異世界転生した私の話を聞いて貰っていいですか?

白黒にゃんこ

動き出す運命

「ほら、着いたぞ。」


花畑を抜け、辿り着いたのはログハウスの様な建物だった。
側には湖があり、水面がキラキラと輝いている。
場所も相まって、何処かの隠れ家の様な感じがした。

「まぁ、入れよ。紹介したい奴もいるし。」

扉を開けて入って行ったカインさんに続いて私も入る。
「お、お邪魔します・・・。」

中は必要最低限の家具が置かれていた。しかし、あまり使われた様な感じがしない。
何部屋かあり、私が思っているよりもこの中は広いのかもしれない。
「おーい、戻ったぞー。」


返事が無い。

「またか・・・。」

カインさんが、奥にある扉を開ける。
その部屋には大きな本棚がいくつも置かれていて、書斎の様だった。
窓際に座っている人がいる。
銀の髪が、風にサラサラと揺れていた。

ペラリと音がする。
ページを捲る動きから、手に持っているのは本だと分かった。

「おい、シン!お前」
パタリと本が閉じられた。

「おかえり。」

顔を上げて此方を見た。
まるで澄んだ水の様な青い眼。
中性的で綺麗な顔。
声を聞いて初めて彼女・・ではなく、だと分かった。
そしてカインさんと同じ、しっかりとした作りの服。比べて見ると、デザインも良く似ている気がする。

「相変わらずマイペースだよな、お前って・・・。」

「・・・ん?君は?」

「無視かよ・・・。」

カインさんを放って、シンと呼ばれた人が本を置いて近づいて来た。
カインさんより低いけど、私よりも背が高いので見上げる形になる。

「えっと、私はアイリっていいます。」

「僕はシン。よろしく。」

シンさんはそう言って手を差し伸べて来た。しかし、その表情は変わらずに真顔のままだ。

「よ、よろしくお願いします。」

二人で握手を交わしたが、カインさんが驚いて此方を見ていた。

「おい、シン。お前熱でもあんのか?」

「無い。」

「じゃあ明日は雨だな。」

二人が何を言っているのか分からない・・・。そう思っていると、カインさんが苦笑しながら説明してくれた。

「あぁ、すまん。こいつは人付き合いが苦手な奴でな。自分から握手しに行くのが珍しくて、つい・・・。」

「だって面倒だ。一人の方が気を張らなくて済む。」

そう言ってシンさんは部屋を出ようとする。すかさずカインさんが呼び止めた。

「おいシン!何処行くんだ?」

「・・・飲み物を持ってくるだけだ。」

そう言って彼は部屋を出て行った。

「明日は雨じゃなくて、雪でも降るのか・・・?」

カインさんは呆然と扉の方を見ていた。カインさんの態度が気になったので、聞いてみる事にした。

「あの、そんなに珍しいんですか?」
「うん。」

即答である。
余程この行動が珍しいのか、カインさんは話を続ける。

「アイツは率先して動く様な奴じゃない。あんな事するのは俺も初めて見た。」

そう言ったカインさんの顔は、驚きと喜びが混ざった様なそんな表情をしていた。

「あと、シンさんが言ってた『気を張らなくて済む』って・・・?」

「あぁ、それか・・・。それは」
「お待たせ。」

扉を開けてシンさんが戻って来た。手にはティーセットを持っている。丁度カインさんが口を開いた時だったので、カインさんは複雑そうにシンさんを見る。

「・・・お前、俺の言葉を遮って楽しいか!?」

「?何を言っているのか、僕には分からないな。」

「真顔だから嘘なのか本当なのか、どっちか分からん・・・!」

悔しそうにしているカインさんとは対照に、部屋のテーブルにティーセットを置き黙々と準備をするシンさん。
二人を見ていると可笑しくて、声を上げて笑ってしまった。二人共此方を見て、不思議そうにしている。

「ご、ごめんなさい!
お二人のやり取りを見てたら、つい・・・。」

シンさんは真顔のままだったが、カインさん不機嫌な表情になった。

「ずっと思ってたんだけどさー。アイリっていくつだ?」

「えっと、この前10になりました。」

その日は孤児院の皆から"誕生日おめでとう"と祝われた。誕生日は私が孤児院に来た日にされている。

「ふーん。俺は14。ついでにシンは13。」

やっぱり二人共年上だった。しかし、年齢が何か関係あるのだろうか?

「その他人行儀な言い方、俺は嫌だ。」

シア姉と同じ事をカインさんは言って来た。

「年もそんなに離れてないし、さん付けは何か変だろ?
孤児院では年上の奴を何て呼んでるんだ?」


・・・年上はシア姉しかいないんですが!


シア姉以外の人は大人しか居ないし、何て答えたら・・・?
そう考えていると、外から何か物音が聞こえた。

「ヤバッ!誰か来たみたいだ。
すまん、アイリ。ちょっと出て来る!」

そう言ってカインさんは部屋を出て行った。
部屋が一気に静かになった気がする。
そう言えば、シンさんにまだお礼を言ってなかった。

「あの、シンさん。飲み物、ありがとうございます。」

「別に。」

沈黙が続く。
どうしよう、話題が無い。今さっき会ったばかりだから仕方ない事だけど、何か気不味い・・・。

不意にシンさんが口を開いた。

「君は、不思議だね。」

「え?」

「僕と話すのは、君とカイン位だ。」

その顔は真顔のままなのに、私は彼が何処か寂しそうに感じた。
シンさんに話しかけようとすると、カインさんの声が聞こえた。
誰かと話しながら此方に向かって来ている様だ。その行動にシンさんは反応した。

「その本棚の後ろ、隙間があるから早く隠れて。」

指を指された本棚の後ろには、人が一人隠れられるスペースがあった。

「僕が良いって言うまで出て来ちゃ駄目だから。」

切羽詰まった言い方に私はただ頷き、言われた通りに隠れた。




もし


私がこの家に入らなければ


彼に出会わなければ


森に入ろうと思わなければ



あんな事には、ならなかったのか
な・・・?






ー運命の歯車は、回り出したー

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