根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜
Ep3/act.16 アカネの新魔法
僕とアスラは、その後も激しくぶつかり合ったが、新魔法のキッカケを掴めずにいた。
「サクラくん、私できたかも」
僕たちが互いを見合っていた時を見計らって、アカネちゃんが話しかけて来た。
「え!ほんと!?どんな魔法なの!」
僕は、まだ見ない支援系魔法を見るのをワクワクしていた。
すると、アカネちゃんは少しニヤリと笑みを浮かべながら言った。
「気付かない?」
「え?」
そう言えば、僕はアスラと激しくぶつかり合ってるのに痛みどころか負傷もない。
死体吸収で肉体強化している為、どの程度の痛みから感じるのか、どの程度の攻撃だと負傷するのか、その理解をしてないだけかと思っていたけど、それにしてもアスラと渡り合えるのは本来おかしい話だった。
「え、お前気付いてなかったのか?既に気付いて、協力して私に挑んでるもんだと思ったんだが…」
アスラもとっくに気付いていたらしい。
「全く気付かなかった…」
あのなぁ、と見兼ねつつも、アスラはどんな魔法か説明をしてくれた。
「さっきからアカネがやっているのは持続的な防御強化魔法。指定した奴に発動すると、アカネがその魔法をやめるまでそれは持続される。ただし、どの程度の防御アップにするかにも寄るが、その間はアカネの魔力が減り続ける。名前はシンプルに防御上昇でいいだろう。分かりやすい方が連携も取りやすい。他者に影響を与える魔法は魔力消費も多いから、中級魔法ってところだな」
僕はなるほど、と頷いた。
するとアスラは、それから、と続けた。
「アカネは、私にも気付かれないように他の魔法も交代で使っていただろう」
「あ、やっぱりバレてましたか…」
アカネちゃんはてへへ、と頭を掻いた。
何も気付かない僕って本当に意識が足りないんだな…と思わされた。
「サクラ、そこにちょっと立ってろ。タイミングを合わせてアカネはそれを使え」
僕はアスラに言われるがままにそこにいた。
すると、アスラは勢いよくジャンプして僕に目掛けて魔法を打ち込んだ。
「中級魔法【灼熱業華】!」
アスラの手から燃え盛る炎が、僕を覆うように吹き荒れてきた。
「ちょっ!これはまずいでしょ!」
「動くな!」
ええい、ままよ!と僕が身構えると、僕の目の前で燃え盛る炎は真っ二つに割かれた。
「え…?」
「これがアカネのもう一つの新魔法。アカネは支援魔法の素質があるな。上級魔法【三角防御壁】。三角形のバリアを作って、どんな魔法も無力化する。上級だから消費魔力は激しくてここまでのものは今のアカネじゃ何度も使えないだろう。ただ、これを弱くした中級魔法【一面防御壁】ならもう少し多く敵の魔法を無力化できる」
「え、めちゃくちゃ凄いじゃん…」
アカネちゃんの適応能力の早さに驚いた。
学校でもスポーツ万能成績優秀で完璧だったけど、上級魔法を扱えるようになるなんて…。
僕も負けていられない。
僕はアスラとギリギリまで魔法習得のための訓練をした。
明日には天人のお姫様を奪還するために天人の国へ一度戻らなければならない。
どうしても、救ってあげたいと思った。
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