根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep3/act.13 魔獣ディアブロ


自分の中には魔獣がいる。
そんな事実も、身をもって感じたことがない為に恐怖心もあまりなかった。

「災厄の魔獣って一体…」

僕が不信そうな顔をしていると、シンスケさんは長々と話し始めた。



昔話に入ります。誰目線でもありません。


かつてこの世界には、魔獣が支配する時代があった。サタンが恐怖の象徴になる前の話。

人間たちは、魔力に対しての知識が乏しく、邪悪な闇魔法を扱う魔獣に怯える生活を強いられていた。
同時に、世界に散らばって集まった人たちは、後に国を作り、今に至る。

獣人は魔獣の仲間だと恐れられ、獣人は獣人だけの国を作った。
竜人も似たような理由で竜人のみが存在する国を作った。
天人は翼から羽を生やす魔法が使える人たちを集め、天空に国を作った。
精霊人は特殊な魔術を操れる者たちのみで行動し、秘密裏に国を作った。
残りの五国は、集められた先鋭を先頭に、別々の場所で魔獣から隠れ、国を作った。

人間たちが魔獣に対策できるようになった頃、国は国としての形を取れる程に発展していた。

魔獣を狩れるようになった人間たちは、魔獣討伐を巡って争うようになった。
魔力レベルの高い魔獣からは、より美味い肉が取れることが分かったからだそうだ。
そして、その肉を食べると闇魔法は扱えるようにならないものの、少しずつその魔獣の持つ魔力を自分のものに出来ることも分かり、それが直接的な戦力となった。

次第に各国には上級魔法使いが現れ、魔法戦争が行われることとなる。

長きに渡り戦争は続いたが、決着のつかないままに各国は衰退して行った。

そして、その時現れたのが魔獣ディアブロ。
ディアブロは、ものすごい力で戦争の起こっている場所を次から次へと壊滅させていった。

しかし、長きに渡る戦争の末、眠りを妨げられたと怒っているわけではなかった。

ディアブロは操られていただけなのだ。

戦争を終わらせたのは国じゃなかった。
二体の巨神だったのだ。

魔の神は闇魔法を扱い、壊滅的な災害をもたらした。後のサタンである。
聖の神は光魔法を扱い、魔の神を止めるために太刀打ちする術としていた。
聖の神は魔の神を離れ島、現サタン帝国へと封じる。魔獣ディアブロは、聖の神によって回収された。

聖の神が消えて各国が落ち着きを取り戻した頃、サタンは封印を破り、この世界を支配しようと破壊を始めたが、各国から選りすぐりの先鋭と、先鋭たちが転移させた転移者たちにより、1000年封印されることとなった。

そして、その初代転移者たちの力で、今後1000年に1度、各国に英雄が転移される運びとなるよう、組み込まれたのである。



「全て本に書いてある程度の歴史のようなものだが、どれくらいやばい魔獣がお前の中にいるか分かったか?」

「はい。恐ろしいくらいに分かりました」

「何故サクラの体に封印されているか、その点はどう考えても分からないから、取り敢えず、サクラは自分を見失わないようにだけしていろ。じゃなければ夢の中のように魔獣ディアブロに飲まれる結果となる」

「分かりました…」

僕は、自信がなさそうに答えた。
自信なんて持てるはずがなかったからだ。

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