異世界落ちたら古龍と邪龍の戦いに巻き込まれまして・・・

風音Second

第15話 待ちぼうけ

待ちぼうけ

「…というわけで、服屋のオーナー・サシェさんが へい・いえ 母さまに 会いに来るそうなんですが お時間の方 大丈夫でしょうか?」

「というわけって、どういうわけなの。ちょっと母さまわからないんだけど」

そこで、ミキは 服屋へ到着してからのことを かいつまんで話していくのであった。

「あぁ~、わかった。わかってしまった。うっかりしてたよ。これサシェに 叱られるなぁ、やだなぁ。ガストール、わたしの今日の予定っていっぱいいっぱいだよね?」

「いえ、今日の執務は ほとんど終わっております。ミキさまと一緒に出かけるのと仰って 昨日のうちにほとんどの執務を済まされております」

「そうよ、ミキ 今日は 一緒にお買い物に行くわよ」

「母さま、そんな簡単に…」

そうこうしていると 執務室のドアが ノックされた。

「陛下、皇都『服屋』店主、サシェさまが お見えになっておりますが こちらにお通ししてよろしいでしょうか。」ノックしたのは、クラリッサ直轄の侍女のひとりである。

「あわぬ訳には、いかんかの?」

「陛下は、こっちだね。通してもらうよ」

「皇都・『服屋』店主・サシェ、陛下へのお目通りを願いたく参上いたしました」

「よい、入れ」とエリステル陛下

「ご無沙汰いたしております。今日は、陛下に折り入ってお聞き届けいただきたく…」

「言いたいことは、解ってるよ。あと その口調を いますぐ止めて、なんかむず痒くっていやだわ」

「はぁ、あいかわらずね、ルー」

「ふん、そっちこそ…、ミキ 少しの間だけ 席を外してくれない?」

「かしこまりました」そういって ミキが執務室から出て行くと

「わたしが、今日ここに来た理由、もう判ってるんでしょ?」

「ええ、一応は…ね。ミキに もたせた『コレ』のことよね」

「そうよ、最初に使ったのが うちの店だから よかったけど そうでなかったら いらぬ厄介ごとを呼び込むわよ。」

「あぁ~、あぁ~ 聞きたくないかも。」

「あなた、あの子が 一人で 皇都を回ってみたいって理由しっているんでしょ」

「なんとなくだけど…ね。本人から 直接聞いた訳じゃないから」

「たぶん、あの子 少しでもあなたの役に立ちたいって思ってる。皇都、皇都周辺 それから 周辺の町や、村を回りたいんですって。だから 民たちに違和感を与えないような衣装が欲しいって、そう言っていたわ、あとは 趣味ですって 」

「ええ、そうね。あの子が ここに来てから三年になるの。そして 三年間ほとんど この王城と離宮で暮らしていたのよ」

「やっぱり…、ねぇ わたしに なにか言うことない?」

「何のことかしら?」

「ルー!」

「そうね、こうなったら あなたも 巻き込んだ方が 安心かしら…」

「あら、わたしだけ?」

「他に、誰が居るのよ」

「あとで、ショコラも来るわよ。呼んどいたから」

「はぁ、勝手なことを」

「何言ってるの、こんな面白そうなこと。ひとりだけで進めようだなんて」

「ひとりじゃないもん!」

「あんたは、子どもか」

「まぁ それは おいといて。あの子…ミキちゃん。いい子ね」

「あぁ、わたしには もったいないくらいの子だよ」

「おおよその見当は ついてるけど 詳しく話してくれるかしら?」

と、またドアをノックする音が聞こえ
「陛下、ショコラさまが お見えになっておりますが お通ししてよろしいでしょうか」

「うむ、通してくれ」

「エリステル陛下には…」

「その下りは もうわたしが 済ませてしまったわ」

「ったく、最後まで言わせなって」
「久しぶりねって 言うのも変な感じだけど。たまには あなたも離宮の食堂へおいでなさいよ」

「ごめん、それと この三年間ミキをありがとう。あと 今日は 世話になったね」

「いいわよ、個人的に あの子のこと、気に入ってるから」

「それでも・よ、あの子の母親として 言っておきたかったの」

「やっぱり、そうだったのね」

「ええ、先日のお披露目式で 正式に わたしの子どもとして 跡継ぎとして認められたわ」

「ねぇ、その辺りのことあの子に 詳しく話したの?」とサシェ。

「それは、わたしも聞きたいわね」

「うーん、話してないかな」

「おそらくあの子 自分が、あなたの後を継いで、この国と帝国全体の王となり皇帝となるなんて 夢にも思っていないはずよ」

「そうでしょうね」

「「そうでしょうね…って 人ごとみたいに」」

「うん、じゃぁ あなた達にも 巻き込まれてもらうわよ」

「「もちろんよ」」
そう言って、三年前いったいどんな出来事があったのか、そして ミキの身の上に何が起きたのか、これまで ミキとエリステル陛下が どの様に過ごしてきたのかを 話はじめたのであった。


「そんな、じゃああの子、ミキちゃんは 異世界から来た 稀人?ってこと」

「いや、おそらくヒューム大陸で 召喚の儀がおこなわれ、ミキは その召喚に巻き込まれしまって何故だかこちらの大陸へ落ちてきたのよ。で 今度は わたしとあの邪竜となり果てたものとの争いに巻き込まれてしまったの」

「「そう…」」

「えぇ、そして あの子を あの子の生命を繋ぐために命玉をもって 蘇生の儀を執り行ったの」
「だから、誰がなんと言おうと あの子は わたしの子よ。それは あなたたちでも同じこと。もし あの子のことを軽んじたりするなら…」

「「あんた馬鹿?」」

「何よ」

「今日、わたしたちが何のため、誰の為にここへ集まったのか わかってるんでしょ?」
「そりゃ、もしかしてと思ったわよ。あの子が、御子かもしれないって。でもね そうでなくたって、あの子のことが 気に入ってるのよ」
「そうよ、この三年、ずっとミキちゃんのこと 見てきたわよ。あんな 馬鹿がつくほどの お人好しで いい子 わたしが 知る限りあと一人しか知らないわ」

「あなた達…」
「ありがとう、ありがとう ショコラ、サシェ」

「はぁ、ほんと変わらないわね。普段は あんな凛々しくて 頼もしいのに、ほんとは とっても涙もろくて、泣き虫で 寂しがり屋なところ」
「そうそう」

「それって 全然褒められてる気がしないのだけど」

そう、エリステル陛下は もとより 皇都で名の知れたレストランのオーナー・ショコラ、そして 『服屋』オーナー・サシェ、この三人は みな顔なじみであり ともに命を預け 預けられして とある目的のために戦ってきた同志であったのだ。いずれ この三人の話が 語られる日がくるかもしれないし、ないかもしれない。

が、ともかく

「で、ミキちゃんのことよ」
「あなたねぇ、王・皇族・王・皇族関係者限定のカードなんて普段使いにポイって渡すもんじゃないわよ」

「だって、これで あの子のことを 誰はばかることなくミキって 呼べるようになったのですもの。この子が、わたしの子どもなのよって」

「それは…わかるけど。だったら使いどころくらいちゃんと 説明しときなさいよね。あの子、それでなくても目立つわよ。かわいいし、美人だし 変なのに絡まれでもしたら」

「その辺のチンピラ相手じゃ あの子に勝てないわよ」

「「どういうこと!」」

「この前、皇都で開催された武道大会…」

「まさか…」「ひょっとして?」

「そう、うちの近衛騎士団長を瞬殺した謎の美少女剣士って ミキのことよ」
「そうそう、言い忘れてたけど あの子の前で絶対に ぜ~ったいに お嬢だとか、嬢ちゃんだとか あの子の性別と反対の呼び方しちゃダメよ、いい?(ガクブル・ガクブル)」

「あぁ~、それ 言っちゃった。というか 今日もうちのウエイトレスの服 着せちゃったし」

「あ、それ わたしも手遅れ。だって、ショコラのとこのウエイトレスの服着て うちに来たし、それが また恐ろしいほど似合っててね~。あれで 判れって 方が無理」

「何よそれ、わたしなんて 死ぬほど怖かったんだから」
「なんで、あんた達平気でいられたのよ?」

「「知らないわ(よ)」」

「でも 最強生物である竜のあなたを そこまで 恐怖させるなんて…」
「ミキちゃん、恐ろしい子」

「どうせ あなたのことだから、軽~い感じで、嬢ちゃんとか 年頃の少女とか そんな感じで言っちゃんじゃないの?」

「どうしてそれを…」

「「あはは」」

「ま、まぁ そのことはいいわ。じゃあ、わたしは この『カード』のことを ちゃんと説明しておくことにするわ」

「そうそう、そのことだけど わたしに任せてくれないかしら」

「それは…いいけど。」

「あと あの子 ここからほとんど出たことないって で、この世界の子でもないのよね?なら そういったことを知るためにも しばらく わたしに預からせて欲しいのだけど…ダメ?かしら」

「サシェは その方が いいって思ったのよね」

「ええ、あと あの子、面白い拾いものをしてるわ」

「面白いって…はっ、もしや男。」

「いやいや、そうだけど そうでなくって」

と、久方ぶりの集まりは延々と続いていくのであった。
みなさん 誰か 忘れていませんか?

ミキ…
「僕、いつまで待ってればいいのかな?」
前日、サシェから「…あんたも居てくれると助かるね」と言われ エリステルに しばらく席を外してくれと頼まれたミキ。

待ちぼうけ~、待ちぼうけ~



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