それでも俺は異世界転生を繰り返す

絢野悠

〈actuality point 2ーOne loss〉 五話

 遠くで見えるフレイアは、俺が今まで接してきたフレイアとは別人に見えた。紫色や緑色や黄色の電気を纏い、周囲の敵を蹂躙していた。槍を振り回りてはいるのだが、槍の長さが電気によって長くなっている。触れたものを焦がし、壊す。逃げ惑うマントの兵士たちはみな吹き飛んでいった。

 気がつけばフーゴの姿はなかった。

「た、助かったのか」
「そういうことになるな」

 大剣を仕舞うゲーニッツ。その大剣には見覚えがある。

「なあアンタ、俺たちの味方なんだよな?」
「お前のことは知らん。が、フレイアの味方ではある。というよりもフレイアが所属しているギルド〈蒼天の暁〉のリーダーだからな俺は」
「アンタがリーダー……」
「〈蒼天の暁〉自体は知ってるみたいだな」
「一応な。フレイアにギルドに入らないかって誘われたし」
「はあ? アイツそんなこと言ったのか? はた迷惑な、こんなクソ虫の低レベルを入れてどうしようってんだ」
「初対面に対して酷くない……?」
「そういう性格だ、気にすんな」
「気にするわ!」
「どうどう、さて終わったみたいだぞ。これで出られるな」

 町を覆っていた黒いカーテンが降りていく。久しぶりに見た空は明るくて目がくらんでしまった。

 フレイアの方も終わったらしい。戦場にただの一人、彼女だけが立っていた。マントの兵士たちが地面に転がっている。一般人が一人もいないというのが奇跡なんじゃないかと思うくらいたくさんの兵士だ。

「さて、とりあえずこの町を出るぞ。政府の連中が来て捕まるのはごめんだからな」
「なあ、もしかしてその政府と今さっきのヤツらって対立してんのか?」
「デミウルゴスって自分たちで言うくらいだからな」
「そのデミウルゴスを倒したってことは、オッサンたちは政府側の人間じゃないのかよ」
「違うな。俺たちは政府側でもデミウルゴス側でもない。魔女派って呼ばれてる中立組織だ。だから暴れまわれば政府にも捕まる。デミウルゴスを倒そうが関係ない。住民を危険にさらしてもダメ、器物損壊もダメ。やりたいことやって逃げる。そういう立場だ。さあ行くぞ」

 また持ち上げられた。今度は肩に腹を乗っけられる形だ。

「お、ちょ、自分で歩けるって。お前の足じゃ俺たちについてこられない。おいフレイア! いつまでも突っ立ってんじゃねーよ! さっさと行くぞ!」

 オッサンの声を聞き、フレイアは手を大きく振った。

「いやでも門閉まってるじゃん」
「ちゃんと開くさ」

 すごくいいタイミングで門が徐々に開いていく。ご都合主義か?

「どうなってんだ……」
「あの門が閉まってたのは外にデミウルゴスが張ってたからだ。ソイツらがいなくなったんだから、俺たちの仲間が門を開けた。ただそれだけのことだ。口閉じてろ、舌噛むぞ」
「う、うん」

 ほぼ拉致のような感じで、俺はメイクールを後にした。さらば、俺が死ぬはずだった場所。俺は、未来を変えられた。これで未来が変えられることを証明できた。死ぬはずだった場所でもあるけど、いろいろ教えてくれた場所でもある。

 強く拳を握り、強く目蓋を閉じた。オッサンの肩の上で、俺は一人でガッツポーズをした。運命に勝ったのだ。なによりもフレイアを助けられたというのが嬉しかった。同時にこれ以上妙なことが起こりませんようにと願った。


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