廃クラさんが通る

おまえ

015 黒い究極兵器

「やったー! スカイ! ハットトリック! ハットトリック!」
 ジルが大喜びで胸を揺らし俺の元に走ってくる。 大きな胸でぴっちぴちでぱっつんぱっつんになっているどう見てもサイズがあっていない体操着を着ている。 丈が短く、へそを中心にうっすらと縦に割れている健康的な腹筋をちらりと覗かせている。 履いているのはブルマ。 こちらも体にぴっちりと股間がV字に切れ込んでいる。 これって下着にしか見えないんだけど、昔の人はみんなこんなの履いて体育の授業とか受けていたんだよな……。 学校の体操着に合うサイズがなかったかららしいが、もう少し違うものはなかったのか。 大きな胸を俺に覆い被せて抱きついてきたジルはそのまま俺に体を預けようとするが、俺がよろけたところで無理だと察し、逆に俺を抱きかかえるとくるくる回る。 なぜこんなことになっているのか。 今日の体育の授業は男子はサッカー、女子はバレーボールだった。 しかし女子のバレーボールの方はジル一人のおかげでまったく試合ゲームにならず、
 コートの半分から前に出てはいけない       ↓ 後ろのさらに左半分だけ       ↓ 向こうのコートに打ち返してはいけない
 とジルが得点を重ねる度に様々な対ジル用特別ルールを施行したのだが、さすがにそれを不憫に思ったのか先生が男子のサッカーに加わるように指令を下したのだ。 当初は男子側も大喜びでジルを受け入れ、走る度に大きな胸をぶるんぶるん揺らすジルを好奇のエロい眼差しで生暖かいやらしく迎え入れていたが、あっという間にジルにシュートを決められるとみんなの目の色が変わる。 勝負を挑んだのはサッカー部次代のエースと目されている渡井わたらい君。 しかしあっさり完敗。 二点目を取られる。 気合いを入れ直した渡井君はジルに再び立ちはだかるが、まるで大人と子供の勝負でまたもや撃沈。 三点目ハットトリックを許すと、喜んで俺に抱きついおそいかかってきたジルに対して膝をついてがっくりと肩を落とす渡井君。 こんなことで挫けて未来の才能がつぶされなければ良いんだけど……。 そして大きな胸に挟まれて振り回される俺に突き刺さるみんなの殺気のこもった視線が痛い。 おそらくみんなも思っているのであろう「ジルに抱きつきたい」と。 しかしこの前の柏木の事件をみんな知っているためそれはしない。 ジルは自分で抱きつく分には良いのだが、誰か他人が不意に抱きつこうとしようものなら容赦なく投げ飛ばすからだ。
「ジルはゴールキーパーにチェンジだ! 奥原! お前はそこでジルのこと見張っていろよ!」
 遠くから声が飛ぶ。 結局男子こっちの方でもジルは逆の意味でお荷物扱いになるんだな……。
「え~、つまんなーい」
 ジルは俺を解放すると愚痴をこぼす。
「ジル、ゴールキーパーだってサッカーの重要なポジションだよ。TFLOだって役割ロールがあるでしょ?」
 俺はジルを見上げて説得をする。
「ん~、スカイが一緒ならいいよ。ゴールキーパーやっても」
 と後ろから俺に覆い被さるジル。大きな胸が俺の頭を挟む。
「そうやってジルのこと押さえつけとけよな!」
 遠くから少し怒気の籠もった声が飛ぶ。
 いや、押さえつけられてるのは俺のほうなんだが…。 柔らかくも程よくまったりと弾力のあり、えもいわれぬほどに甘美な多幸感に包まれる非常に大きな胸で…。

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