廃クラさんが通る

おまえ

028 廻る社会

 今後の方針について決めた俺たち。 ミレニアムさんは自分の家に帰った。 セルフィッシュさんは早速製作に勤しんでいる。 それを横目に俺はハウス内に設置されている金庫チェストの中身を見る。 お金は、えーと……、0がいくつだこれ…。 いち、じゅう、ひゃく、せん……、 50,000,000ごせんまんgol!? これはLサイズのいちばんおおきい家が買えるくらいな金額だ。 …俺、この1/10じゅうぶんのいちgolおかねも持っていないよ…? こんな額、初めて見た。 でも、これだってセルフィッシュさんの全財産の一部なんだよね? さすがに全額金庫チェストに突っ込んだわけじゃないだろうから。
Sky:このお金本当に使っていいの?Selfish:もちろんだ。遠慮なく使ってくれ。ただし木綿糸を買うためになSky:うん、わかってるよ。
 他の用途に使わないように念を押すセルフィッシュさん。 俺にも物欲が無いわけではないが、さすがにこのお金で他の物を買おうとは思わない。 俺はチェストの中から1Mひゃくまんgolを引き出す。 俺の全財産がちょうどこのくらいだ。 そして家の外に出て最寄りのマーケットボードに移動。 マーケットボードを見ると最安値の木綿糸は50Kごまんくらいで売られている。 それが下に行くにつれ高くなりつつずらっと連なっている。
Sky:けっこうな数出品されてるよ? これ全部買っちゃっていいの?Selfish:ああ、100Kまでなら問題ない。全部買っておいてくれ
 マーケットには木綿糸が一本から出品することができるが、二本、三本と複数でも出品でき、最大12本を一束いちダースとして一枠で出品できる。 100Kじゅうまんの値段がついている物まで買うとしたら1Mひゃくまんgol程度じゃ全然足りない。 俺はハウスに戻りもう一度金庫チェストの中身を見る。 そして思い切って先ほどの10倍、10Mいっせんまんgolを引き出す。 緊張して汗が噴き出す。 これだけの大金を持ったのは初めてだ。 たとえゲーム内の仮想通貨おかねであったとしても。 緊張しつつ再びマケボの前まで移動する。 木綿糸の項目を開くと、思い切って上から順に買っていく。「ちゃりーん、ちゃりーん」 と、木綿糸を買う度にgolおかねが消費される音が景気よく響き渡る。 そして100Kの値段までの木綿糸をすべて買いきった。
Sky:すごい数買えたよ? 15束と6本 お金にすると10M近いよ?Selfish:そんなになのか?Sky:やっぱりこんなに買ったらまずかった?
 暫くの沈黙……。 やっぱりちょっと買いすぎた? 10Mいっせんまんgolも買ったんだもん。 Mサイズちゅうくらいの家が建つくらいのお金だよ? ギルドの金庫チェスト50Mごせんまんgolも「ぽん」と入れることのできるセルフィッシュさんでも10Mいっせんまんが一瞬で消えたらそれは相当な痛手であろう。
Selfish:いや、問題ない。作れば作るだけ売れるから。それだけあっても足りないかもしれない。
 こうは言ってはいるが、沈黙の長さの分だけダメージはあるのだろう。
Sky:売れても赤字じゃないんだよね?Selfish:ああ、まだ大丈夫だ。利益は十分出ている。
 ならいいのかな…。 でも、社会の仕組みってこういうことだよね? 投資した分が還ってくる。 多額の投資をしたとしてもそれに見合う分の見返りがある。 当然失敗することも多いんだろうけど…。 0から稼ぐことのできる都合の良いものなんてない。 0に見えても必ず何らかの下地はちゃんとある。 それを元手にして稼ぐのが資本主義社会なのだ。

コメント

コメントを書く

「コメディー」の人気作品

書籍化作品