根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep(3)/act.4 軽蔑と決別


両親の失踪から数日が経った。
僕の心情なんて知らず、いじめっ子たちはいつものように僕を殴り飛ばす。
両親が突然消えた悲しみと、繰り返される暴力、家にも帰りたくなくて、僕は校舎裏でいつも一人で泣いていた。

この時にアカネちゃんにハンカチを貰う。
初恋の女の子。でも、それから話しかける勇気もなく、そして今に至る。
今だからこそ分かるけど、きっとあの時、アカネちゃんも一人で泣きたかったんだろう。
校舎裏の花壇には綺麗な花が生い茂り、夕方になると先生も職員室にこもる為、一人で泣くにはうってつけの場所だった。

それから間も無くして、僕は親戚の家に引き取られることとなる。
親戚の家は僕の家からそう遠くなく、残念なことに転校はしなかった。
僕の家は、祖父母が建てた家ということもあり、貸家にするでもなく放置された。

そんな毎日を過ごし、数年が経った。
僕は中学二年生になっていた。

魔力姐さんが見せたい記憶のみを試練として選別しているのか、飛ばし飛ばしの生活だった。
そんな時だけ我に帰れる。
過去の悲しみに取り込まれないで済んだ。

親戚の家には一つ下の女の子がいた。
ほとんど面識はなく、小学校は地区の関係で別の学校だったが、中学に上がるにつれて同じ学校に通うこととなった。

そこで、彼女にイジメを知られることとなる。
母方の親戚のため、苗字が違うことが幸いしたが、距離を置かれるようになった。
「学校では話しかけないで」と言われ始め、その内、思春期ということもあり、かなり軽蔑の視線を向けられる毎日が始まる。

直接言われたことはないが、「あいつのパンツと私の服一緒に洗わないでよ!」と親戚の両親に怒っている彼女を見た時は、心底心が痛んだ。

親戚の両親たちも、「子供二人は負担が大きくて辛い」と嘆いている場面を何度も聞いてしまったことがあった。

そんなこんなで二年が経ち、僕は高校に進学することになる。
ここで僕はとある決断をした。

彼女に気を使ったり、親戚たちのストレスを思ってのこと。
いやきっと、僕が耐えられなかっただけだ。

少しずつ仕送りは頂くことにはなるが、僕は前の家で一人で暮らすことにした。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品