魔法少女リンネ ~ The world of RINNE~

絢野悠

第15話

次に縁である。


鎧である祕龍ひりゅうの転身能力は、鎧自体の干渉を増減させる。摩擦を極端に下げ、攻撃を滑らせたりできるようだ。


そして、右手足の祠龍しりゅうと左手足の祁龍きりゅうは行動ががリンクしている。式いわく、このような別の魔装とリンクするタイプは珍しいと言う。


右手足での攻撃によってマーキングした場合、左手足での攻撃は音速を超えるほどの速度を出せるという。左手足での攻撃でマーキングした場合、右手足での攻撃は左手足とは比較にならないほどの攻撃力を得る。ワンツーをセットにすることで、常に魔法を発動したままにできるという仕組みだ。


マーキングは全部会わせて五つ設置できるようだ。


話しを聞く限り、縁の能力は完全に前衛向け。


真摘の能力は、私も良く聞いておく必要があった。


巫女服である白椿しろつばきは、転身することで空気を蹴って空を駆ける力。空を飛ぶのとは少し違うようだ。


扇の蒼桔梗あおききょうは、様々な天災を扱う。雷の鳴神なるかみ、雨の目弾めひき、氷の雪割り、嵐の風車と、接近戦には向かないものの、範囲攻撃としてはかなり優秀だと思った。


左手に持っていた帯、紅牡丹べにぼたんは魔法の無効化。この帯に触れている者は魔法を発動できない。


ちなみに、武器自体の名前はあるが、魔法自体に名前を付けているのは私だけらしい。


真摘は縁と違い、完全に後衛向けだった。


「ユカちゃんが前衛、リンちゃんが中継、マーちゃんは後衛というのが妥当だと思うわ。マーちゃんの後衛はそのままで、ユカちゃんとリンちゃん二人で前衛をしてもいいと思うけどね」


私以外の二人の名前はこれで決定らしい。


「前衛後衛を決めても、精神力枯渇まで魔装を壊し続けるくらいしか思い付かないわ」
「リンちゃんの攻撃が通りさえすれば、あとはユカちゃんがノブレスでそこを攻撃すればいい。その間にマーちゃんが援護をしたり、攻撃を引き受けないといけないけれど」
「魔装を壊すのは一回きりでもいい、と」
「ただしチャンスは一度きり。ミスをすれば、チカちゃんだって対応してくるはず。そうしたら、もう打つ手はないわ」
「人手不足もありますね。人数がいたからいいというものでもないのでしょうけど」
「でも、やるしかないんだよね」


意見が一致した、か。


「作戦とは言えないけど、今考えられるのはこれくらいだわ。ごめんなさい、リンちゃん」


果歩は眠そうな目をしてそう言った。心なしか、口調もどんどんとゆっくりになってきている。


おそらく、限界が近い。


ノブレスは無意識と意識を切り替えることができる。しかし今の果歩は昏睡状態。現実世界では起きることができないのだ。つまりそれは意識がないということ。現実世界で意識をなくしたものは、基本的にはこちらでも意識がない。


「ありがとう、果歩」
「うん、それじゃあ私は戻るわね。こっちに来て?」


果歩に近付くと、私の頬に手を当てた。優しく何度か撫でて、小さくため息をついてから手を離した。


「がんばってね。リンちゃんもチカちゃんも、私にとっては大事な妹だから」
「絶対に果たしてみせるわ」


横になって、果歩は目を閉じる。数秒後には、もう返事をしなかった。


先に縁が現実に戻って、次は真摘だった。残ったのは私だけ。


「式は、このやり方で倒せると思う?」


顎に指を当て「うーん」と数秒唸った。


「わからないよ。今までの魔法少女たちの中にもね、キミたちと同じような魔法を使っていた子もいた。その魔法少女たちが束になっても敵わなかった相手だ。ボクにはなんとも言えないよ」
「でしょうね。いいわ、この話はやめましょう。それに私も起きる時間だわ」


今日の収穫はゼロだけど仕方がない。


現実に戻っても、きっと千影と話はしないと思う。いや、できないのだ。そんな勇気、私にはないのだから。


千影とは二週間に一回顔を合わせるかどうか。その程度なので、話をしたくてもできないだろう。そもそも彼女がいつ帰ってきているのかわからない。そして私は携帯電話なども持っていないので、連絡する手段はなかった。


身体から光があふれ出す。温かさに身を任せると、あとは現実に帰るだけ。


私は目を閉じて、これからどうすればいいのかを模索していた。

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