根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep2/act.12 アルビィvsシンスケ


※ここからはシンスケ視点になります。


城下町には未だ逃げ遅れた人たちがいた。
ここの人たちを守りながら戦うのは中々に分が悪いな…。

そんなことを考えていると、自分の足元がヌルヌルと動いたことに気付いた。
サッと避けると、触手のような長い腕を伸ばした魔人が現れた。

「もう少しで捕まえられたのに〜」

俺は刀を構えた。

「喋れるということは指揮官クラスか」

「そう!僕は指揮官が一人、水操のアルビィ!仲良くしてね〜」

「無駄話はいい。他にも助けを待ってる人が大勢いる。一気に倒させてもらう」

俺は刀を一度鞘に収めた。
本来なら魔力を付加する居合い技ではあるが、1000年鍛錬を積んだ俺には魔力なしでこの技が出来る。

疾風の一太刀ゲイルス スワード

アルビィの前から姿が消え、突風が吹いた。
チン、と刀を鞘に収める。それと同時に、真後ろのアルビィが真っ二つに切り裂かれた。

よし、避難をさせよう。そう思った矢先、アルビィが喋り出す。

「残念。僕に斬撃は効かないよ。だって僕の体は水だから〜。切っても切っても意味がな〜い」

剣撃が効かない。ならどう戦えばいいんだ?
八方塞がりの俺に勝機はなかった。

アルビィの技には大した威力はなかった。
ある程度鍛えてある為、致命傷は負わされないものの、反撃の余地がない。

徐々に減らされていく体力。
本当にこのままやられてしまうのか。

諦めなかった1000年間は一体…。
そんな時、己の体の内側からフツフツと湧き出るものを感じた。

これは、魔力だ。

そうか、サタンのヤツ、復活したからお前もまたやられに来いと言っているみたいだな。

「まだ微弱だが、お前を倒すには丁度いい」

俺は刀に風を纏わせた。

「見せてやるよ。中級魔法【暴風乱斬ストーム スワード】」

本来は風の如き速度で切る技だが、水のコイツには効かない。しかし、この乱撃から出る暴風によりアルビィは吹き飛ばされる。

アルビィは粉々に切られ、水しぶきは暴風と共に散々とどこかへ飛んで行った。

「ここまでされたら復元は無理だろ」

俺は急いで住民の避難を進めた。

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