それでも俺は異世界転生を繰り返す

絢野悠

〈actuality point 1ーHello World〉 六話

 喉の奥につっかえているものは、今でもまだ詰まったままだ。でも、少しだけ許されたような、そんな気がしていた。

「イツキ、もし行く場所がないんなら私が入っているギルドに入らない?」

 身体を離すと、視線が交わった。かなり近い。

「ギルドって、仲間になれってことか?」
「そういうことになるかな」
「でも仲間ってことはレベルがかなり高いんじゃないか?」
「みんなレベル100以上。その代わり十人もいない」
「俺、まだレベル20になったばっかりなんだけど」
「大丈夫、私がちゃんと説明するから」
「なんて説明するんだ? ハローワールドのことは口外にできないんだぞ? スキルを見せろって言われたらどうするんだ」
「まあ、なんとかするさ。みんないい人だし、無理矢理スキルを暴こうとはしないと思う。私の口添えもあるしね」
「フレイアがいるギルドの誰かに恨みを持ってて、俺が殺すために近付いたとか、そういう可能性は考慮しないのか」
「イツキは誰かを殺せるような人間じゃないと思うから大丈夫」
「なぜそう言い切れるんだよ。お人好しにもほどがある……」
「アナタが死ぬのを怖がってるから。殺人をしようとする人は自分が殺される覚悟が決まっている。アナタのような人に人殺しはできない」
「そういう、もんなのかな」
「正確にはわからない。でも私の経験則がそう言ってるし、これから殺す側に回るかもしれない。でも少なくとも今は違うから」
「よくわからないけど、言うとおりにしておく方がいいっぽいな」
「ええ、そうよ。この町は復旧作業のためにしばらく使えなくなるから、別の町に行って仲間と合流するわ」
「連れてってもらえるか?」
「おいで、イツキ」

 フレイアは手を差し出してきた。

 その手を握る寸前で、俺はまだ自分でも戸惑っていることに気がついた。そんな俺の手を、彼女は強引に掴んだ。

「あっ……」
「行くわ。ここでボーッとしていても進展しない。復旧作業は国に任せるから」
「わかった。よろしく頼む」

 立ち上がり、歩き出した彼女の背中を追う。

 いろいろと考えることは多いけど、今は少しだけ置いておこう。まだわからないことばかりだけど、フレイアみたいな人たちがいればなんとかなるような気がする。幸いにも言葉は通じるし文字も読める。

「なんとか、するしかねーんだよな」

 不慣れな異世界生活がこれから始まる。俺はその覚悟を決めて、一歩足を踏み込んだ。

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