ACT(アクト)~俺の婚約者はSな毒舌キャラを演じてる…~
本当に”ヤバい”状況の奴に限って、その自覚がないんだよね…
5月の下旬になごみが転校してきてからというもの…新町達による拉致事件、そして可愛い妹とのいざこざと、とてつもなく慌ただしい日々を過ごした俺。
そんな5月後半の怒涛のトラブルラッシュを乗り切り、今日から6月。ようやく穏やかな日常に戻りつつある今日この頃。
「それじゃあ全教科分の中間テストの範囲配るから。プリント、後ろに回してくれ~」
今は放課後のホームルーム。担任教師があまりやる気のなさそうな口調で気だるげにプリントを配っている。
そして、そのプリントの内容はというと…
「え~!もう中間かよ~!!」
「この前ゴールデンウィーク明けにテストやったばっかじゃん!!」
「勘弁してくれよ~」
プリントの見出し部分には“中間テスト範囲のお知らせ”という学生のほとんどが見たくないワードが印字されていた。
教室には普段騒がしい連中によるブーイングが鳴り響き、
「仕方ないだろ?毎年学校で決まってる行事なんだから。俺に言われても何もできねぇよ」
それに対して先生が投げやりな答えを返す中、
「そうだった…せっかく平穏な日常になりつつあったのに…。中間テストの存在を完全に忘れてた…」
俺は一人頭を抱えていた。
「どうしたんだ?別にお前普段も成績悪いわけじゃねぇだろ?何でテストなんかでそんなに打ちひしがれてるんだよ?」
俺の悲痛な呟きを聞き、前の席に座る陽平はこちらを向いて問いかけてきた。
「なんでテストなんかで打ちひしがれてるのかって?そんなの理由は一つに決まってんだろ…?」
机に突っ伏したまま少し顔を上げて恨めし気に返す俺。
別に俺だって別に子供のようにテストを毛嫌いしてるわけじゃないし、常に平均点くらいの俺にとってテストごとき絶望するほどの行事ではない。
確かにテスト勉強というのは面倒以外の何物でもないが、それだけだ。
そんな普段はテストに対して大して頓着していない俺が、ここまで絶望に打ちひしがれている理由、それは…
「え?もしかして、なごみちゃん?」
「その通り…」
一応俺の彼女兼婚約者である波志江なごみ…彼女以外にその理由に該当するものはなかった。
「もしかして、なごみちゃんのスパルタ勉強会とか?」
「いや、まったく違う。っていうか、むしろ逆だ」
「は?逆ってことは優しく勉強教えてくれるってことだろ?何がそんなに不満なんだよ?」
「いやいや、それなら俺だって不満なんてねぇよ!」
「は?じゃあ何で――」
「俺が教えなきゃならねぇんだよ…」
「え?お前がなごみちゃんに!?っていうか、お前だって特別成績良いわけじゃねぇだろ?そんなお前が教える側って…」
信じられないといった表情を浮かべる陽平。
まぁ、無理もないだろう。コイツはなごみの学力を知らないんだから。
「言っとくけど、なごみの成績って大体どの教科も2、30点くらいだぞ」
「いやいや!そんな成績でどうやってうちの学校編入してきたんだよ!」
「ああ。アイツの母ちゃん、この学校の理事長と親友らしくてな。特別に口利きしてもらったらしいぞ?」
「衝撃の事実!!」
「まぁでも、いくら理事長と親が仲良いからって、さすがに赤点コレクターが進級なんてさせてもらえるはずねぇし…」
「な、なんか大変そうだな…」
ようやく俺の置かれた状況を理解してくれた陽平から同情の言葉を投げかけられ、再び頭を抱える俺。
「じゃあお前ら、早く帰ってしっかり勉強しとけよ~。じゃあ、今日はこれで終わりってことで」
ガヤガヤと生徒達が騒ぐ中、大きなあくびをしながら教室を後にする先生。
それに気付くと、クラスメイト達はさらに声のボリュームを上げて騒ぎ出す。
俺の周りにも『うわ~今回の範囲マジで苦手なところばっかりだわ~ヤベぇ』とか、『もう最悪!今度成績下がったらお小遣い減らされちゃう!』『え~!それはヤバいね~』といった会話で盛り上がるクラスメイト達が数人。
こうやってヤバいヤバいって言ってる奴に限ってそんなにヤバくないんだよな。
と、そんなことを考えながら、俺は、ふと斜め後ろに座る心配の種こと、赤点クイーンの方を見てみると、
「奏太君、今回もよろしく頼むわ」
すぐに俺の視線に気付いた彼女は何故か毅然とした態度でキッパリとそう言い放った。
クラスメイト諸君、ハッキリ言って君たちの『ヤバい』なんて大げさだ。本当にヤバそうな奴はここにいる…。
「いや、もう少し危機感持てよ。さすがに中間で留年ってことはないだろうけど、全教科赤点なんて取ったら、多分進級できんぞ」
「大丈夫よ。だって奏太君が教えてくれるんでしょ?奏太君に教わればテストなんて楽勝よ」
「何なの、その謎の信頼!?期待が重すぎるんですけど!!」
「大丈夫、奏太君ならきっとできるわ」
「何でお前が励ます側なんだよ!――ったく、俺も自分の勉強しねぇとマズイってのに…」
俺自身、元々大して頭の良い人間じゃない上に最近苦手なところも増えてきた。正直他人に勉強教えられるほどの余裕なんてないのが現状だ。
とはいえ、他になごみに勉強教えられる奴なんていねぇし…
「奏太。良ければ俺がお前らの勉強見てやっても――」
「大丈夫!ノーセンキューだ!!」
「即答かよ!!せっかく俺が親切で助けてやろうって言ってんのに!!」
目の前の文武両道イケメンハーレム王に頼むなんてもってのほか。
「なぁ、陽平。知ってるか?親切ってのは時として“ありがた迷惑”にもなるってことを」
「酷くね!?」
以前この男に勉強を教えてもらおうとした時、聞いたこともないような理解不能でオリジナルティ溢れる解き方を強引に覚えさせられたおかげで悲惨な結果になったからな。
俺たちのような凡人がコイツのような天才に教わるのはリスク以外の何物でもない。
“凡人には天才を理解できない。そして天才にも凡人は理解できない”ってのは間違っていなかった。
「まぁでも、今回は中間テストなんだし、そんな悲観的にならなくてもいいんじゃねぇか?範囲も狭そうだし」
「まぁ、そこは不幸中の幸いって奴だな…」
仕方ない。まぁ、多少俺自身の成績は下がるだろうが、なごみを見捨てるわけにもいかんしな…。
「言っとくけどあんまり期待すんなよ?ぶっちゃけ俺だってイマイチわからんところもあるし」
「ええ。じゃあわからないところは私が教えてあげるわ」
「お前、その自信は一体どこから出てくるんだよ…」
目をギラつかせ、やる気を漲らせるなごみ。
「善は急げよ。ほら、奏太君、さっさと帰って勉強しましょ」
「はいはい…」
「じゃあな、二人とも」
「おう――って、なごみ!歩くの早っ!」
今日も部活があるという陽平に別れを告げ、やる気満々で一人スタスタと先を歩くなごみを追いかけた。
まぁ、範囲もそんなに広いわけじゃないし、本人もやる気はあるみたいだし…赤点回避だけならなんとかなるか…?
陽平となごみに流されるように、ついつい楽観的なことを考えながら帰り道を歩く俺。
しかし、この小一時間後、俺は知ることになる…今回の中間テストが、今後の俺となごみの関係に大きな影響を及ぼすことになるということを。
※※※※
無事に帰宅し、自分の部屋でゴロゴロしているところへ着信が。
ブーブーブー
『もしもし?』
スマホの着信画面に表示された“なごみ”という文字を確認し、いつものように何の気なしに電話に出ると、
『ど、どうしよう奏太君…緊急事態だよ…』
「!!」
電話越しの彼女の声は涙で震えていた。そして…
『は?何だよ緊急事態って!っていうか、お前今どこにいるんだよ!!』
『…かもしれない』
『はぁ!?なんだ――』
『私、奏太君と別れなきゃいけないかもしれないの!!』
『……は?』
電話の向こうで泣きながら叫ぶ彼女の言葉に、俺は何が何だか分からず、その場でフリーズしてしまった…。
そんな5月後半の怒涛のトラブルラッシュを乗り切り、今日から6月。ようやく穏やかな日常に戻りつつある今日この頃。
「それじゃあ全教科分の中間テストの範囲配るから。プリント、後ろに回してくれ~」
今は放課後のホームルーム。担任教師があまりやる気のなさそうな口調で気だるげにプリントを配っている。
そして、そのプリントの内容はというと…
「え~!もう中間かよ~!!」
「この前ゴールデンウィーク明けにテストやったばっかじゃん!!」
「勘弁してくれよ~」
プリントの見出し部分には“中間テスト範囲のお知らせ”という学生のほとんどが見たくないワードが印字されていた。
教室には普段騒がしい連中によるブーイングが鳴り響き、
「仕方ないだろ?毎年学校で決まってる行事なんだから。俺に言われても何もできねぇよ」
それに対して先生が投げやりな答えを返す中、
「そうだった…せっかく平穏な日常になりつつあったのに…。中間テストの存在を完全に忘れてた…」
俺は一人頭を抱えていた。
「どうしたんだ?別にお前普段も成績悪いわけじゃねぇだろ?何でテストなんかでそんなに打ちひしがれてるんだよ?」
俺の悲痛な呟きを聞き、前の席に座る陽平はこちらを向いて問いかけてきた。
「なんでテストなんかで打ちひしがれてるのかって?そんなの理由は一つに決まってんだろ…?」
机に突っ伏したまま少し顔を上げて恨めし気に返す俺。
別に俺だって別に子供のようにテストを毛嫌いしてるわけじゃないし、常に平均点くらいの俺にとってテストごとき絶望するほどの行事ではない。
確かにテスト勉強というのは面倒以外の何物でもないが、それだけだ。
そんな普段はテストに対して大して頓着していない俺が、ここまで絶望に打ちひしがれている理由、それは…
「え?もしかして、なごみちゃん?」
「その通り…」
一応俺の彼女兼婚約者である波志江なごみ…彼女以外にその理由に該当するものはなかった。
「もしかして、なごみちゃんのスパルタ勉強会とか?」
「いや、まったく違う。っていうか、むしろ逆だ」
「は?逆ってことは優しく勉強教えてくれるってことだろ?何がそんなに不満なんだよ?」
「いやいや、それなら俺だって不満なんてねぇよ!」
「は?じゃあ何で――」
「俺が教えなきゃならねぇんだよ…」
「え?お前がなごみちゃんに!?っていうか、お前だって特別成績良いわけじゃねぇだろ?そんなお前が教える側って…」
信じられないといった表情を浮かべる陽平。
まぁ、無理もないだろう。コイツはなごみの学力を知らないんだから。
「言っとくけど、なごみの成績って大体どの教科も2、30点くらいだぞ」
「いやいや!そんな成績でどうやってうちの学校編入してきたんだよ!」
「ああ。アイツの母ちゃん、この学校の理事長と親友らしくてな。特別に口利きしてもらったらしいぞ?」
「衝撃の事実!!」
「まぁでも、いくら理事長と親が仲良いからって、さすがに赤点コレクターが進級なんてさせてもらえるはずねぇし…」
「な、なんか大変そうだな…」
ようやく俺の置かれた状況を理解してくれた陽平から同情の言葉を投げかけられ、再び頭を抱える俺。
「じゃあお前ら、早く帰ってしっかり勉強しとけよ~。じゃあ、今日はこれで終わりってことで」
ガヤガヤと生徒達が騒ぐ中、大きなあくびをしながら教室を後にする先生。
それに気付くと、クラスメイト達はさらに声のボリュームを上げて騒ぎ出す。
俺の周りにも『うわ~今回の範囲マジで苦手なところばっかりだわ~ヤベぇ』とか、『もう最悪!今度成績下がったらお小遣い減らされちゃう!』『え~!それはヤバいね~』といった会話で盛り上がるクラスメイト達が数人。
こうやってヤバいヤバいって言ってる奴に限ってそんなにヤバくないんだよな。
と、そんなことを考えながら、俺は、ふと斜め後ろに座る心配の種こと、赤点クイーンの方を見てみると、
「奏太君、今回もよろしく頼むわ」
すぐに俺の視線に気付いた彼女は何故か毅然とした態度でキッパリとそう言い放った。
クラスメイト諸君、ハッキリ言って君たちの『ヤバい』なんて大げさだ。本当にヤバそうな奴はここにいる…。
「いや、もう少し危機感持てよ。さすがに中間で留年ってことはないだろうけど、全教科赤点なんて取ったら、多分進級できんぞ」
「大丈夫よ。だって奏太君が教えてくれるんでしょ?奏太君に教わればテストなんて楽勝よ」
「何なの、その謎の信頼!?期待が重すぎるんですけど!!」
「大丈夫、奏太君ならきっとできるわ」
「何でお前が励ます側なんだよ!――ったく、俺も自分の勉強しねぇとマズイってのに…」
俺自身、元々大して頭の良い人間じゃない上に最近苦手なところも増えてきた。正直他人に勉強教えられるほどの余裕なんてないのが現状だ。
とはいえ、他になごみに勉強教えられる奴なんていねぇし…
「奏太。良ければ俺がお前らの勉強見てやっても――」
「大丈夫!ノーセンキューだ!!」
「即答かよ!!せっかく俺が親切で助けてやろうって言ってんのに!!」
目の前の文武両道イケメンハーレム王に頼むなんてもってのほか。
「なぁ、陽平。知ってるか?親切ってのは時として“ありがた迷惑”にもなるってことを」
「酷くね!?」
以前この男に勉強を教えてもらおうとした時、聞いたこともないような理解不能でオリジナルティ溢れる解き方を強引に覚えさせられたおかげで悲惨な結果になったからな。
俺たちのような凡人がコイツのような天才に教わるのはリスク以外の何物でもない。
“凡人には天才を理解できない。そして天才にも凡人は理解できない”ってのは間違っていなかった。
「まぁでも、今回は中間テストなんだし、そんな悲観的にならなくてもいいんじゃねぇか?範囲も狭そうだし」
「まぁ、そこは不幸中の幸いって奴だな…」
仕方ない。まぁ、多少俺自身の成績は下がるだろうが、なごみを見捨てるわけにもいかんしな…。
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「ええ。じゃあわからないところは私が教えてあげるわ」
「お前、その自信は一体どこから出てくるんだよ…」
目をギラつかせ、やる気を漲らせるなごみ。
「善は急げよ。ほら、奏太君、さっさと帰って勉強しましょ」
「はいはい…」
「じゃあな、二人とも」
「おう――って、なごみ!歩くの早っ!」
今日も部活があるという陽平に別れを告げ、やる気満々で一人スタスタと先を歩くなごみを追いかけた。
まぁ、範囲もそんなに広いわけじゃないし、本人もやる気はあるみたいだし…赤点回避だけならなんとかなるか…?
陽平となごみに流されるように、ついつい楽観的なことを考えながら帰り道を歩く俺。
しかし、この小一時間後、俺は知ることになる…今回の中間テストが、今後の俺となごみの関係に大きな影響を及ぼすことになるということを。
※※※※
無事に帰宅し、自分の部屋でゴロゴロしているところへ着信が。
ブーブーブー
『もしもし?』
スマホの着信画面に表示された“なごみ”という文字を確認し、いつものように何の気なしに電話に出ると、
『ど、どうしよう奏太君…緊急事態だよ…』
「!!」
電話越しの彼女の声は涙で震えていた。そして…
『は?何だよ緊急事態って!っていうか、お前今どこにいるんだよ!!』
『…かもしれない』
『はぁ!?なんだ――』
『私、奏太君と別れなきゃいけないかもしれないの!!』
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