それでも俺は異世界転生を繰り返す

絢野悠

〈expiry point 1ーCommon Destiny〉  七話

 今日明日と学校は休み。だが遊んではいられない。そんな時間があるのならば調べ物をしたり学校の屋上で再度調査したりとやらなきゃいけないことが多いからだ。

 朝起きて、朝食を摂って、パソコンで調べ物を始めた。

「なに、それ」
「パソコンだよ。文明の利器。そっちの世界にはないのか、ないよな」

 こっちよりも文明が幼いようなので仕方ないだろう。それは馬車が行き交っているのを見ればわかる。ライセンスの件なんかは魔法ってことで片が付くのかもしれない。魔法とはなにか、という部分を除いてだけど。

 とりあえずはバケモノ化するようなウイルスについて調べていく。感染症および病原体で人の身体に変化を及ぼすようなものがあれば片っ端から抜粋していく。他種族から蚊を媒介にして感染する病気なんかもあるって聞くし、そういう類の病気も控えておく。

 進行性骨化性繊維異形症、これは全身が骨になっていく病気。

 幸福顔貌骨異形成症、これは身長が伸びず手足が極端に短くなったり、皮膚が厚くなったりする病気。

 変異症候群、プロテウス症候群とも呼ばれ、骨や皮膚、その他の身体の器官が変形、肥大を続けてしまう病気。

 他にもたくさんあるが、これらは症候群であるから明確な原因は不明、ないしそういう症状であるというものだ。それだと俺が考えた理屈とは合わなくなる。元々これらの病気とは合わないんだけども。

 ウイルスによって臓器が肥大化する、皮膚に炎症を発生させる、傷口が変形していく。そういった感じのものはありそうだ。けれど、その程度では説明がつかない。人が一瞬で狼のような姿になるなんて、やはり普通ではないのだ。

「普通だと思っていたわけではないけども、調べ始めてすぐに行き詰まるとはな」
「字は読めないんだけどさ、有益な情報はないってことでいいの?」
「うん、いいよそれで。今は医療技術も発達してきてるし、原因不明の病気なんかも減ってきてる。逆によくわからない病気なんかも増えてるみたいだけど、その中でも該当するものはないらしい」
「身体が急に変質するような病気は私も聞いたことないな。ただ、昔猛威を振るった病気っていうのがよくわからない性質を持ってたって話は聞いたことあるかも」
「どれくらい前の話かわかる?」
「もうずっと昔だよ。その時のことを語るような人はいない、文献でしか知り得ないくらい昔の話。何百年、何千年も前のね」
「そうなると俺の仮説が現実味を帯びてくるな」

 顎に指を当てる。

「そういうのいらないから早くいいなさいよ」
「少しはカッコつけてもいいだろうに。とにかく、俺と同じようなスキルを持ったヤツがいて、ソイツが過去の異世界にいってウイルスを持ってきた。それを自分で使えるように繁殖させたりあーだこーだってわけだ」
「最後の説得力はともかくとして、一番有力ではあるかもしれないわね。特にアンタっていう異世界転移系スキルを見せられちゃうとなおさらね」
「そうなるとその病原体を持ち帰ったヤツを捜さなきゃいけないな。こんなもんが世界中に出回ったらさすがにヤバイ」

 と、昨日の注射器のことを思い出す。

「そういやお前、昨日注射器回収してたよな? あれどうなった?」
「あるよ、ここに」

 スッと出て来るのがまた怖い。

「これ、どうしような。持ってるのも怖いけど捨てるのはもっと怖いな」
「持ってるしかないんじゃないかなー。しかもひと目につかないところに隠すか、逆に肌身離さず持ってるくらいの気持ちが必要」
「あー、じゃあ前者でいこう。とりあえずそこのちゃぶ台の上おいといて」
「ほいほい」

 フレイアが置いた革のケースを見た。誰の手にも触れさせるわけにはいかない。両親はいないから大丈夫。問題なのは双葉で、俺の洋服を仕舞ったり、時々勝手に掃除したりと隠し場所を考えなくてはいけない。かといって持ち歩くのはもっとヤバイ気がする。

 その後も病気のことについて調べたり、あっちの世界にいた魔獣なんかについて調べたりで時間が潰れた。双葉が近くを通る度にフレイアを隠すのがとても面倒だった。

 昼食を食べ、双葉に勉強を教えてもらって、双葉と二人で買い物に出かけて、二人で夕食の準備なんかをする。やはり妹はいいものだ。つい頭を撫でちゃった時だって「なに? もう、くすぐったいよお兄ちゃん」って笑ってくれる。俺は間違いなく幸せ者だ。

 と、そんなことをしているうちに夜になった。ご飯を食べてお風呂に入って部屋でゴロゴロした。風呂はもちろん双葉の後に入った。兄の特権である。

 双葉が寝静まった後でフレイアにご飯をあげた。こういう言い方だと監禁しているかペット扱いしてるかの二択になってしまいそうだが、フレイアはそれでも元気でやってる。

 食事を追えてすぐ、俺たちは学校に向かった。当然、昨日戦った屋上を含めて学校を調査するためだ。

 だが案の定屋上は閉鎖されていたし、警備員の数も増えていた。俺たちが帰ったあとで警備員のおっちゃんが学校側に連絡したんだろう。

 警備員たちに見つからないように学校内を散策。屋上の閉鎖も無理矢理かいくぐった。黄色いテープが張ってあるだけだからどうにでもなる。

 なにかあの男に通じるような証拠がないかと思ったが、死体も綺麗サッパリ消えてしまっていた。衣服なんかも変形した時に同化したのか。

 ますますよくわからない。原理とかそういうのを超越したなにかがあるんじゃないかと本気で思う。

 ふと、そういう状況を起こしうる事象に思い当たった。が、それはありえないと首を振った。まだいろいろと確認してないこともあるし、結論を急ぐ必要もないだろう。

 一通り校内を見て回り、日付が変わったのと同時に学校を出た。俺があまりにもいい子すぎて眠くなってしまったからだ。

 家についてすぐにベッドに入った。今日は双葉に見つからなかったし安心して眠りについた。

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