廃クラさんが通る

おまえ

039 限界の契

Selfish:何をしにきた? お前?Millennium:用がなければ来てはいけないか?
 生徒会室での騒動を適当に収束させ、適当に生徒会の活動も終わらせ帰宅。 そして俺たちはいつも通りTFLOにログイン。 いつも通りみんなと挨拶を済ませ、今日は何をしようかと思った矢先、突然ミレニアムさんが俺たちのギルドハウスに現れた。
Selfish:いけないって事はないけど…、何か用があってきたんだろ?Millennium:木綿糸が高騰していないではないか。あの偽者の正体が誰なのかは知らんが、一泡吹かせてやろうと思っていたのではないのか?Selfish:だからお前も買えっていっただろ? なんで俺だけ散財しないといけないんだよ…Millennium:そうか、それを『散財』と思うようではお前にそれは見込めないな。お前はどうやらまったく価値のないこの世界の通貨に執心しているようだからなSelfish:いや、どの世界だって金は大切だっつーの…Millennium:まあいい、私が用があるのはお前ではない。スカイ、一つ頼みがあるSky:え? 俺に?
 俺に用なんていったい何事だ? てか俺がミレニアムさんの役に立てることなんてなにかあるの?
Millennium:私のフレンドになってはくれないだろうか?Sky:え?Selfish:は?Jill:あ~、うちもミリーのフレンドになりたい!
 これまで俺がフレンド申請をして散々断られてきたのに、なんで今更? しかもミレニアムさんの方から?
Sky:もちろんいいよ。フレンドになろうよMillennium:ああ、わかっている。私のフレンドになるなんてきっとお前も嫌だろう。無理にとは言わないSky:え? なんで? 別に嫌じゃないって。いいって言ったのにMillennium:そうか、そこまで言うか。ならば仕方がない、私のフレンドになってもらえるのなら、それ相応の対価を支払おう。
 いや、だから嫌じゃないってのに…。 と、俺のトレードウィンドウが唐突に開く。
Sky:いや、俺、別に何もいらないよ?
 なんだ? ミレニアムさん、いったい何がしたいんだ? そしてトレードウィンドウのgolの欄に積まれた額は…
Sky:999,999,999gol!?
 上限カンスト額じゃないか。 これ以上のお金は積み上げることのできない最高金額だ。
Selfish:は?Jill:まじで? ミリーすご~い!Millennium:さあ、受け取ってくれSky:いやいやいや、受け取れないって! なんでフレンドになるだけなのにこんな額のお金をやりとりしないといけないの?Selfish:なるほど、そういうことか。スカイ、遠慮なく受け取ってやれ。
 え? セルフィッシュさん何か気づいた? このお金に何か意味があるの?
Millennium:そこの柔らかタンクも言っているように遠慮なく受け取って貰って構わない。Selfish:なんで俺が柔らかタンクなんだよ……Millennium:この前のIDでの柔らかさは驚愕に値するほどだったぞ? さらにはたかがどこぞの掲示板で悪く書かれたくらいで怖いと言って泣きつくとか、豆腐メンタルにもほどがあるSelfish:スカイ…、お前まさかあのことも言ったのかよ……Sky:え~と。うん、ごめん…
 でもあれは長田さんの本心だったのだろうか? それともやっぱりからかわれただけ?
Millennium:ほら、さっさと受け取ってはもらえないだろうか?Sky:でもカンストって事は、これ、もしかしたらミレニアムさんの全財産って事じゃないの?Millennium:ほう? 私の全財産がたかが一人分カンストさせただけの額で済むとでも思っていたのか?Sky:え?Selfish:まさか…Jill:まじで? もっとあるってこと?Millennium:そうだ、金やアイテムはコンシェルジュに預けることができ、プレイヤーと同等の額を持たせることができる。
 コンシェルジュにはプレイヤーの持ちきれないアイテムを預けたり、また、お金を持たせたりすることもできる。 マーケットは基本コンシェルジュを通してアイテムを出品をし、落札された代金はコンシェルジュに入ることとなる。
Millennium:コンシェルジュは最大8人雇うことができ、さらにはギルドのチェストにだってgolを入れることもできるSelfish:ちょっとまて! まさかそれ全部カンストで埋まってるって事はないよな……?
 全部埋めたらいくらになるんだ? 999,999,999x8? いや、さらにチェストと本人を合わせればx10だから…。
Sky:全部埋まってるとしたら9,999,999,990gol!?
 ほぼ100億……。
Jill:ミリーすごーいMillennium:さて、どうだかな? あの時言ったであろう? Mの上の単位はBなのかGなのか、どちらなのだろうか? と。つまり私はカンスト以上の単位で財産を数えることができるのは確かだということだけは言っておく
 ビリオンギガ…。 つまり10億単位で数えられるってことだ。
Selfish:スカイ、もう遠慮はいらない。こいつにとってカンストなんてその程度だ。そんなはした金みたいに言われるくらいなら堂々と貰ってやれSky:え? うん。本当にいいの?Millennium:問題ない。受け取ってくれ。そして思いっきり使ってやってくれ
 なら受け取るよ? 受け取っちゃうよ? こんなとてつもない額のgolを目の前にするとさすがに手が震える。 そして俺は震える手でトレードウィンドウの『受け取る』の表示アイコン押下クリック
「じょわりーん」
 と、俺がいつも少額取引をする際に鳴る効果音SEよりも少し豪勢な音が鳴る。 ――それでもこの額に見合った効果音SEではない気がするけど…。 俺はgolの表示額を確認してみる。『999,999,999gol』 たしかに上限カンスト額が俺の手元にある。
Millennium:よし、受け取ったな。これでお前は私のものだ。Sky:え?Selfish:は?Jill:まじで? スカイ買われちゃった?Millennium:いや、それは冗談だ。そんなことをしたら私は体を使って他人の心を奪うような、あの下劣なはしたない女と同等になってしまうからなSelfish:それってあたしのことかよ…Millennium:さてな? 私は名前は出してはいないぞ? お前はそういうことをしたという自覚でもあるのか?Jill:え~? じゃあうちなのかな? うち、はしたなかったかなぁ…?Millennium:いや、お前は違う。そう思ったのであればすまなかった。そもそもお前の行為は心を奪えてはいないと思う
 いや、俺、結構ジルに心を揺り動かされてるよ? そもそもジルにがないから俺も理性を保ててはいるけど、もし、ジルがになったとしたら俺はそれに抗うことはできない気がする。

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