ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~
高校生にして二度目の逆プロポーズをされました……
勉強合宿中、唯一なごみと二人きりになれる自由時間。そんな貴重な時間に突然現れた来訪者。
隣でなごみが目を丸くして言葉を失う中、俺は戸惑いつつも目の前に現れた少女に喋りかけた。
「確か、下之城、だったっけ?」
「あら、あなたの方はワタクシのことご存じでしたのね。嬉しいわ」
下之城優奈――確か、なごみが転校してくる1か月くらい前に隣のクラスに転校してきた奴で、陽平情報によると、顔も良くて金持ちのお嬢様ってことで学年では割と有名人らしい。
そんな金持ちのお嬢様は、ご自慢の巻き髪を揺らしながら、トレードマークのお嬢様言葉を披露して上機嫌にほほ笑んでいる。
何でコイツがこんなところに? っていうか、初対面で気軽にしゃべりかけ過ぎじゃね?――などと一瞬考えたが、すぐにそれどころじゃないと思い直した。
もしかして、なごみが普段キャラを作ってるってバレたんじゃ……!? だとしたら、ここで口止めするなりなんとかしないと――と、焦りまくっていると
「奏太君、大丈夫だよ。下之城さんは私の秘密をバラしたりはしないから」
「え?」
先程まで隣でフリーズ状態だったなごみが口を開いた。
「そうよ。ワタクシを他人の秘密を言いふらして喜ぶようなくだらない趣味を持ち合わせた覚えはございませんわ」
なごみの言葉に下之城も同意。どうやら二人の間で既に話はついていたらしい。だが……
「し、下之城さん……どうしてこんなところにいるの……?」
「あら、たまたまよ。夜のお散歩で適当に歩いていたら偶然あなた達を見つけただけですわ」
にこやかに話す下之城お嬢様とは対照的に、怯えながら警戒している様子のなごみ……。どうやらまだホッと一息つく、というわけにはいかないらしい。
「う、嘘だ! だって、下之城さん、昼間あんなこと言ってたもん!」
「うーん、困ったわね……。本当にここを通りかかったのは偶然なのだけど」
珍しく敵意剥き出しのなごみを、顎に手をやりわざとらしく困った素振りでかわす下之城。
どうやら、俺の知らないところで二人の間に何か揉め事が起きていたのは明白だった。
「なぁ二人とも。何があったか知らんがとりあえず俺にも分かるように説明して――」
「まぁいいわ。本当は今日言うつもりはなかったんだけど、今言っておくことにしますわ。丁度藤岡君も居ることですし」
事態を把握するため、とりあえず二人に説明を求めようとしたものの、俺の言葉は完全スルー。目の前のマイペースなお嬢様に見事に遮られてしまった。
いいよ、もう……。俺のことは居ない者として扱ってくれ。――と、一人蚊帳の外扱いされて心の中でいじける中、
「――藤岡君、波志江さんと別れて、代わりにワタクシと結婚するというのはどうかしら?」
「!!!!」
「……は?」
一瞬、彼女が何を言っているのか理解できず、その思いもよらぬ言葉に、俺は思わず間の抜けた返事を返してフリーズしてしまった。
「ワタクシの家は経済的にも裕福ですし、将来の事を考えてもうちの系列の会社なら役員くらいになら簡単。いえ、というよりも、経済的に困ることはまずないから働きたくなければ無理に働く必要すらありませんわ。ワタクシ自身も可愛くて寛容な性格――ハッキリ言って波志江さんより何倍も良い物件のはずですわ」
将来心の底から働きたくないと願っている俺にとってはかなり魅力的な自己PRを自信満々に披露するお嬢様。
「ちょっと下之城さん!! 勝手なこと言わないでよ!!」
「あら、別にワタクシは提案を持ちかけただけよ? あくまで藤岡君の判断次第。別に勝手なことなんて言ってませんわ」
「そ、それはそうだけど……」
目の前で繰り広げられるキャットファイトを見て、ようやく状況を理解した。
「なるほど。要は二人で俺を取り合って揉めてたのか」
「うーん……、正確に言うとちょっと違うのだけど……、説明するのも面倒ですし、まぁ、とりあえずそういうことでいいですわ」
「え!? ち、違うの!? でも昼間は、私には奏太君は相応しくないとか言うし! 今はいきなりプロポーズなんてするし!!」
目の前で複数の女子が自分を奪い合う……俺は人生初のハーレムイベントに若干の感動を覚えつつ、簡単に解決できそうな問題で良かったと、心の中で安堵した。
だって、要するに俺がこの場でハッキリとお断りすればいいんだろ? もう解決したも同然じゃん!!
こんなの迷う必要すらない。だって、確かに将来働かなくてもいいという提案は捨てがたい……。だけど、俺の答えは最初から決まってるのだから。
「ちょっとお取込み中のところ申し訳ないんだが――」
俺はさっさと目の前の問題を解決するため、未だ言い争っている二人の間に割って入った。
が、しかし……
「下之城、さっきお前が言ったことへの返事なんだが――」
「ちなみに、世の中には親同士で結婚を決めてしまうということもあるのはご存じかしら?」
俺の言葉はまたしても途中で遮られ、
「あなたはお金やで心変わりはしないかもしれないけれど、あなたのご両親はどうかしらね?」
「は?」
下之城は不敵に笑った。
「ひ、卑怯者! お金で脅すなんて――」
「あら、脅しだなんて心外だわ。ワタクシはただ、藤岡君のご両親にも“提案”させていただくだけ。まぁ、いわゆる“外堀から先に埋める”という感じですわね」
まぁ、多分俺の親が先走る――なんてことにはならないと思うが……。俺の両親、意外とがめつい性格してるんだよな。目の前に大金積まれたらコロッといっちゃう可能性も……。
「だ、大丈夫だ、なごみ! 俺の親も実の息子を売るほど馬鹿じゃないはずだって!!」
「う、うん、そうだよね!!」
俺は自分自身に言い聞かせるようになごみをなだめた。
……よし、今すぐに父さんと母さんに電話しておこう。――と、そんなこんなしているうちに、
「まぁ、今日は意思表明しただけだから、返事はこの合宿の最終日に聞かせてもらいますわ。それまでにご両親とも話し合っておいて頂戴――それじゃあ、波志江さん。お休みなさい」
下之城優奈は言いたいことを一方的に告げて去って行った。
隣でなごみが目を丸くして言葉を失う中、俺は戸惑いつつも目の前に現れた少女に喋りかけた。
「確か、下之城、だったっけ?」
「あら、あなたの方はワタクシのことご存じでしたのね。嬉しいわ」
下之城優奈――確か、なごみが転校してくる1か月くらい前に隣のクラスに転校してきた奴で、陽平情報によると、顔も良くて金持ちのお嬢様ってことで学年では割と有名人らしい。
そんな金持ちのお嬢様は、ご自慢の巻き髪を揺らしながら、トレードマークのお嬢様言葉を披露して上機嫌にほほ笑んでいる。
何でコイツがこんなところに? っていうか、初対面で気軽にしゃべりかけ過ぎじゃね?――などと一瞬考えたが、すぐにそれどころじゃないと思い直した。
もしかして、なごみが普段キャラを作ってるってバレたんじゃ……!? だとしたら、ここで口止めするなりなんとかしないと――と、焦りまくっていると
「奏太君、大丈夫だよ。下之城さんは私の秘密をバラしたりはしないから」
「え?」
先程まで隣でフリーズ状態だったなごみが口を開いた。
「そうよ。ワタクシを他人の秘密を言いふらして喜ぶようなくだらない趣味を持ち合わせた覚えはございませんわ」
なごみの言葉に下之城も同意。どうやら二人の間で既に話はついていたらしい。だが……
「し、下之城さん……どうしてこんなところにいるの……?」
「あら、たまたまよ。夜のお散歩で適当に歩いていたら偶然あなた達を見つけただけですわ」
にこやかに話す下之城お嬢様とは対照的に、怯えながら警戒している様子のなごみ……。どうやらまだホッと一息つく、というわけにはいかないらしい。
「う、嘘だ! だって、下之城さん、昼間あんなこと言ってたもん!」
「うーん、困ったわね……。本当にここを通りかかったのは偶然なのだけど」
珍しく敵意剥き出しのなごみを、顎に手をやりわざとらしく困った素振りでかわす下之城。
どうやら、俺の知らないところで二人の間に何か揉め事が起きていたのは明白だった。
「なぁ二人とも。何があったか知らんがとりあえず俺にも分かるように説明して――」
「まぁいいわ。本当は今日言うつもりはなかったんだけど、今言っておくことにしますわ。丁度藤岡君も居ることですし」
事態を把握するため、とりあえず二人に説明を求めようとしたものの、俺の言葉は完全スルー。目の前のマイペースなお嬢様に見事に遮られてしまった。
いいよ、もう……。俺のことは居ない者として扱ってくれ。――と、一人蚊帳の外扱いされて心の中でいじける中、
「――藤岡君、波志江さんと別れて、代わりにワタクシと結婚するというのはどうかしら?」
「!!!!」
「……は?」
一瞬、彼女が何を言っているのか理解できず、その思いもよらぬ言葉に、俺は思わず間の抜けた返事を返してフリーズしてしまった。
「ワタクシの家は経済的にも裕福ですし、将来の事を考えてもうちの系列の会社なら役員くらいになら簡単。いえ、というよりも、経済的に困ることはまずないから働きたくなければ無理に働く必要すらありませんわ。ワタクシ自身も可愛くて寛容な性格――ハッキリ言って波志江さんより何倍も良い物件のはずですわ」
将来心の底から働きたくないと願っている俺にとってはかなり魅力的な自己PRを自信満々に披露するお嬢様。
「ちょっと下之城さん!! 勝手なこと言わないでよ!!」
「あら、別にワタクシは提案を持ちかけただけよ? あくまで藤岡君の判断次第。別に勝手なことなんて言ってませんわ」
「そ、それはそうだけど……」
目の前で繰り広げられるキャットファイトを見て、ようやく状況を理解した。
「なるほど。要は二人で俺を取り合って揉めてたのか」
「うーん……、正確に言うとちょっと違うのだけど……、説明するのも面倒ですし、まぁ、とりあえずそういうことでいいですわ」
「え!? ち、違うの!? でも昼間は、私には奏太君は相応しくないとか言うし! 今はいきなりプロポーズなんてするし!!」
目の前で複数の女子が自分を奪い合う……俺は人生初のハーレムイベントに若干の感動を覚えつつ、簡単に解決できそうな問題で良かったと、心の中で安堵した。
だって、要するに俺がこの場でハッキリとお断りすればいいんだろ? もう解決したも同然じゃん!!
こんなの迷う必要すらない。だって、確かに将来働かなくてもいいという提案は捨てがたい……。だけど、俺の答えは最初から決まってるのだから。
「ちょっとお取込み中のところ申し訳ないんだが――」
俺はさっさと目の前の問題を解決するため、未だ言い争っている二人の間に割って入った。
が、しかし……
「下之城、さっきお前が言ったことへの返事なんだが――」
「ちなみに、世の中には親同士で結婚を決めてしまうということもあるのはご存じかしら?」
俺の言葉はまたしても途中で遮られ、
「あなたはお金やで心変わりはしないかもしれないけれど、あなたのご両親はどうかしらね?」
「は?」
下之城は不敵に笑った。
「ひ、卑怯者! お金で脅すなんて――」
「あら、脅しだなんて心外だわ。ワタクシはただ、藤岡君のご両親にも“提案”させていただくだけ。まぁ、いわゆる“外堀から先に埋める”という感じですわね」
まぁ、多分俺の親が先走る――なんてことにはならないと思うが……。俺の両親、意外とがめつい性格してるんだよな。目の前に大金積まれたらコロッといっちゃう可能性も……。
「だ、大丈夫だ、なごみ! 俺の親も実の息子を売るほど馬鹿じゃないはずだって!!」
「う、うん、そうだよね!!」
俺は自分自身に言い聞かせるようになごみをなだめた。
……よし、今すぐに父さんと母さんに電話しておこう。――と、そんなこんなしているうちに、
「まぁ、今日は意思表明しただけだから、返事はこの合宿の最終日に聞かせてもらいますわ。それまでにご両親とも話し合っておいて頂戴――それじゃあ、波志江さん。お休みなさい」
下之城優奈は言いたいことを一方的に告げて去って行った。
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