魔法少女リンネ ~ The world of RINNE~

絢野悠

第17話

いつものように目覚め、いつものように起き上がって茶の間へ。起き上がるといっても夢の世界で、なのだが。


「まあ、いると思っていたわ」
「ん、ボクはリンネのパートナーだからね」


そう、私が来るといつも式がいる。


「今日もテキトーに散策して、時間になったら切り上げるわ」
「DSの方はいいのかい?」
「いつでもいるわけじゃないでしょう? それに、今会ったら確実に潰される」
「作戦なしでは戦えない、ということだね」
「ええ、無理ね。絶対無理。だから今は普通に、いつも通りの生活をするわ。活路を見出すまで、ね」
「それがいつになるかはわからないんだ?」
「わかったら苦労しないわ。まあ、わかる日は来ないと思うけれど」


式に背を向けて歩き出す。魔装転身し、鎧を身に着けて家を出た。


また、式はどこかにいなくなってしまった。いつも通りの透過だろう。


今日は走ることをしない。周囲を警戒しながら、近い場所でイレギュラーを狩ることにしたからだ。


歩きながらいろいろなことを考える。


果歩のこと、千影のこと、仲間になった二人のこと、そして式のこと。


果歩を倒したのは千影だ。しかし、千影は間違いなく果歩を慕っていたはずだ。私はあまり干渉しなかったが、果歩は私にも千影にも優しかった。そんな果歩を、千影は切ったんだ。


千影だってわかっていたはずだ。こっちの世界での死ということ。現実で死ぬわけではないけれど、昏睡状態という結末があることを。


知っていてそうしたのだとしたら、彼女には彼女にしかわからないなにかがある。そのなにかとは、きっと確固たる意思というものだろう。これは、私にはきっとわからないものだ。


千影の意思を知るのには、きっと彼女を倒すしかないのだろう。


縁と真摘に関しては、私は仲間だと思っていない。共闘関係ではあるのだが仲間ではない。都合がいいから一緒にいる、都合がいいから共闘する。ただ、それだけの存在。


しかしながら、少しばかり気になることもあった。


距離があまりにも近すぎるのだ。気安さと馴れ馴れしさ。縁は言わずともがな、会ったばかりの真摘にすらそれを感じる。なぜこんなに近く感じるのか、それはわからない。考える事があるとすれば、その近さが私に対しての物か否かということ。


私は彼女たちを知らない。だからそれを気安いと感じる。だが私の周囲に、彼女たちと接点を持つ者がいるとすれば、彼女たちが気安い理由もはっきりする。今のところ共通点は式だが、正確なところはこれからだ。


そして最後に式のこと。


彼は私に言った、パートナーだと。なぜ私がパートナーなのか。縁や真摘の方がパートナーにするにはうってつけだ。縁は正義感の塊、イレギュラーを倒すためには必要な志を持っている。真摘は立ち振舞いが優雅で、魔法の汎用性がかなり高い。


私と喋るわけでもなく、ただ透明化してついてくる。私を監視しているのか、それとも本当に信頼しているのか。


ここで、縁と真摘がこちらの世界にやってきた。それは感覚でわかった。


「式、出て来てもらえる」
「なんだい、というか気安く呼ばないで欲しいな。ボクはこれでも神様みたいなものなんだから」
「はいはい」
「なんでそうやってあしらうのさ!」
「今DSが現れたとして、彼女の戦闘を遠くから見るということは可能かしら」
「観察したいってこと?」
「そういうこと。私がいるということがバレずにいられるか、という話なのだけれども」
「無理かな、さすがに。他の魔法少女、例えばキミとかよりもDS、というか千影の方が魔法力が高いんだ。キミに感知できなくても千影には感知されてしまう。遠目であったとしても絶対にバレるね」
「つまるところ、私が彼女を見つけた時には、逆にこちらがすでに見つけられているということね」
「うん、だからどうやってもキミが彼女を観察するということはできないのさ」
「それだと、千影を観察して対処法を練るということが不可能じゃない」
「無理だね」
「バッサリ切り捨ててくれるけど、それじゃあ勝てないじゃない」
「勝ち目がないわけじゃない。なにより千影は一人で、キミたちは三人なんだから」
「結局数でしか勝てないんじゃない……」
「逆さ、数でなら勝てるんだ」
「物は言いようね、本当に」
「でもキミは、言い方とかやり方とか、実はなんでもいいとか思ってるんじゃないの?」
「どうしてそう思うの?」
「世界征服するなんて言ってる人が、やり方なんて気にしてるとは思えないからさ。ようは倒せればいい。そのための情報が欲しい、ただそれだけなんだろ?」
「そういうことだけど、その情報がないのよね」
「ボクから出せる情報は基本的にはない。キミたちは魔法のことも知っているだろうしね」
「そうすると、DSの情報から倒し方を探るのは難しいわね。いいわ、あとは私が自力で考える」
「自力でなんとかできる?」
「やらなきゃやられる、ただそれだけよ」


肩に乗った髪の毛を右手で降ろし、歩く速度を少し上げた。


どうやって倒すのか。式が言うとおり、最終的に倒せればいいのだ。


考えろ。やられなければ、やられるだけなのだ。

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