根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep(3)/act.2 それぞれの試練


エド視点


魔力姐さんが言うには、俺の魔力制限の理由は『絶望』なのか。
よくわからないが、思い当たるとしたら…。

「やっぱな」

俺の前にはよく見慣れたアジトがあった。
親が貧乏で共働きだから、子供ながらに自給自足を強いられたわけだが、子供に働き口なんてものはない。
だから俺は、巷じゃ有名な窃盗集団の元でよく過ごしていた。

そしてそこには。

「エドくん、今日は遅かったね」

そうだ、当時のアルがいる。



アカネ視点


この異世界に来て、サクラくんに連れられて、驚くことが多いから少し慣れたかも。

魔力姐さん、すごい力を使えるのね。
私の魔力制限の理由は『感情』。
よく意味がわからない…。

私の目の前には想像通りのもの。
そう、いつも暮らしている家があった。

でも、想像とは違う人がいた。

「ようアカネ。もう帰ったのか?」

「お兄ちゃん…」

私のお兄ちゃんは、私が小学五年生の頃、私の部屋で自殺をした。

お兄ちゃんの服装は高校生の学ラン。

そういうことか。今からきっとお兄ちゃんは私の部屋で自殺をするんだ。

これが、試練なんだね。



アル視点


まさか僕まで試練を受ける羽目になるとは。
面倒臭いけど、仕方ないね。

さて、僕の魔力制限の理由は『孤独』か。
孤独でいることを悲しく思ったことはないんだけど、どういうことだろうな〜。

あれれ、ここは…。

僕の目の前には小学生の頃まで住んでいた家があった。

「ほら、早く行くよ」

母に手を引かれている。

これが試練ね。嫌なことしてくれるね全く。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品