それでも俺は異世界転生を繰り返す
〈actuality point4-Second Name〉 三話
そして次の瞬間、俺の左太ももには銃弾が撃ち込まれていた。
サイレンサーってやつか、音がまったくしなかった。
焼けるように熱く痛む太もも。でも俺はこんな痛みより、遥かに痛い思いをしてきたじゃねーか。
「そんなんで動けなくなるほどやわじゃねーんだが?」
メリルが一歩後退した。
「違う……」
そして、彼女が頭を抱えた。
「私は、こんなことのために、武器をとったわけじゃない……」
どれだけ懊悩してきたのだろう。人を殺す度に罪悪感を背負い込んで、なにが正しいのかを考えて、その上でデミウルゴスに所属し続けてきた。何度も頭を抱えたんだろう。
それでも「自分はデミウルゴスに拾われた」と自分をごまかしてきた。ごまかし続けてきたんだ。
「戦士としての能力は認めていたが、やはり人格的には問題ばっかりだな」
男が右手を上げた。
バシュッと、なにかの発射音がした。
「がはっ……」
眼の前で頭を抱えていたメリルの横腹を銃弾が貫通していった。メリルが俺に撃ったものよりもずっと大きな口径。その証拠に、右側腹部から血が飛び散っていた。
素早く駆け寄って抱き上げる。
「これで、よかったのかもしれません……」
「良いもんかよ! こんな結末、俺は認めねーぞ!」
「うるさいガキだな。おい、メリルは置いて小僧だけ連れて行くぞ」
いくつもの足音が俺とメリルを囲む。周囲には灰色の軍服を着た兵士たち。
「あん? なんでこれだけしかいないんだ?」
「それは私たちが倒したからだよ」
聞き覚えのある声が聞こえてきて、気がつけば俺の前に立っていた。後ろを振り向けば、俺たちを取り囲んでいた兵士たちが地面に伏していた。
「私に任せて」
メディアがメリルの腹部に手を近付ける。右と左、両方の傷に両手を当てた。手と傷口の間には眩しいほどの光が漏れていた。
「お兄ちゃん脚出して」
俺の脚は双葉が治してくれるらしい。
「ヒーリング」
双葉もメディアと同じように手を当ててくれるが、その光はメディアに比べるとかなり弱かった。しかし、患部に篭っていた熱が徐々に抜けていくような感覚があり、痛みも和らいでいくようだった。
「お前ら……魔女派のヤツらか……メリルがもっと手早くやっていればこんなことにはならなかったのに、使えないヤツだ」
「その使えないヤツのせいでこうなってること、わかってないらしいな」
ゲーニッツが前に出る。
「そうだね、ここからは大人の仕事だ」
今度はグランツが。
「大人じゃないけど、一応高レベルだし。いっちょやったりますか」
最後にフレイアが前に出る。
「フレイア、大丈夫なのかよ」
「万全とは言えないけど、これくらいならなんとかなると思う」
「あんまり無理すんなよ?」
「心配、ありがとね」
と、フレイアが笑った。
よく見れば、槍を構えている手が震えていた。
「がんばってくれ」
俺はそうつぶやくしかなかった。
男が眉間にシワを寄せる。汗も大量にかいていて、この状況がヤバイってことを理解してるみたいだ。
「こんなところでくたばるような人間じゃないんだよ俺は。お前ら! 俺が逃げるまでの時間を稼げ!」
男の前に兵士たちが集まっていく。
「メリルの姿を見てもその男を守るんだね」
グランツがそう言うが、兵士たちは答えようとしなかった。
「じゃあな、魔女にたぶらかされた無様な猿ども」
男が振り向いて走り出す。が、次の瞬間には見えなくなってしまった。
その後はトントン拍子だった。
兵士たちはゲーニッツ、グランツ、フレイアの相手にはならず、五分と経たずに全滅してしまった。
警察に引き渡して、俺たちは宿に戻ってきた。
メディアのヒーリングでも完全に治療することができなかった。今でも昏睡状態にあり、女性陣が見てくれているみたいだ。と言ってもフレイアは戦闘終了後に倒れてしまったので、メディアと双葉が二人でメリルとフレイアを看病することになるだろう。
ゲーニッツとグランツは交代で見張りをするらしい。俺も見張り番をしようと思ったのだが「ガキは寝てろ」と突っぱねられた。
部屋に戻ってベッドに潜り込む。それしかできないのは不甲斐なく感じている。でも俺にできることはほとんどない。
フレイアのことも気になるが、今は英気を養っておこう。
サイレンサーってやつか、音がまったくしなかった。
焼けるように熱く痛む太もも。でも俺はこんな痛みより、遥かに痛い思いをしてきたじゃねーか。
「そんなんで動けなくなるほどやわじゃねーんだが?」
メリルが一歩後退した。
「違う……」
そして、彼女が頭を抱えた。
「私は、こんなことのために、武器をとったわけじゃない……」
どれだけ懊悩してきたのだろう。人を殺す度に罪悪感を背負い込んで、なにが正しいのかを考えて、その上でデミウルゴスに所属し続けてきた。何度も頭を抱えたんだろう。
それでも「自分はデミウルゴスに拾われた」と自分をごまかしてきた。ごまかし続けてきたんだ。
「戦士としての能力は認めていたが、やはり人格的には問題ばっかりだな」
男が右手を上げた。
バシュッと、なにかの発射音がした。
「がはっ……」
眼の前で頭を抱えていたメリルの横腹を銃弾が貫通していった。メリルが俺に撃ったものよりもずっと大きな口径。その証拠に、右側腹部から血が飛び散っていた。
素早く駆け寄って抱き上げる。
「これで、よかったのかもしれません……」
「良いもんかよ! こんな結末、俺は認めねーぞ!」
「うるさいガキだな。おい、メリルは置いて小僧だけ連れて行くぞ」
いくつもの足音が俺とメリルを囲む。周囲には灰色の軍服を着た兵士たち。
「あん? なんでこれだけしかいないんだ?」
「それは私たちが倒したからだよ」
聞き覚えのある声が聞こえてきて、気がつけば俺の前に立っていた。後ろを振り向けば、俺たちを取り囲んでいた兵士たちが地面に伏していた。
「私に任せて」
メディアがメリルの腹部に手を近付ける。右と左、両方の傷に両手を当てた。手と傷口の間には眩しいほどの光が漏れていた。
「お兄ちゃん脚出して」
俺の脚は双葉が治してくれるらしい。
「ヒーリング」
双葉もメディアと同じように手を当ててくれるが、その光はメディアに比べるとかなり弱かった。しかし、患部に篭っていた熱が徐々に抜けていくような感覚があり、痛みも和らいでいくようだった。
「お前ら……魔女派のヤツらか……メリルがもっと手早くやっていればこんなことにはならなかったのに、使えないヤツだ」
「その使えないヤツのせいでこうなってること、わかってないらしいな」
ゲーニッツが前に出る。
「そうだね、ここからは大人の仕事だ」
今度はグランツが。
「大人じゃないけど、一応高レベルだし。いっちょやったりますか」
最後にフレイアが前に出る。
「フレイア、大丈夫なのかよ」
「万全とは言えないけど、これくらいならなんとかなると思う」
「あんまり無理すんなよ?」
「心配、ありがとね」
と、フレイアが笑った。
よく見れば、槍を構えている手が震えていた。
「がんばってくれ」
俺はそうつぶやくしかなかった。
男が眉間にシワを寄せる。汗も大量にかいていて、この状況がヤバイってことを理解してるみたいだ。
「こんなところでくたばるような人間じゃないんだよ俺は。お前ら! 俺が逃げるまでの時間を稼げ!」
男の前に兵士たちが集まっていく。
「メリルの姿を見てもその男を守るんだね」
グランツがそう言うが、兵士たちは答えようとしなかった。
「じゃあな、魔女にたぶらかされた無様な猿ども」
男が振り向いて走り出す。が、次の瞬間には見えなくなってしまった。
その後はトントン拍子だった。
兵士たちはゲーニッツ、グランツ、フレイアの相手にはならず、五分と経たずに全滅してしまった。
警察に引き渡して、俺たちは宿に戻ってきた。
メディアのヒーリングでも完全に治療することができなかった。今でも昏睡状態にあり、女性陣が見てくれているみたいだ。と言ってもフレイアは戦闘終了後に倒れてしまったので、メディアと双葉が二人でメリルとフレイアを看病することになるだろう。
ゲーニッツとグランツは交代で見張りをするらしい。俺も見張り番をしようと思ったのだが「ガキは寝てろ」と突っぱねられた。
部屋に戻ってベッドに潜り込む。それしかできないのは不甲斐なく感じている。でも俺にできることはほとんどない。
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