけで精一杯で全部下之城さんに任せっきりで……。下之城さんは楽しませようといろいろ考えてくれてたのに、私は何もできずに、ただついていくだけで……」
あんなにいろいろ準備したのに……。
奏太君と栞ちゃんにも協力してもらったのに……。
気付けば私の心は申し訳ない気持ちと不甲斐ない自分自身への苛立ちで溢れていた。
何かを提案することもできず、自分から話題を提供することもできず、ろくな気遣いもできず。
今日一日の私の行動を冷静に振り返れば下之城さんに愛想尽かされても仕方ないことが良く分かる。
「ごめんなさい。私のせいでつまらない時間を過ごさせてしまって……」
最早私にできることは頭を下げることだけだった。が、しかし、
「? なごちゃん、何を仰ってるの?」
そんな私を見て、下之城さんは不思議そうな顔で小首を傾げると、またもや予想外の言葉を投げかけてきた。
「何か勘違いをしているようですけれど、ワタクシ、今日は思わず時間を忘れてしまうくらい、楽しい時間を過ごさせていただきましたわよ?」
「え?」
「ワタクシ、何回かクラスメートの方々と一緒に今日と同じようにお出かけしたこともありますけど、今日ほど心から楽しいと思えた日はありませんでしたわ」
「で、でも、この前は『夜何時まででも』って言ってたのに『今日は帰ろう』って……」
「ああ! ――だって、なごちゃんが疲れてるんですもの。そりゃあワタクシだってもっとなごちゃんと一緒に居たいですけど、なごちゃんが倒れてしまったりしたら大変ですもの」
下之城さんはちゃんと楽しんでいて、『帰ろう』と言いだしたのはへばっていた私の体調を気遣った結果? 見た感じ下之城さんが嘘を吐いてるようには見えないし……。ってことは、私はまだ下之城さんに愛想尽かされて嫌われちゃったわけじゃないってことでいいの!? でも……
「じゃあ、私達、まだ友達ってことで……いいの?」
「当然ですわ。ワタクシがなごちゃんと友達でなくなる時は、ワタクシがなごちゃんの恋人になった時だけですのよ」
「でも私……、今日一日で下之城さんに友達らしいこと何もしてあげれなかったし……」
「もう、なごちゃんったら。そんなの関係ありませんわよ?」
私が下之城さんのために何もしていないというのは事実。そんな私が彼女の“友達”を名乗るなんて。――そんな気持ちからか、なかなか自信を持てない私に、下之城さんは優しく笑いかけてくれた。
「別に何をしてくれたかなんて関係ありませんわ。重要なのは“誰と一緒にいたか”ですわ」
「誰と、一緒にいたか?」
「ええ。実際にいろいろと気遣ってくれるクラスメートの方々と出かけるよりも、今日の方がかなり楽しかったですし――なごちゃんも似たようなこと、あるんじゃありません?」
言われてみれば、確かに分かる気がする。
例えば凄く気遣いのできる人と一緒に居るよりも、私は何もしてくれなくても奏太君と一緒に居る方が何倍も楽しいと感じると思うし。
「なごちゃん、ワタクシ思うんですけど……友達だからと言って“何かしてあげなくちゃ”とか“気を配ってあげよう”って考えるのはおかしいですわ――“お互い何もしてくれなくていい。互いに遠慮する必要もなく、ただ一緒にいるだけで楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまう”――それが“友達”というものじゃないのかしら」
「!!」
そして私は、その下之城さんの考え方に思わずはっとさせられた。――そうか……友達ってそういうものなんだ、と。
相手を楽しませられなかったり、相手の役に立てなかったら愛想尽かされちゃうわけじゃないんだ!
一緒に遊びに行くからって、別に身構える必要なんて無かったんだ!
私、まだ下之城さんの友達でいいんだ!!――そう思うと、自然と私の表情はぱあっと明るくなってきて……、
「下之城さん!」
「どうしましたの?」
「そ、その……、今日はありがとう!!」
嬉しくて嬉しくて、ついつい勝手に頬が緩んでしまった。そして、
「し、下之城さん! そ、その……また一緒に遊びに行って、くれる?」
「ええ。勿論ですわ!」
改めて自分にも友達がいるという喜びに、その友達との仲を深められたと実感できた喜びが合わさり、気付けば私の顔は、自分でも自覚できる程の満面の笑みを浮かべていた。
「ありがとう! よろしくね!!」
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