ハルバード使いは異世界を謳歌するそうですよ

超究極キグルミ

14 旅立ち

「おはようございます。ムラサキさん」

 朝。今日はムラサキさんの急襲もなく荷物を揃えて待ち合わせ場所に行った。ムラサキさんも荷物を抱えてベンチに座っていた。

「コウヨウさん、おはようございます。ついに今日ですね」
「これから長いですよ。きっと」

 ゴエモンなる人がいる場所はあらかたわかっている。ルートの魔法とサーチの魔法の複合魔法ナビゲーションを昨日のうちに使っておいた。どうやら海を越えなければ行けないらしい。

「ところでコウヨウさん。馬車と馬はどうするんですか?」
「それは後のお楽しみということで。ひとまず外壁門まで行きましょう」
「はい!」

 ムラサキさん、驚くだろうな。


「うわぁ凄い!コウヨウさんこんな馬車持ってたんですか?」

 外壁門には栗毛の馬と木造の馬車があった。沢山手に入った木材があの時手持ちになかった理由がこの馬車だ。手に入った翌日、職人さんに頼んで作ってもらった。さらに完成したあとに防御系の魔法シールドと火炎体制系の魔法ファイアレジストによって防御力を底上げした世界で最も頑丈な馬車…というお墨付きをもらった馬車だ。

「この馬もコウヨウさんのですか?」
「いえ、それはジャンヌダルクさんが貸してくれたものです。名前も好きに決めていいそうですよ」
「うーん…じゃあエ○ナで」
「ブッ」

 思わず吹き出してしまった。どこぞの緑色の勇者が乗りながら弓撃ちそうな名前だな。

「他のにしません?」
「じゃあ…メウズなんてどうでしょう?」
「…まぁさっきのよりはましですね」

 メウズ…馬頭メズのことじゃないよな?地獄の番人じゃないはずだ。そう信じよう。

「じゃあ、荷物積むんで退いてください」
「はーい」
「ポルガイスター」

 荷物を全て浮かばせて馬車に積み込む。これが魔法なかったら軽く一時間はかかっただろう。

「はい。終了っと」
「相変わらずコウヨウさんは凄いですね」
「さっきからムラサキさん驚いてばっかりですよ。…ではそろそろ出ますがやり残したことないですか?」
「ないです!」
「では行くとしましょう」

 俺とムラサキさんは馬車に乗り馬車を走らせた。


「それにしてもコウヨウさんは馬乗れるんですね」
「幼い頃に少しやっていたので」

 ちなみに乗馬も花婿修業の一貫だった。ああ、思い出すだけで嫌になってくる。
 街を出たのが昼近くだったので少し走らせていると辺りはすっかり夕暮れだ。

「コウヨウさん、この辺で野宿の用意しませんか?少しお腹も空いてきたので」
「そうですね。ではそこの平らな土地にしましょうか」

 馬車のスピードを緩めて、そして止める。ムラサキさんは馬車から、必要な物を取り出している。

「ムラサキさん、今日から料理の練習始めますか?」
「うーん…今日はコウヨウさんのご飯が食べたいです」
「わかりました。ではその辺でくつろいでてください」

 そういうとムラサキさんは少し離れたところで剣の素振りを始めた。さて、今日のメニューは何にするかな。


「お待たせしました。シチューです」

 出来上がった鍋を机におく。今日のメニューはシチューだ。カレーでも作りたかったが肝心の香辛料だ。

「うわぁ、食べていいですか?」
「どうぞ」
「いただきます!」

 ムラサキさんはシチューを皿に盛って黙々と食べ始めた。シチューを皿に盛って食べてみる。美味しいが少し牛乳が足りなかったかな、と思う。

「ごちそうさまでした」
「早っ!?」

 まだよそってから一分もたっていない。

「…おかわりします?」
「いえ、遠慮しておきます」
「そうですか。じゃあ自由にしていてください」

 そういって自分の目の前にあるシチューを食べた。…やっぱり牛乳が足りない。


「ふわぁぁ…眠いです…」

 ご飯を食べて片付けを終えるとムラサキさんがあくびをしながらそう言った。二人とも馬車に座っている。

「寝てもいいですよ?」
「じゃあ…お言葉に甘えて…」

 ムラサキさんは後ろに倒れるように眠った。そっと布団をかける。

「ふぅ…眠れそうにないな」

 ふとナビゲーションの魔法を確認する。ゴエモンがいるのは海を越えたヨツン公国にいる。ムラサキさんの話によると一年中寒いらしい。おそらくヨツンヘイムみたいなのだろう。

「んぅん…」

 ムラサキさんが寝返りをして足にあたる。幸せそうな顔をしている。

「…横になるか。そのうち寝れるだろ」

 バタッと後ろに倒れるように横になる。

「おやすみなさい、ムラサキさん」

 と言って目を閉じた。

 

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