傷だらけの限界超越(リミットブレイク)

絢野悠

第4話

リズと向かい合い、今後の作戦会議を始める。
「語がやっている流動魔法は初歩の初歩。でも、流動魔法を覚えようとしている人間の九割がこの初歩ができなくて諦めるから、よくやってる方だとは思う」
「そうだな」
「語、ちゃんと聞いてる?」
「そうだね」
引っ叩かれた左頬が熱い。腕も脚も、技をきめられたから痛い。これは望未から受けた、嬉しくもない愛の形だ。
「痛いの痛いの飛んでけー」
「ありがとうリズ。でもそういうのは頬ずりでするもんじゃない」
身体を引っぺがし、会話の続きをしてもらおう。
「んで、俺はどうすればいい」
「語は頭がいいわけじゃないから、口で説明しただけじゃなにもできない。何度も何度も失敗を繰り返して、身体で覚えるしか方法がない。トライアル・アンド・エラー、これ大事」
つまり俺には才能とかそういうのがないってことだよな。あまり言われるとガラスのハートが傷ついてしまいます。
「ま、まずはなにをすればいい? アクケルテ戦までできることはやっておきたい」
「うんわかった」
どこから取り出したのか、小さなホワイトボードとマジックを取り出したリズ。
「流動魔法は、基本的には物質の流れを増大または減少させる魔法のこと。ボールを地面にバウンドさせ、上昇する際にボールと接触。その時に流動魔法を発動させて増大した場合、ボールは異常加速して普通に飛び上がるよりも高く上空へと打ち上がる」
「俺がやってるのはそれだな」
「語は完全な物質に対してしか作用させられない。相手の攻撃に対してカウンターを狙うことでしか流動魔法を使役できないのもそのため。けれど私は違う。当然傑も。流動魔法とは、触れているもの全てに適応できるすごい力なの」
「言いたいことがよくわからないんだが……」
「例えば拳を前方に打ち出す際、『拳と空気の間に生じた流れ』を強化する。こうすることで、常に高速で攻撃をすることが可能となる」
「簡単じゃ、ねーんだろ?」
「語が傑と離れていた間、私はずっと教わっていた。その時間を短時間で埋められると思うのなら、覚えられる」
俺が征旺学園に来たのは中等部から。その時点でじいちゃんとは離れていた。
「中学に入ってからの六年間を埋められるわけがない。元々、今の流動魔法だってかなり苦労して覚えたんだ。カリバーン戦までにだって間に合うわけがねえ」
急に、抱きしめられた。
「よしよし、私の語。大丈夫、アナタならなんとかなるから」
そして、新たにホワイトボードになにかを書いていった。
「もう一つ、流動魔法の方向について話がある」
「一応じいちゃんには教わったぞ。俺が使えるのは直線。他には曲線角線だっけか」
「あとは点。曲線と角線は流動の方向性を変えることだけど、点は少し違う。打ち出した衝撃を増加させて前方へと向ける。逆に、こちらに向けられた衝撃を緩和するのにも使える。完全に覚えるのは不可能だけど、少しでも修練できたのなら、絶対に語は強くなる」
身体を離し、俺の目を見て微笑んだ。
「がんばろう」
無表情だった彼女が笑むと、本当に花が咲いたようだと思った。こういう顔もできるんじゃないか。
「それじゃあ、お願いしようかな」
「ただ、ケージがないと魔法は使えない。だから、とりあえずは体術を身体に刷り込む」
「いきなりだな、ちょっと展開が早くないか」
手を掴まれ、そのまま部屋の中をを引きずられる。そして玄関を出て外へ。ギリギリのところで靴を履いたのだが、外に出てもまだ引きずられていた。
「どこ行くんですかリゼットさん」
「ここです」
「五分もしないはずだが、ここが目的地だってのか?」
立ち上がり、尻を叩いて埃を落とした。
やけに広い近所の公園。夜でもライトアップされたその場所には遊具などない。なにがあると言われれば、中央に噴水があるだけだ。
「早速、教えながら組手をする。好きに動いてくれていい」
「ヤりながら教えるってか。下手くそなんて言わせないぜ」
この会話を京介が聞いていたら、なんて想像してしまった。
「いくぞ!」
「ええ、きて」
地面を踏み込み、全速力で突貫した。敵うはずはないとわかってはいるが、やられただけで終わらせはしない。
そう意気込み、俺は拳を突き出すのだった。

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